モーターショー
更新日:2023.10.30 / 掲載日:2023.10.26

“モビリティショー”って実際どうなの!?【ジャパンモビリティショー2023】

文●工藤貴宏 写真●川崎泰輝、工藤貴宏

 2年に1度の東京モーターショーといえば自動車業界にとって日本最大のイベント。だけど今回からは「ジャパンモビリティショー」と名前を変えたので、東京モーターショーの延長線上のイベントではあるけれど心機一転してイベントの大枠が広がっていたりするわけです。

 たとえば、クルマやバイク以外の“モビリティ”の充実。まあ東京モーターショー時代でも出展がされていましたが、モビリティショーになってその分野がますますパワーアップしているということなのですよ。

イベントとして面白いほうに転ぶのか? 

 何を隠そう開幕するまでは個人的には「なんだか微妙だなあ……」と思っていたんだけど……撤回します! 理由はもちろん、実際に行ってみたら面白かったから。

 どんなものがあるか?

 例えばスバルブースにはUFOが!

スバルブース中央に展示されるエア モビリティ コンセプト

……と思ったら、いわゆる「空飛ぶクルマ」ですね。どうみてもクルマじゃないのでその表現もどうかと思いますが、いうなれば人が乗れるドローンですね。なぜスバルが「空飛ぶ自動車を?」と疑問に感じるのは当然ですが、実はスバルは航空部門もあって飛行機(自衛隊向けの機体などを作るほか民間向けにボーイング777や787の“中央翼”なんかを担当)やヘリコプターも作っている会社。そんな背景もあって、モビリティショーにUFOみたいな乗り物を「コンセプトモデル」として出展したというわけです。ヘッドライト(みたいなもの)がしっかりとスバル車共通イメージのデザインになっているのも細かいけど面白い。

 でも、ハリボテでしょ?と思ったら大間違い。ショーに展示されているのはモックアップですが、実際に浮き上がるまで作りこまれた機体もあるそうです。やっぱり水平対向とかシンメトリーAWDの乗り味なんでしょうかね?

 空飛ぶモビリティといえば、会場で絶対に見るべきなのがホンダジェット。あの、小型ビジネスジェットクラスでナンバーワンの性能(速度/高度/航続距離)と販売実績を誇るホンダジェットが実際に見られるんだから、モビリティショーって凄くないですか?

ホンダジェット

 じつは実際の機体ではなくモックアップ(しかもいろんな事情で翼がない!)なのですが、とはいえ実物大。機内もコックピットも見られて、エグゼクティブな世界を体験できるというわけです。これは必見ですね。こういうので移動する人生に生まれてみたかった!

ホンダジェットのコックピット

 ホンダといえば「Pocket Concept」というバイクも気になる存在。実は同時に公開されたコンパクトカーの「SUSTAINA-C Concept」が初代シティみたいな雰囲気で、その脇に置かれたPocket Conceptはさながらモトコンポというわけ。懐かしい!

ホンダ Pocket Concept

 もちろんハンドルを折りたたんで、SUSTAINA-C Conceptのラゲッジスペースに積み込めるサイズ。かつてのモトコンポと違ってエンジンではなく電動ですが、電動だと横にしてもガソリンが垂れないし、車内にガソリンのにおいがしないのでけっこう都合がよかったりするんですよね。コンセプトとしての出展ですが、本当に売ったら楽しそう。

 さらに、ホンダブースには気になるモビリティも。それは不思議な箱のような乗り物。「クルーズ・オリジン」と呼ぶ大型ミニバンくらいのへんてこな乗り物は、なんと自動運転のタクシー車両とのこと。ハンドルをはじめ運転操作系の装備は全く見当たらないこの車両(でもシートベルトはついている!)にもかかわらず、完全自動運転でタクシーサービス2026年から東京都心部でスタートするのだとか。しかも数十台と小規模からスタートするものの、順次拡大して500台レベルまで増やすというから“本物”です。未来の話かと思いきや、2026年って3年後(ソニーホンダのクルマ「アフィーラ」が発売されるのと同じ年)ですよ。本当に3年後にこの無人タクシーが東京を走る??? 時代はどんどん変わっていますね。

スズキが展示した多彩なモビリティ。右から2番目が「eチョイノリ」

 楽しそうといえば、スズキブースにあった「eチョリノリ」も気になるところ。かつて5万9800円という超低額で発売された「チョイノリ」という原付バイクがあったのですが、その現代版なのですよ。動力源はエンジンではなくモーター。手ごろな価格とするために、パナソニックサイクルテック社の電動自転車用バッテリーと駆動ユニットを活用しているのだとか。

 「そんなのちゃんと走るの?」という心配は無用。というか、長い距離を走ろうというのではなく「ちょっとコンビニまで」的な超近距離を考えたモビリティというわけです。発売するかどうかは発表されていませんが、完成度を見るとどう考えても売りますよね、これは? いくらになるのでしょうか。

 スズキブースはそのほかにも、スピードは出ないけれど気軽に乗れる電動キックボードなどの新しい車両区分(特定小型原動機付自転車)で、四輪によって転倒しづらいひとり乗りの電動モビリティの「SUZU-RIDE」があったり、馬のように4本足で動くから階段なども登れる超小型の乗り物があったりとなかなか“モビリティ”が充実しています。

 もちろん、モーターショーからモビリティショーになっても華やかなのはステージ上の派手なクルマで間違いありません。

 だけど、空飛ぶクルマだったりホンダジェットだったりといろんなモビリティが多くみられた会場をひとまわりしてみたら、モビリティショーって思っていた以上に面白いなと思うのが今の率直な気持ち。なんと鉄道車両(燃料電池ハイブリッド!)まであったけど、こういうのはモーターショーでは実現できなかったかもね。本当に楽しいから、皆さんもぜひご来場を!

 ホンダジェットの機内を体験したり、スバルの人が乗れるドローンがブンブン動く姿(会場ではアームによって3次元に動く)を見てみたいでしょ?

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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