パーツ取付・交換
更新日:2025.12.23 / 掲載日:2018.08.29
車のデフとは?役割や仕組み、故障の症状、寿命などを網羅的に解説

車に欠かせない「デフ(ディファレンシャルギア)」は、カーブを曲がる際に左右のタイヤの回転差を調整し、安定した走行を可能にする装置です。普段の運転では意識しにくい部品ですが、オイルの劣化や内部摩耗が進むと「ゴンッ」といった異音や振動が発生し、走行性能に悪影響を及ぼすことがあります。
さらに放置すれば症状が悪化して修理費用が高額になるだけでなく、最悪の場合は走行不能に陥る恐れもあります。そこでこの記事では、デフの役割や仕組み、種類と特徴をはじめ、故障時の症状や寿命の目安、交換費用までを解説します。点検や修理を検討する際の参考にしてください。
1. 車のデフとは
デフ(ディファレンシャルギア)は車にとって欠かせない装置のひとつです。普段の運転では意識されませんが、カーブでは左右のタイヤに回転差が生じるため、デフがなければスムーズに曲がれません。
ここではまずデフの役割を確認し、その後に仕組みや搭載位置などを整理していきましょう。
(1) デフの役割
デフ(ディファレンシャルギア)は、左右の駆動輪に生じる回転差を調整する装置です。もしデフがなければ、車は安定してカーブを曲がれません。
たとえば、車がカーブを曲がるとき、外側のタイヤは大きな円を描くので進む距離が長く、内側のタイヤは小さな円を描くので進む距離が短くなります。そのため、外側のタイヤはより多く回転し、内側のタイヤは少なく回転する必要があります。もし両輪が常に同じ回転数で回っていると、どちらかのタイヤが無理に滑って差を吸収するしかなく、スリップやタイヤの摩耗、走行性能の悪化につながってしまうのです。
(2) デフの仕組み
デフは基本的に駆動輪の間に搭載されています。たとえば、FF(前輪駆動)の場合はトランスミッションと同じケース内に組み込まれ、FR(後輪駆動)では後輪の中央部に搭載されています。また、4WD(四輪駆動)では前後のデフに加え、前輪と後輪の回転差を調整するセンターデフを備える構造もあるのです。
デフの内部はリングギア、ピニオンギア、サイドギアといった歯車で構成されます。リングギアが回転するとピニオンギアとサイドギアが公転します。
このとき左右輪のどちらかに抵抗がかかるとピニオンギアが自転し、サイドギアを介して抵抗の少ない駆動輪を多く回すことで、左右輪の回転差を調整しています。
例えば車をジャッキアップして駆動輪を片側だけ回すと、反対側のタイヤが逆回転するのはこの機構の作用によるものです。こうした働きによって、タイヤは自然に回転差を調整し、カーブでも安定した走行ができます。
(3) デフがない車はある?
ほとんどの車にはデフが搭載されていますが、例外として「レーシングカート」などにはデフがありません。カートは車体が非常に軽量で、旋回時には荷重移動によって内側のタイヤが浮きやすい構造になっています。その結果、デフを使わなくても内側のタイヤが浮いて回転差が生まれ、カーブを曲がれるようになります。
しかし、通常の車では、タイヤを浮かせて回転差を吸収する方法は現実的ではありません。そのため、デフが回転差を調整し、安定したコーナリングを可能にしています。
また、近年の電気自動車の一部ではモーターを各ホイールに内蔵する「インホイールモーター方式」が採用されています。この方式ではモーターを個別制御できるため、機械的なデフがない車でもスムーズに曲がれます。
2. 車のデフの種類と特徴

デフにはいくつかの種類があり、それぞれに特徴や適した用途があります。仕組みを理解しておくことで、走行シーンでの働き方もイメージしやすくなるでしょう。
ここでは代表的な種類を順に見ていきましょう。
(1) オープンデフ
もっとも広く使われているのがオープンデフです。通常の走行では、カーブの際に生じる左右の回転差を調整し、安定したコーナリングを可能にします。
ただし、片輪がスリップするとその車輪にばかり動力が逃げてしまうため、もう一方のタイヤに十分な駆動力が伝わりません。その結果、雪道やぬかるみでは立ち往生しやすいという欠点があります。
一方で、構造がシンプルでコスト面に優れていることから、多くの車で標準装備として採用されています。
(2) LSD(リミテッド・スリップ・デフ)
LSDはオープンデフの弱点を補う仕組みで、左右のタイヤに極端な回転差が出たとき差動を制限します。
これにより片輪が空転しても、反対側に駆動力を伝えられるようになります。スポーツカーや悪路走行を想定した車種に用いられることが多いデフです。
① 機械式LSD
クラッチプレートを内蔵し、トルクや回転差をきっかけに摩擦力を発生させます。効き方によって1Way・1.5Way・2Wayに分かれ、競技やスポーツ走行では強力な効果を発揮します。ただし効きが強いため、日常用途では扱いにくく、主にレース用など上級者向けといえるでしょう。
② トルセンLSD
クラッチプレートを使わずギアの噛み合わせによって差動を制御するタイプです。片輪がスリップしても、グリップしているタイヤにトルクを多く伝えられるのが特徴で、摩耗が少なく静粛性にも優れます。純正採用される例も多く、耐久性と扱いやすさのバランスに優れた方式です。
③ ビスカスLSD
内部にシリコンオイルを封入したカップリングを使って差動を制限するタイプです。効きが滑らかで純正車に採用されやすい一方、オイルの温度上昇によって作動特性が変化する点には注意が必要です。
(3) デフロック
デフロックは、デフの機能をあえて止めて左右の駆動輪を同じ回転数で固定する仕組みです。これにより片輪が浮いても接地しているタイヤに駆動力を確実に伝えられるため、ぬかるみや岩場など過酷なオフロードで大きな効果を発揮します。
ただし、デフの機能が働かないため舗装路では小回りがきかなくなり、通常走行には不向きです。多くの車ではスイッチでオン/オフを切り替えられる仕組みになっており、必要な場面だけ作動させるのが基本です。
3. 車のデフの故障症状や寿命
デフは走行中つねに大きな負荷を受けていますが、定期的にメンテナンスすれば長く使える部品です。それでも内部の摩耗や劣化が進むと不具合が発生し、走行性能や安全性を損なう可能性があります。
ここでは代表的な症状と原因、寿命の目安、メンテナンスについて確認していきましょう。
(1) 故障時に現れる症状
デフの異常でもっとも多いのが、走行中に出る異音です。「ゴンッ」や「ガラガラ」といった金属音のほか、機械式LSDではチャタリングと呼ばれるバキバキ音が発生することがあります。
さらに、カーブを曲がる際に抵抗を感じたり、ハンドルに振動が伝わったりすることもあります。こうした症状は走行安定性の低下につながり、放置すれば重大な事故につながる恐れがあります。
(2) デフが故障する主な原因
デフが故障する主な原因はオイルの劣化です。潤滑が不足すると内部部品の摩耗が進み、異音や焼き付きが発生する恐れがあります。オイル漏れが起きている場合も潤滑不足につながるため危険です。
次に多い原因がベアリングの摩耗です。回転軸を支えるベアリングがすり減るとガタつきが発生し、異音につながります。また、オイルシールの劣化やケースのゆがみ、ボルトの緩みなどもトラブルの要因となります。これらは外見だけでは判断が難しいため、専門的な点検が欠かせません。
(3) デフの寿命とメンテナンス
デフには明確な寿命はありませんが、適切にオイル管理していれば10万km以上使えるのが一般的です。長く使うためにはオイル交換がポイントで、2〜5万km前後、または2〜3年を目安に交換しておくと安心です。
しかし、内部に不具合が起きると走行が不安定になり、最悪の場合は走行不能になる恐れがあります。少しでも異音や振動などの違和感を感じたら、整備工場に相談することが重要です。
4. 車のデフに関することはグーネットピットにご相談ください

デフはカーブを安全に走るために欠かせない装置であり、仕組みや種類を知っておくとトラブル時の判断がしやすくなります。異音や振動が出たまま放置すると、走行安定性が損なわれるだけでなく修理費用も高額になりやすいため、早めに点検しましょう。
もし、走行中に不安を感じたときは自己判断せず、プロの整備士に相談することをおすすめします。グーネットピットならお近くの整備工場を簡単に探せるため、点検や修理をスムーズに依頼できます。安全で快適なドライブのためにも、早めのチェックを心がけましょう。