モーターショー
更新日:2023.12.04 / 掲載日:2023.10.25

じつは「クルマ好き」こそ楽しめる!?【ジャパンモビリティショー2023】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス、川崎泰輝

 モーターショーからモビリティショーへとコンセプトを刷新した「ジャパンモビリティショー2023」。だが、自動車ジャーナリストの工藤貴宏氏は、クルマ好きにとって十分以上に楽しめるショーになっていると語る。

 いよいよ始まりました、東京モーターショー改め「ジャパンモビリティショー」。ネーミングチェンジとともに、クルマやバイクに限らず幅広い“モビリティ”のイベントにしていこうというわけです。

 ただ、生粋のクルマ好きとして個人的にはちょっと心配だったんですよね。脱炭素社会に向けて電気自動車とか水素系のクルマとか、さらには電動キックボードみたいな超近距離移動用の乗り物だけでは盛り上がりに欠けるのではないかって。

 もちろんそういうモビリティも大切です。でも古いタイプのクルマ好きとしては、自動車メーカーが事前に発表した「出展車両リスト」を見て、そういう“未来への提案として大切だけど、正直なところあんまり胸躍らないよね”っていう感じの出展車両が多いように思っていたのでした。事前の段階では。

 ところが、当日になってびっくり。事前に告知していた車両に加え、事前にはあまり情報を出していなかった車両だったり、当日のサプライズ発表として、各メーカーがしっかりと華やかなスポーツカーを用意していたんです。やっぱりモーターショー(モビリティショーだけど)を彩るのは、華やかなスポーツカーですよね。

 事前に写真を公開していたけれど、実車を見て「やっぱりいいな」と思ったのはダイハツの「VISION COPEN」。車名からもわかる通り将来のコペンを示唆するモデルですが、FFの軽自動車ではなく1.3Lエンジンを積むFRのコンパクトカーにシフト。「このまま市販するわけではない」というものの、プロポーションも市販化に無理がないように思えるし、結構期待していいんじゃないかと思います。これを見るためだけに会場を訪れる価値ありますって。

 そして、マツダの「MAZDA ICONIC SP」。息をのむほどの美しさです。このまま売るのは難しそうですが、このデザインから派生して次期「ロードスター」なのか、それとも「RXシリーズ」の新作となるのか?楽しみすぎます。

 パワートレインは「2ローターとしたロータリーのプラグインハイブリッド」で370psとのこと。すなわち「MX-30ロータリーEV」に積む「16C」ベースの2ローターという感じでしょうかね?

 ちなみにリトラクタブルヘッドライト(ヘッドライトはRX-7や初代ロードスターのように開閉式)は担当デザイナーさんによると「機能的に意味があるわけではないけれど、カッコいいでしょ?」という見事なまでの清々しさ。そういうピュアな気持ち、大切だと思います。見に来た人をワクワクさせてナンボですから。

 ワクワクといえば、ふたを開けてみてびっくりしたのがホンダのスポーツモデル。事前に「スポーティなクルマがあるよ」とだけ発表されていたのですが、ブースへ行ってみてビックリ。車名はなんと「プレリュード コンセプト」ですよ。プレリュードといえば、バブル期前後に一世を風靡した伝説のデートカー。その名前が美しいクーペとして復活するなら大歓迎です。

 これはEVで絵に描いた餅なのか?と思ったら、「電動化パワートレイン」とのことで「EV」とは一言も言っていないので、ハイブリッドの可能性が高そう。つまり結構現実的だってことです。あの頃の青春を再び!

 いっぽうで、ぜんぜん現実感のない打ち上げ花火だけど「これはこれで楽しいよね」と思ったのが、事前案内なしにサプライズで公開された「ニッサン ハイパーフォース」。かつて80年代に盛り上がっていた国内レース「スーパーシルエット(グループ5)」の「トミカスカイライン」風というか、“竹やり出っ歯”の暴走族車テイストというか、とにかく見た目のインパクトが凄い! 車体側面の「E-4ORCE」のステッカーなんて、まんま「RS-TURBO」のオマージュですよね(R30型RSターボ前期型)。懐かしい、っていうかクルマ好きオヤジの心をくすぐりますねぇ。

 このクルマは「1000kW(1360ps)のEV」ってことで、日産は「GT-R」とは一言も言っていません。だけど、どう見てもGT-Rっぽい雰囲気を醸しているのが面白いところ。このクルマは本当に本当にコンセプトであって市販には直接結びつかないでしょうけれど、ここまで突っ走ると潔いですね。こういう打ち上げ花火って大事だと思いませんか?

 そして、トヨタブースに行ってみたら、まるでロータスみたい(書いちゃった!)なスポーツカーが。バッテリーEVのコンセプトモデルってことでこのまま売るわけではないけれど、イベントを賑わわせるクルマとしては大いにアリです。純粋にカッコいいし。

 というわけで、はじまるまではモヤモヤした気持ちだったジャパンモビリティショーですが、いざふたを開けてみれば「結構楽しいぞ」という話でした。

 クルマ好きでも……いやクルマ好きなら、絶対に会場を訪れてお祭りをいっしょに楽しむのがいいと思いますよ。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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