インタビュー
更新日:2025.06.11 / 掲載日:2025.06.11
ガソリン暫定税率、問題の核心とは? JAFが目指すユーザー目線の自動車税制

(掲載されている内容は「プロト総研 / カーライフ」2025年5月掲載記事【ガソリン暫定税率見直に向けて。JAFが目指すユーザー目線の自動車税制】を転載したものです)
様々な専門家を招き、業界のいまをお伝えするインタビュー記事。今回のテーマは「公平な自動車税制を実現するために必要なことは」です。一般社団法人 日本自動車連盟(JAF)でこの問題に取り組む交通環境部 調査研究課の丹野さんに話を伺います。
まとめと写真●ユニット・コンパス
宗平 今日はよろしくお願いします。JAFさんといえば、ロードサービスで長年お世話になっているという読者の方も多いと思います。そのなかで丹野さんが所属されている交通環境部調査研究課とは、どのような部署なのでしょうか?
丹野 よろしくお願いします。JAFの交通環境部は、交通安全と環境のための事業活動を推進する部署です。全国に50以上の支部を持ち、各都道府県で交通安全の啓発活動や実技講習会、地域イベントへの参加を通じて、交通安全を推進しています。調査研究課では、警察庁と合同でシートベルトやチャイルドシートの使用率調査を行ったり、横断歩道の停止率調査を独自に実施したりしています。これらのデータをもとに、自動車ユーザーの安全意識向上や政策提言につなげています。
ロードサービスと社会貢献の両立
宗平 なるほど。ロードサービス以外にもさまざまな活動をなさっているのですね。では、あらためてJAFという組織についてご紹介いただけますでしょうか。
丹野 JAFは1960年代、自動車の普及に伴いインフラが未整備だった時代に、クルマのトラブル急増に対応するために設立されました。当初は非営利団体としてスタートし、ロードサービスを中心に事業を展開。2011年に一般社団法人に移行し、営利目的の事業も展開可能になりました。現在は約2,080万人以上の会員(2025年3月時点)を擁し、さまざまなサービス提供のほか、自動車ユーザーの声を集約して国への提言を行っています。

宗平 JAFさんは会員継続率が92%と非常に高いとうかがっています。わたしも長年会員を続けていますが、公式アプリになって便利になりましたね。救援要請が簡単ですし、更新の手続きも忘れずに済みます(笑)。そんなロードサービスについて、最近の動向を教えてください。
丹野 ご利用いただき、ありがとうございます。アプリを通じた情報提供や会員向け優待サービスなどでユーザーの利便性を高めることで、ユーザーとの接点を強化しています。ロードサービスにつきましては、ご存じのとおりJAFの収益の柱です。バッテリー上がりやキーの閉じ込みといったトラブルは依然として多く、休日や大型連休などでは多数の出動要請がございます。
宗平 自動車保険にロードサービスが付帯することが増えていますが影響はありますか。
丹野 そうですね。実は、自動車保険とJAFの両方に入っていることで充実したサービスを受けることができます。詳細は割愛しますが、例えば搬送や、けん引距離の無料範囲が伸びたり、ガス欠時のガソリン代が2回まで無料になったりします。また、JAFには保険会社のロードサービスにはない強みがあります。それは、自動車保険が「クルマ」を適用対象するのに対して、JAFは「人」を対象にしていることです。レンタカーやご友人のクルマなど、自己所有以外のクルマで起きたトラブルでもロードサービスの対象になるのです。また、利用回数や場所の制限がありません。駐車場内や自然災害に起因するトラブルもカバーします。
宗平 そうなんですよ。わたしはバイクも所有しているので非常に心強いです。つぎに、ロードサービス以外の活動についてご紹介いただけますでしょうか。
丹野 JAFは会費を基に、交通安全やクルマ社会の課題解決を通じた活動を展開しています。例えば、企業向けの交通安全eラーニングのようなBtoBサービスは、企業のニーズに応えつつ収益化を目指す取り組みです。公益性と経済性の両立を図りながら、地域課題の解決にも取り組んでいます。
宗平 地域課題の解決とは具体的にどのようなものですか?
丹野 地域の見守りや交通安全の推進に取り組んでいます。そのほか、地方では移動困難という社会課題も顕在化しています。そうした課題に対して、JAFの全国ネットワークを活かし、自治体や関連団体と連携して持続可能なモビリティサービスの提供を目指しています。

自動車ユーザーの声を集約して国や行政に届ける
宗平 JAFさんは長年にわたり、自動車税制の公正化についても声をあげられています。
丹野 私たちが毎年実施する税制アンケートでは、98.9%のユーザーが自動車関連の税金を負担に感じています。特に問題視しているのは、ガソリン税に上乗せされる「暫定税率」です。1974年に道路整備のために導入されたこの税率は、50年以上も論理的な説明なく継続されています。現在のガソリン価格の約4割、レギュラーガソリン価格185円(5月中旬時点)のうち75円近くが税金で、その一部が暫定税率によるものです。この負担は生活を圧迫しており、廃止を強く求めています。

宗平 暫定税率はかねてから問題視されてきました。自治体にとっては安定した財源として残したいと考えるでしょうが、利用者としては論理的に納得できない。また、税金に対してさらに消費税を課税する二重課税についても議論が必要だと考えます。個人的には、13年以上経過した車に課される自動車税の重課税金は、クルマを大切に長く使うユーザーに負担を強いる仕組みで、大いに疑問です。サステナビリティを重視する欧米では、古い物を大切にする文化があり、税制面でも優遇されています。
丹野 そういった海外の事例なども参考にしながら、ユーザーが納得できる方向を模索していくべきだと考えています。古いクルマだけでなく、日本では新たにクルマを購入する際に自動車税(軽自動車税)、環境性能割、自動車重量税、消費税と4種類の税金がかかります。また、電気自動車の登場など、クルマを取り巻く状況は大きく変化しています。JAFとしては、時代に即した公平・公正・簡素な自動車税に抜本的に見直すべきだと考えています。

宗平 なぜこの問題が広く議論されないのでしょうか?
丹野 暫定税率のような問題は、国民が仕組みを理解していないと声になりにくいのではないでしょうか。JAFとしては、SNSや街頭活動を通じてユーザーの意識を高め、声を集めたいと考えています。
宗平 我々ユーザーは、税負担についてもっと自分ごととして考える必要がありそうです。最後に、自動車ユーザーへのメッセージをお願いします。
丹野 自動車税制の問題は、ユーザーが仕組みを理解し、声を上げることが重要です。JAFは皆さんの声を代弁し、過重な税負担の軽減や安全なクルマ社会を目指しています。アプリやSNSで情報に触れ、下記アンケート等で意見を寄せていただければ、それが新たなサービスや改革につながります。より良いクルマ社会に向けて、皆様のご支援をよろしくお願いします。
宗平 本日はありがとうございました。
丹野 ありがとうございました。
JAFアンケート「車の税金 あなたはどう思いますか」(外部リンク)

一般社団法人 日本自動車連盟 交通環境部 調査研究課 課長
宗平光弘(写真左)
株式会社プロトコーポレーション代表取締役副社長およびグループ・関連会社各社の会長職を務める。当サイト「PROTO総研/カーライフ」では所長としても取材活動を行う。
この記事は「プロト総研 / カーライフ」より転載したものです。
ここでは、「プロト総研 / カーライフ」2025年5月掲載の「ガソリン暫定税率見直に向けて。JAFが目指すユーザー目線の自動車税制」を掲載しました。他にも、多様な角度から未来のモビリティの姿に迫るインタビュー記事も掲載しているので併せてチェックしてみてください!
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