モビショーに見る今年の業界トレンド

フルモデルチェンジを含め、新型車の発売が全体として少なかった印象の2025年。
それでも各社、マイナーチェンジや新グレードの追加設定などはしっかり行っていた様子。
2025年の動向や出来事について振り返り、今年をおさらいしてみよう！

撮影／渡部祥勝
（掲載されている内容はグー本誌 2025年12月発売号掲載の内容です）

　早いものでもう師走。読者の皆さんも本誌を読む頃は「今年もあと少しか……」と足早に過ぎる１年を振り返っているのではないだろうか。社会全体を見れば石破総理が辞任し、日本史上初、女性として高市氏が内閣総理大臣に就任したり、外国人問題が頻繁にメディアに取りあげられたり、最近ではクマ被害拡大のニュースなど、１年を通じてよくも悪くも多くの出来事があった。それは自動車業界も同じ。新型車の登場こそ少なかったが、いろいろなトピックがあった1年だったといえる。そこで本特集では、各メーカーの２０２５年の動向や出来事を振り返り、各社の現在地を改めて確認してみる。加えて、先ごろ閉幕したＪａｐａｎ Ｍｏｂｉｌｉｔｙ Ｓｈｏｗ（本特集ではモビショーと記載）の様子を交え、来年以降に登場が期待されるモデルも紹介していく。

TOYOTA

トヨタの2025年を振り返る！

盤石の王者トヨタ。新ブランドも誕生！
　トヨタだけに2025年の情報はたくさんあったが、まったくの新型車の発売となると意外と少なく、当初の予定より発売が遅れたクラウンエステートとカローラクロスのGR SPORTの追加ぐらいだった。ただし、既存の車種では、こまごまと動きがあった。すべて挙げるときりがないが、注目すべきものとしては、アルファード／ヴェルファイアのPHEVの追加、スープラ生産終了の発表とファイナルエディションの設定、ランクル300の受注再開、ハリアーのマイナーチェンジが挙げられる。そして、注目すべき出来事もいくつかあった。ひとつはウーブン・シティがいよいよ本格的に始動したこと。報道機関にも大々的に披露され、すでに第1期エリアでの居住が始まっている。さらに、センチュリーを独立したブランドとすることが発表され、モビショーでも目を見張るようなコンセプトカーが公開された。業績は好調で世界販売台数が上半期526万台で過去最高を更新した。3月期の通年でも過去最高の1130万台の見込みと上方修正されている。

展示車両のなか、ひと際注目を集めていたのがカローラコンセプト。全面刷新され、スポーツ要素が格段に強まった姿に。ハイエースもこんなスタイルに変貌するのかと期待感大。さすがトヨタ！ とうなる内容が山盛りだ。

2025年に発売された注目車

モビショーで見た期待の1台

ランドクルーザーFJ
すでに具体的な情報も発表済みではあるが、GA-FではなくIMVシリーズのプラットフォームを活用しており、日本にも適したサイズで、なによりデザインが日本人好みなのでかなり売れそうだ。163psの2.7ℓガソリンエンジンに6速ATが組み合わされる。

LEXUS

レクサスの2025年を振り返る！

レクサス車をより楽しんでもらえる形を訴求
　ニューモデルとしては、海外で人気を博していたGXがいよいよ日本に導入されたのが大きいレクサス。既存の車種では、LC、LX、RXらの一部改良があったほか、新型のISについてはよりアグレッシブな顔つきになったモデルが発表され、2026年初頭以降に各地域で順次発売予定だ。さらに、ESの日本仕様が「SENSES–五感で感じるLEXUS体験」というメディア向けイベントで公開され、HEVのFWDだけでなくBEVやAWDの導入が明かされた。ブランドの動きとしては、近年レクサスでは多様なアウトドアライフスタイルとクルマの楽しさに寄り添うために「オーバートレイル プロジェクト」に取り組んでおり、ユーザー向けにさまざまな体験イベントを開催している。

2025年に発売された注目車

MAZDA

マツダの2025年を振り返る！

メーカーとしての魅力を高める活動に尽力！
　2024年末に発表された改良版のCX-60が2月に発売されたほか、乗用車で目立つ情報は控えめだったが、販売好調のロードスターには目を見張るべきニュースがあった。マツダのモータースポーツ活動におけるサブブランド「MAZDA SPIRIT RACING」 が手がけた初の市販車で、国内ソフトトップモデル初となる2ℓエンジンを搭載した、MAZDA SPIRIT RACING ROADSTERと同12Rだ。同車はすでに受注と抽選が行われ、年明けより納車が始まる予定となっている。新たな試みとしては、マツダに接するすべての人にいきいきする体験を届けることを目指としたブランド体験施設「MAZDA TRANS AOYAMA」を東京の南青山に2月にオープン。また、マツダの歴史やヒストリックカーなどを展示した広島本社敷地内の見学施設「マツダミュージアム」も部分改修され、4月に一般公開が再開された。

MAZDA VISION X-COUPEは、魂動（こどう）デザインを進化させたクロスオーバークーペ。愛らしいフォルムのMAZDA VISION X-COMPACTは、デジタル化した人の感覚と共感型AIを融合。クルマとの絆の深化を目指す。

2025年に発売された注目車

文／岡本幸一郎

NISSAN

日産の2025年を振り返る！

ネガティブ要素が多かった2025年。2026年は新型車投入で勝負する
　業績の急激な悪化に加えて、それをカバーするはずのホンダとの提携もご破算など、惨憺たる状況だったのが2025年の日産。今さら解説するまでもないほどだ。小型車から大型車まで取り揃えるフルラインメーカーだったのが、いつの間にか車種は間引かれて数えるほどに。これでは乗り換えのバトンをうまくつなげられず、他社に流れるのは当然だ。残されたモデルも11年放置のスカイラインなどモデルチェンジが滞っていて、マイナーチェンジでお茶を濁すなど、魅力に欠けるものが多く、経営戦略自体に疑問符が付く状況。CMでの掛け声だけは立派で勇ましいから、実状と照らし合わせると……ちょっとしんどい部分も。トランプ関税など根本的な困難はあるが、e-POWERやe-4ORCE、プロパイロットといったユーザーのベネフィットになる技術はあるのだから、とにかく新モデルを投入して、2026年からは反転攻勢だ。

2025年に発売された注目車

MITSUBISHI

三菱の2025年を振り返る！

期待できる個性的な人気車が揃う
　提携する日産の業績悪化に従って、三菱がどう動くかに注目が集まった。実際、結論を先送りにして、いざとなったら離脱か!?　という臆測すら飛び交ったほど。それは確固たる独自路線ゆえ。上半期の業績は92億円の赤字と数字的には厳しいが、PHEVのアウトランダーやロングセラーのデリカD：5、デリ丸とともに人気のデリカミニ。そしてピックアップのトライトンも好調だ。役者揃いのラインアップで、2025年をとおして見てもそこに悲壮感はない。ランエボやパジェロをルーツとする4WD技術やタフなイメージなど、三菱ならではという強みが多い。それゆえ、冒頭で触れた日産との関係でも一歩引いた場所で情勢を見極めることができたといえる。

例の会見の場では、日産とホンダによる経営統合への参画・関与の可能性に関する検討を行うと述べるにとどめた。ある意味、一番冷静だったともいえる。

2025年に発売された注目車

HONDA

ホンダの2025年を振り返る！

話題となった大きな変化を回避！　ホンダらしさあふれる名車も復活
　技術提携だけにとどまるかと思いきや、突然の発表となった日産との経営統合。両社の企業風土が違いすぎるといった不安の声が出るなか、一転して解消となったことは驚きかつ、安堵でもあった。日産の業績が悪すぎる、上層部のマウントの取り合い……などが理由とも言われたが、一方のホンダも盤石とは決して言えないというのが正直なところ。北米重視、EVシフトや国内市場は軽自動車への依存など、懸念材料は多い。また、軽では絶対的王者だったN-BOXがスズキのスペーシアに後塵を拝したのは2025年後半の大きなトピックだろう。
　そのなかでプレリュードの復活は、往年を知るクルマ好きを中心に喝采にわいた。一部では受注停止になるほどの人気ぶり。EVシフトについても、BEVだけでなく、熟成を続けてきたe:HEVや燃料電池と多方面戦略へと転換を進めて、リスクを回避している。振り返ると、ホンダは2025年も我が道を進んでいたと言っていいだろう。

壇上にならんだHonda 0（ゼロ）シリーズの3台。Honda 0 SALOON、0 SUVの量産モデルは2026年に北米市場へ投入される予定。搭載される独自のビークルOS「ASIMO OS」が演出する新しい移動体験にも注目だ。

2025年に発売された注目車

文／近藤暁史

SUBARU

スバルの2025年を振り返る！

堅実に走りを磨きつつ
カーボンニュートラルへの歩みも進行中
　1月の東京オートサロンでSTIコンプリートカー「S210」プロトタイプを発表し、5月にはニュルブルクリンク24時間レースに16回目の挑戦を果たすなど、2025年もモータースポーツをベースとした“走りを磨く”開発とモデル投入に意欲を示したスバル。その一方でSUV群のド真ん中ともいえる正統派モデル、新型フォレスターが4月に発表され、待望のストロングハイブリッドを投入。従来のように要件や規定からではなく、デザインから開発をスタートするというスバルとしては型破りな手法に挑戦しつつ、これまで以上にオフロード走破性を磨いてきた。また、4月には新型トレイルシーカー、ソルテラの改良モデルという2台のBEVをお披露目した。今年の7月にはアメリカでアンチャーテッド、モビショーでパフォーマンスE STIコンセプトを初公開し、着実にカーボンニュートラル社会に向けたロードマップを進めつつ、スバルらしさを磨く姿勢が印象的な1年だったといえる。

2025年に発売された注目車

DAIHATSU

ダイハツの2025年を振り返る！

ようやく元気なダイハツが戻ってきた！
　2023年4月に発覚した認証試験不正に端を発する国内外での全車種出荷停止から、再発防止に努めてきたダイハツに、2025年は明るいニュースがあふれた。まず遅れていた新型ムーヴがスライドドアへと変身して発売。販売も絶好調で一気に復活ムードを盛り上げた。これに牽引されて、ムーヴキャンバスやタフトといった既存モデルも勢いを取り戻した。また、大阪・関西万博に提供して話題となったパーソナルモビリティ「e-SNEAKER」が8月に発売され、移動の自由をより多くの人に届けたいというダイハツの想いが一歩前進。モビショーでは次世代軽自動車のコンセプトモデルが複数台登場。そのなかにはFR化されたコペンのコンセプトモデルも。小さなクルマでみんなを輝かせるダイハツの魅力がいよいよ全開だ。

2025年に発売された注目車

SUZUKI

スズキの2025年を振り返る！

ジムニー人気はいまだ継続中！ BEVにも注力
　待望の登場となった4ドアのジムニーノマド。1月に受注が開始されると、注文が殺到して瞬く間に受注停止という事態に。相変わらずのジムニー人気を見せつけたスズキ。7月には増産にこぎつけたが、受注再開は2026年1月となる見通しだ。10月には新型クロスビーも発売され、既存のハスラーやスペーシアギアなど、ライトユーザーから本格派まで幅広いSUVラインアップで快進撃を続けている。そんななか、スズキ初となるSUVのBEV、eビターラを発表。電動化戦略の記念すべき一歩を踏み出した。モビショーでは軽EV市場への意欲作とも取れるVision e-Sky、軽商用EVバンのe EVERY CONCEPTも出展されており、スズキらしさがどのように反映されるのか注目だ。また、次世代燃料の研究も進めていく模様だ。

2025年に発売された注目車

文／まるも亜希子

COLUMN

多種多様なモビリティが集結したなかで……

ひと際オシャレなマイクロモビリティが気になった！
　数多くのモビリティが出展していたモビショー。そのなかで、編集部が注目したのが、愛知県にあるエンジニアリング企業・エイムが開発した電動の超小型モビリティ『AIM EVM』。沖縄県の久米島で実証実験を行い、まずは沖縄県限定で販売。将来的には全国的な展開も視野に入れ、190万円（税別）での販売を予定しているという。コンセプトは「島に住む人、訪れる人、みんなが笑顔になれるモビリティ」ということで、大小さまざまな島々が集まっている地域や過疎地域での利用が主に想定されている。
　“シーサー”をモチーフとした愛らしいデザインは、2025年度グッドデザイン賞において金賞を受賞。オレンジをアクセントにしたインテリアは誰でも使いやすいようシンプルな設計にまとめられ、室内は2人で乗るには十分な広さを確保する。AIM EVMの最高速度は60㎞/hで航続距離は120㎞、200Vの普通充電で約5時間で満充電になる。全長2.5m、全幅1.3mと軽自動車よりも小さなサイズのため、島の狭い生活道路でも余裕をもって快適に移動できるとのことだ。少子高齢化と過疎化が進む日本では、一部の公共交通機関は存続が危ぶまれている。そのため今後、使いやすい超小型モビリティは島嶼部のみならず全国的に移動手段として需要を高めていくだろう。AIM EVMのようなモビリティの活躍が期待される。（編集部）

総括

業界の希望と失望が入り交じったそんな1年
　2025年のクルマ業界を振り返るとき、外せないトピックが日産とホンダの経営統合。結果として、両社の条件が折り合わず早々に破談となったわけだが、一時はその動向に多くの人が注目していた。その後、日産は追浜工場での生産終了（2028年3月で決定）や本社ビルを台湾系の企業に970億円で売却するなど、再建へ向けて進んでいるが関係各所へ与えた影響は大きなものといえる。また、トランプ関税によって各社の業績が大きな影響を受けたことも衝撃だった。一方、トヨタは9月25日にToyota Woven Cityをオフィシャルローンチ。未来の街づくりに向けたプロダクトやサービスの実証を開始した。また、上半期の世界販売台数は過去最高を更新するなど、着実に進化を遂げている。
　そんななか、2年ぶりに開催されたJapan Mobility Show（本特集ではモビショーと記載）では、各社が来年以降に向けた数多くのモデルを展示。クルマを中心としたモビリティの可能性を示すことで数多くの人々が楽しめる盛況なイベント（来場者数：101万人）となった。業界全体としてはネガティブな要素もやや見られた2025年ではあったが、モビショーの勢いを糧に2026年はポジティブなことが多い1年になることを願う。