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車検・点検・メンテナンス
更新日:2017.12.20 / 掲載日:2017.12.20

W123復活大計画 「エアコンを最新技術で蘇らせる」

足回りのリフレッシュも終わり、いよいよ車検に向けてラストスパート。今回は前オーナーが残した負の遺産「エアコン修理」とステアリングのガタツキ問題に挑みます。日本の公道デビューまでカウントダウン開始となりますか?(笑)

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ベンツちゃん=Mercedes-Benz 300D(W123)

今回のメニュー…●スマートフォンでエアコンコントロール ●ステアリングのセンター調整

悪名高きエアコンの制御ユニットは最新テクノロジーで蘇るのか?

オートなのに内部はアナログ。特殊なエアコンは復活なるか?

 ベンツちゃんのオートエアコンは、各部分の動きは負圧で制御されるアナログ的な仕組みを持つ。だが、現状はかなり悪く、仕組みを制御するモーターとギヤはLLC漏れや酷い錆などで動作不良を起こしているようだ。
 そんな理由もあって前オーナーは、温水通路を手動で切り替えることができる切り替えバルブを取り付けることで、急場しのぎをしていた。だが、温度は手動で調整できるものの、吹き出し口はセンターベントで固定されており、とても快適とは言い難い。
 負圧アクチュエーターへの負圧回路をオン/オフできればこの問題は解決できると思うが、そのためには負圧コントロールをオン/オフできるトグルスイッチを、インパネに追加する必要がある。ただしインパネまわりは奇跡的にオリジナルを保っている貴重なセクション。できればこのままのキレイな状態を維持したい。
 そこで負圧回路のオン/オフをスイッチで切り替えるのではなく、スマートフォンで操作を行うプランを考えた。今回試みたBlueRelayは、Bluetooth経由で汎用4チャンネルのリレーの切り替えが可能という製品。リレーモジュールはインパネの裏側に装着できるため、インパネをいじることなく、バルブの切り替えが可能になる。今のところ、エアコン吹き出し口の切り替えを目的とするが、今後はスイッチやリレーの再生が難しそうなライト類にも活用できそうだ。

悪名高きACコントロールユニット
操作パネルの右下の丸いノブが、後付けされた“手動”冷却水切り替えバルブのスイッチ。このままでは吹き出し口切り替えは作動しない……。

ダッシュボードの取り付け時に、ひと工夫を加えていた

吹き出し口の開閉は負圧アクチュエーター(ピンク色の部品)と、12Vで作動する負圧通路切り替えスイッチで行われる。

オートエアコンは、手動でベントの開閉ができるように、自作の配線図を作成。今回は、この自作配線図が多いに役立った。

配線状況を確認
自作回路の負圧切り替えスイッチを作動させると、センターベントが開く。フロアベントが閉まる状態になることを確認する。

負圧切り替えスイッチは、非作動状態ではセンターベントが閉じる。フロアベントは開いてしまうので、足だけ熱くなってしまう。

スマホアプリで配線状況を確認
12Vの回路開閉の単純なスイッチが必要。だがオリジナル維持のため、取り付け箇所に悩む。そこで出番になるのがスマートフォンだ。

Bluetoothを介して、リレーの開閉ができるBlueRely(汎用4chリレー)。これを見えない箇所に装着することにした。

ペアリング操作が済めば操作はシンプル。接続したリレーのON/OFFを切り替えることで、吹き出し口の切り替えも可能になった。

スマホで動作を確認。狙いどおりにできたかも!停車中にしか操作できないのが難点だが、オリジナル状態を維持できるメリットは大きい。想像以上に大満足な結果だ。

ズレてしまったステアリング。真っ直ぐ走るためにセンター出しを確認

ステアリングのガタツキはジャンク品への交換で対応

 ベンツちゃんに採用されているボールナット式ステアリング。実は微妙な調整がキモであり、ちょっとしたステアリングの遊びを調整する程度の作業でも相当の技術と根気が求められる。整備書を確認してみると、遊び調整はステアリングギヤがセンター付近で微かに重くなった状態で行うことが推奨されている。
 そこで実際にバネばかりを用いて切った状態での重さの変化を測定してみると(タイロッドなどのリンケージは取り外した状態)、ステアリングの重さは整備書の記述とは比較にならないほどズシリと感じる。そこでステアリングシャフトのベアリングの劣化を疑ってみたところ、ここに異常はない。さらに詳しく見ていくと、どうやらステアリングの遊びを嫌うばかりにキツめに調整しすぎたのが原因ということが分かった。
 そこで若干緩めに調整してみると全体的には軽くなった。だがこんどはセンター付近で逆にトルクがスカスカになってしまう。慌てて整備書を深く読み解くと、過去に遊び調整を受けてないクルマであると、センター付近でトルクの低下が見られる、という記述を見つけてしまった。
 最初から傷んでいたのか、としばし落ち込みつつも、遊び調整を試してみることにする。何回かトライ&エラーを試みたところ、トルクの変化(センター付近とその左右)が大きすぎる気が……。
 そこで調整はギブアップ。ネットオークションで格安出品されていたジャンク品のギヤボックスを購入することにした。ジャンク品といっても走行距離は少なく、トルクの変化を比較してみても、ジャンク品のほうが整備書のトルク変化カーブに近い軌道だ。さらにピットマンアームを左右に揺すった際の微かなガタがほぼゼロ。どうみてもジャンク品のほうが全体的な摩耗は少ないだろう。
 おそらく、オリジナルのギヤボックスは増加した遊びを少なくするために極端にきつく調整されており、ハンドルの戻りが悪くなるという副作用があるんだろう。ベンツ本来のボールナット式ステアリングの独特かつ、滑らかなフィーリングは、間違いなく失われていただろう。

ステアリングギヤボックスのガタツキが気になる……
ピットマンアームを左右に揺すると微かなガタを感じる。遊び調整を正しく行わないと、歯面にダメージを与えるリスクが出てくるはずだ。

整備書では、センター付近でベースフリクション(60Ncm)より30~60Ncmほど増加し、120Ncmが回転トルクの上限と説明されている。

「調整が行われていなかったギヤボックスは回転トルクが低下する」。丁寧な記述内容に感動しながらも、落胆もしてしまった……。

まずリンケージ部分を調べてみる
ギヤボックス単体のステアリング回転トルクを調べるために、ピットマンアームからリンケージは取り外した。

Ncmを測定できるトルクレンチが手元にないので、バネばかりを使って回転トルクを測定。基準値より数倍もハンドルが重い。

遊びの調整はなかなか難しいかも……

ギヤボックスの遊びを増やすと、軽く回るようにはなった。だが左右付近のトルク増加が大きいのはとても気になる。

ヤフオクで手に入れたジャンクパーツに交換することに

取り外したギヤボックスから漏れたPSオイル。これが新油っぽいのは前オーナーがステアリングフィーリングの改善を試みた証拠かも?

上が事故車から抜き取ったジャンク品のギヤボックス。走行距離は20万kmほどと説明があった。

片方のバイスグリップをカウンターウエイト代わりに装着。遊び調整をしながら回転トルクを比較してみた。ジャンク品のほうがスムーズな印象だ。

やはりジャンク品のほうが状態はマシだ
遊びゼロの状態から、90度毎に遊びを増加させる方向に回す。そのトルクの変化を記録した。ジャンク品のほうがトルク変化はなだらかで基準値に近い。こちらに交換することにした。

ステアリングシャフトブーツの破れは、エンジン騒音の車内浸入の大きな原因になる。ホームセンターで購入したエアコン工事用のパテで補修する。

使えるパーツは再利用。節約DIYの鉄則であります(笑)
ユニバーサルジョイント式はガタや固着がステアリングフィーリング悪化の大きな原因になり得る。ただし、今回はゴムタイプなので大丈夫だろう。

ギヤボックスはなかなかの重さ。命がけの作業です……
状態がマシなギヤボックスを取り付ければ、40年前の最善のステアリングフィーリングが取り戻せるかも。

ATFに含まれる摩擦調整剤は、PSポンプやギヤの摩耗を進める一因になることも。念のため専用のPSオイルを使う。

最重要ポイントに到達。センター合わせってどうやるの?
ギヤボックスが正確にセンター位置になった状態で、クルマが直進するようにハンドルやタイロッドの左右長さを調整する。

ネットで手引手順を発見
形式不明のギヤボックスのネット画像だが、取り付けの参考には十分。どうやら専用の位置調整ボルトを使用するようだ。

少しハンドルを回した程度でも、位置合わせ用の穴とギヤハウジングの穴のズレは確認できる。

なんとか取り付け完了。ステアリングは大丈夫、のはず
穴の位置がピタリと合った状態で、ステアリングを直進状態で取り付ける。ひと山のズレは、誤差の範囲と納得することにした。

全バラしたギヤボックスで合わせ穴の構造を確認する。指で示しているのがピストン側の確認穴だ。

40万kmを走破した古いギヤボックスを分解してみると……
走行距離が伸びるアメリカ育ちのクルマの部品は、リビルト品に交換されている可能性が高い。優良リビルト品なら新品より信頼性が高い場合もあるが、逆の場合は「いじり壊された」ような不具合も十分あり得る。

このギヤボックスの遊び調整は、かなりキツく調整されていた。そのためステアリングの戻りが悪くなるような副作用が発症していたのだろう。オイルが新油状態なのは、前オーナーが交換した痕跡なのかも。

ピットマンアームシャフトの歯は、遊び調整ボルト側に向けて狭くなっている。このためボルト側にアームシャフトを引き上げるように調整すると、ワーキングピストンの歯との隙間が狭くなり、遊びは小さくなる。

この3山しかない大きなワーキングピストンの歯には、ピットマンアームシャフトの歯と同様にかなり大きな力が加わる。歯面は指で触った限りでは、段付き摩耗は確認できないが、表面加工の劣化は間違いない。

ボールやシャフトには傷などの劣化サインは確認できない。だがホイールバランスの狂いによるステアリング系の振動の悪影響が、繊細なギヤボックス内部の摩耗を進める可能性もあると思う。

足回りのトーイン調整も重要ポイント。得意(?)のDIY測定で最適化を試みる

新品パーツで万全のメンテ。いよいよ足回りの最終調整に挑む

 苦労して決定したギヤボックス(ハンドル)のセンター位置で、クルマが真っ直ぐに進むように左右のタイロッドの長さを調整したい。今回はタイロッドも新品に交換済みなので、トーインも同時に調整しなければならない。さらに分解前に滅茶苦茶になっていたキャンバー角も、足回りパーツをすべて新品にすることで、どれだけリカバリーできたかも、気になるところだ。
 まだベンツちゃんはナンバーを取得していないため、アライメントテスターを備える工場まで行くことができない。そこで出番となるのが、レーザーポインター付きデジタル傾斜計を活用したDIYアライメント調整だ。本車検に向けたサイドスリップの調整は、予備車検場で再調整する場合でも必須なので、このDIY方を覚えておいて損はないと思う。いよいよ次回は、シビエのライト(左側通行用)に交換し日本の車検に挑戦する予定です。

まずは左右の状態を確認
左右の前輪から平行に照射したレーザーが、左右の後輪の同じ位置になればクルマは直進すると判断する。(この段階でトーインは無視)

厳密に考えれば、後輪のトーインやホイール&タイヤの歪みの影響を受ける可能性もあるが、走行できない場合においては有効な方法だ。

大ざっぱにだいたいで調整してみる

タイロッドを左右とも同じ長さで調整。その後、大ざっぱにトーインゼロに調整してから、後輪のレーザー位置の確認を繰り返す。

お馴染みの計測器で測定してみると……
分解前は無茶苦茶だったキャンバーはどうなったのだろうか? 車体が水平になっていることを確認し、キャンバー測定にトライする。

おお! 意外にも合ってる(笑)
左右のロワアームのキャンバー調整ボルトは、真ん中位置で仮固定。左右キャンバーはほぼ同じになったようだ。

タイヤを取り付けて1G状態でロワアームボルトを締め付ける。ほぼゼロトーインだが、予備車検場でサイドスリップ調整は必須だろう。

車高を落として確認しても合ってる。神技術が身についてしまったかも(笑)
ほぼゼロ・キャンバーで左右差は0.01度。ガレージの床の微かな傾斜や測定誤差を考慮しても、DIY的には合格範囲内だと思う。

次回予告

次回は車検への最終関門
ライトの交換に挑みます!

提供元:オートメカニック

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

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