イベント
更新日:2018.11.26 / 掲載日:2018.05.28

2900万台市場の中国、北京モーターショー沸かせた注目モデルはこれだ!

文と写真●工藤貴宏

 2017年に世界でもっとも自動車(商用車やトラックバスを含む)が売れた国はどこだろうか? トップ3を見ると、3位が日本で約524万台。2位がアメリカで約1758万台。そしてトップは中国で、約2912万台もの新車が販売されている。かつて自動車大国といえばアメリカの事を指す言葉だったが、今や世界最大の自動車マーケットは中国に取って代わっている。2010年にアメリカを抜き去って以来、その差はどんどん広まっていくばかりだ。世界最大の市場だけに、世界中の自動車メーカーの鼻息も荒いのが中国なのだ。

 かつてはひと世代前の車両を改良して投入するのが当然だった中国仕様も、今では、最新モデルはもちろん、本国にもない中国専用モデルを用意するのも珍しいことではなくなっている。

 そんな中国で偶数年の4月に開催されるのが「オートチャイナ」、通称「北京モーターショー」だ。今年は4月25日のプレスデーからスタートして、29日から5月4日までの期間で一般公開された。主催者発表によると出展企業の数は約1800社、展示車両は1022台、そのうち世界初公開の車両が105台! 展示面積は22万平方メートル(東京モーターショーの5倍以上!)と、とにかく規模の大きさに驚かされるが、今や世界一の自動車マーケットと考えれば、何ら不思議ではないといえる。

 ところで、中国の自動車マーケットを見るのに注目すべきキーワードを3つ挙げるとすれば、「SUV」「セダン」そして「電気自動車」。SUVとセダンは中国で最も好まれるジャンルだ。フォードがアメリカでセダンの販売をやめると宣言するほどの「セダン離れ」が、世界中で進んでいるものの、中国だけは別。この国ではセダンの人気が依然として高いのだ。いっぽうで世界的なSUVブームは、中国にもしっかりと浸透している。これは内陸部に行くと道の悪い場所があるので、「実用性能」という意味合いもあるいっぽう、大きく見えるので威張れるという見栄の要素も小さくない(特に沿岸部では顕著)。

 ちなみに電気自動車(EV)に関しては、政府が音頭を取って普及に力を入れている。EVを購入すると奨励金が支払われるなどの優遇政策がある。また販売するクルマのうち一定の割合をEV、燃料電池、もしくは航続距離の長いPHV(プラグインハイブリッド)にすることをメーカーに義務付ける規制が2019年からはじまるなど、「作られた流行」ではあるものの、中国で商売をする以上はこの流れに乗らざるを得ないのだ。

 ここでは北京モーターショーで気になるモデルを、10台紹介する。背景を考えてみると、それぞれのメーカーが、あえて中国でそのモデルをデビューさせてきたかの意味が浮かび上がってくるに違いない。

日産シルフィ ゼロエミッション

 中国だけで発売されるセダンのEV。プラットフォームや基本メカニズムは、新型リーフと共通(バッテリーは中国製)で、そこにシルフィのボディを被せたモデルだ。EVが求められ、かつセダンボディが好まれる中国に合わせたキャラクターである。日本仕様のシルフィと異なるフロントマスクは、現地で販売されているガソリン車とも異なるデザインで、リーフのイメージが重なる。航続距離は中国の測定モードで338km。

レクサスES

 中国市場におけるレクサスの最量販車種「ES」は、次期モデルの世界初公開の場に北京を選んだ。LSに迫るボディサイズのFFセダンで、大きなトピックはES史上はじめて日本でも発売されることが、アナウンスされたこと。日本でのパワートレインは、直4の2.5Lガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド。

トヨタ・カローラPHV

 2019年からスタートし、同年は生産台数の10%以上、2020年には20%以上を省エネルギー車とすることを義務付ける政府戦略。その対策の第一歩としてトヨタが用意したモデルがこちら。カローラにプラグインハイブリッドシステムを搭載している。日本で見かけるカローラセダンと車体が異なるのは、世界仕様(日本以外で販売される)として用意されている通称「グローバルカローラ」だから。

ホンダ・インスパイア コンセプト

 インスパイアという名前を復活させて2018年後半に発売する新型セダンを示唆するモデル。同じくセダンの「アコード」をベースとするが、アコードとは異なる合併先(東風ホンダ)向けのモデルで、バンパーやテールランプなどがアコードと異なる。

理念 EVコンセプト

 広汽ホンダの自主ブランドとなる「理念」として、年内に中国で発売する予定のSUV電気自動車。初の中国市場専用EVモデルで、カーシェアリングでも活用される予定になっている。車体のベースはヴェゼルだ。

BMW コンセプトiX3

 BMWのEV&PHV専門ブランドである「i」から今後発売される予定のSUV。大容量のバッテリーを搭載し、航続距離は400kmになるという。車体はX3がベースで、これまではカーボン製の専用ボディを持つ車種だけをラインアップしていた「i」が、今後は違う方向へ進むことを示唆しているともいえる。発売は2020年からとアナウンスされていて、中国向けは国内で作られることになりそうだ。

メルセデス・ベンツAクラス セダン

 3月のジュネーブショーでデビューしたメルセデス・ベンツ最小モデル「Aクラス」の新型。セダンが好まれる中国ではそのセダン版が初公開された。後席の広さを重視する中国らしく、車体を延長したロング仕様も用意される。

ビジョン・メルセデスマイバッハ・アルティメート・ラグジュアリー

 メルセデス・ベンツの最高峰ブランドである「マイバッハ」が世界初披露したSUV。SUVながらトランクリッドのあるセダンで、なおかつEVという中国で求められる3つの要素をすべて盛り込んでいることに驚く。発売を前提としないコンセプトモデルではあるが、いつ発売されてもおかしくない完成度だ。現在のマイバッハはメルセデス・ベンツと車体を共用するのが通例だから、まずはメルセデス・ベンツとして“セダンのSUV”が登場する可能性も考えられる。

ポールスター1

 これまでボルボのチューニングパーツやコンプリートカーを製作するカスタム部門だったポールスターが、「スポーティな電動車メーカーになる」と宣言したのは昨年のこと。その市販化第一弾が「ポールスター1」だ。ラージサイズのクーペで、2.0Lツインチャージャーエンジンに強力モーターを組み合わせたパワートレインはなんと600馬力。価格は2000万円を超える。

日産テラ

 かつて販売していた「テラノ」ではなく「テラ」だが、車名同様に似ているのがその成り立ち。「テラノ」がダットサントラックをベースにSUV化していたのに対し、ダットサントラックの後継車である「ナバラ」をベースにしたフレーム構造のSUVなのだ。モノコックボディとは一線を画する悪路走破性や頑丈さが特徴で、中国を皮切りにアジア地域で幅広く販売される予定だ。

 ひとむかし前は、中国のモーターショーといえば、コピー車の報道で盛り上がっていた。しかし現在の中国のモーターショーでコピー車はほぼ見かけなくなり、それよりも国をあげて世界をリードしようと狙っているEVの勢いが印象的だった。

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットマガジン編集部

ライタープロフィール

グーネットマガジン編集部

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ