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更新日:2020.09.17 / 掲載日:2020.09.17
日産 フェアレディZのプロトタイプ公開! デザイン、性能、登場時期をチェック!
日産 フェアレディZ プロトタイプ
文と写真●ユニット・コンパス
フェアレディZが帰ってくる!
5月に行われた決算会見の場で、構造改革プラン「NISSAN NEXT」を発表し、生産計画や車種ラインアップの見直しなど、より骨太な企業に生まれ変わることを表明した日産。そのなかで明らかにされたのが、今後のニューモデルの投入計画で、国内市場にむけて2モデルのEVと4モデルのe-POWER搭載車を加えることが明らかにされた。そんな日産の決意表明ともいうべき記者発表会のエンディングを飾ったのが「Nissan Next A to Z」と題された動画で、現在日産が開発中の新型車がシルエットとして登場するという演出だった。その最後、トリを飾った「Z」こそが、今回公開されたフェアレディZ プロトタイプであった。
新型のデザインに大きな影響を与えた歴代フェアレディZたち
240ZGを中心に勢揃いした歴代フェアレディZ
プロトタイプの説明に入る前に、まずはフェアレディZについての歴史を簡単に紹介しよう。じつは日産は、1950年代の初期から国産メーカーでいち早くスポーツカー作りに挑戦してきた。ところが、先行する欧米のライバルたちにはおよばず、その販売台数はわずか数十台から数百台という規模にすぎなかった。それでも、スポーツカー作りを諦めなかった日産の努力が開花したのが、1969年登場の初代フェアレディZ(S30型)で、ヨーロッパの高級GTにも比肩しうるスペックとスタイルをリーズナブルな価格で実現させたことにより、北米を中心に記録的な大ヒットモデルとなった。以来、フェアレディZは、時代が求める性能と魅力的なスタイルを比較的手に入れやすい価格で実現するというコンセプトを受け継ぎながら、モデルチェンジを重ね、GT-Rとともに日本のスポーツカーアイコンとも言うべき存在に成長している。現行モデルは、第6世代(Z34)にあたる。
初代 S30型(1969年-1978年)
2代目 S130型(1978年-1983年)
3代目 Z31型(1983年-1989年)
4代目 Z32型(1989年-2000年)
5代目 Z33型(2002年-2008年)
6代目 Z34型(2008年-)
過去を受け継ぎつつ未来を目指したデザイン
グローバルデザイン担当専務執行役員アルフォンソ アルバイサ氏
今回の取材会は、横浜の日産自動車グローバル本社からほど近い距離に建設された「日産パビリオン」にて行われたのだが、イベントホールの扉を開けて黄色いプロトタイプを見た瞬間に、新しいフェアレディZのデザインが、これまでの歴史に敬意を払って現代的にリファインされたものであることが伝わってきた。なだらかにテールへと落ちていくルーフ、そのテールよりも高い位置を保ちながらノーズへと繋がるボンネット、逆スラントのノーズ、マッシブに膨らむリヤフェンダー、プロポーションはまさしく「フェアレディZ」そのもので、たとえエンブレムがなくともそのことは隠しようがない。
プレゼンテーションを担当したグローバルデザイン担当専務執行役員アルフォンソ アルバイサ氏によれば、エクステリアのテーマは「過去から未来へと引き継がれるもの」。全体の方向性が定まるまでには、レトロチックなもの、より未来思考のものなど、数多くの試行錯誤があったという。
シルエットをはじめ、フロント、リヤの造形には初代S30からインスピレーションを得たもの。現在の自動車デザインではグリルの造形でブランドアイデンティティを表現する手法が主流となっているが、フェアレディZプロトタイプのグリルは、それを過去へのオマージュという形で成し遂げている。グリル内をブラックアウトしたことで、シンプルな四角い空間となっており、「フラットデザイン」的なミニマルで現代的な印象を与えるのも巧みだ。このように、ディテールには歴代作からの引用が施されていて、たとえばLEDを使ったヘッドライトのグラフィック表現も、240ZGから着想を得たものとのこと。240ZGとはG(グランド)ノーズを装着してロングノーズ化したS30型のハイパフォーマンスモデルで、歴代フェアレディZのなかでも特別な1台となっており、中古車市場では1000万円近い価格で取り引きされている。デザイナーたちが過去モデルに対して敬意を払いつつ、新しい表現を目指したことが伝わってくる。
S30型をイメージさせる四角い空気取り入れ口
ボンネットよりもテールが下がるフェアレディZ独特のプロポーションを継承
LEDを使ったテールランプはZ32型の300ZXがモチーフになっている
グローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井 悟氏
プレゼンテーションではデザイン作業を取りまとめたグローバルデザイン本部エグゼクティブ・デザイン・ダイレクター 田井 悟氏も登壇し説明に加わったのだが、新型のデザインには過去からの引用だけでなく、新しい表現も盛り込まれていると説明。とくに気に入っている角度は車両後方を斜めから見たもので、「カタナ」と呼ばれるリヤピラーのモールやドア中腹に流れるシャープなラインがリヤフェンダーでやわらかく広がる様、そしてモダンな表現にアップデートされた300ZX風のテールランプなど、新型の見どころが凝縮されていると語った。
240ZGのヘッドライトカバーからインスピレーションを受けたヘッドライトデザイン
リヤピラーにはZのエンブレムと「カタナ」と呼ばれるモールが存在
インテリアデザインも公開。トランスミッションには6速MTも存在
公開された新型フェアレディZ プロトタイプのインテリア
新しい表現といえば、フルデジタルメーターを採用したインテリアも今回公開されている。デジタルメーターは中央にタコメーターを配置したスポーツカーらしいもので、レーシングドライバーの意見を参考にして、レブリミット付近が時計の12時の位置になるようにデザイン。走行時にはアニメーション表示でシフトチェンジを促すなど、デジタルならではのギミックが採用されている。初代以来の伝統を受け継ぎ、ダッシュボード上センターに3連のメーターが並ぶのもファンには嬉しいだろう。そして6速マニュアルトランスミッションの採用がアナウンスされたのもスポーツカーファンには朗報だ。
包まれ感のあるコックピット。歴代モデルのテイストを残しつつ現代的にまとめた
純粋な2シータースポーツとして開発が進められている
フルデジタル化されるメーター。中央にタコメーターを配置する
タッチパネルとアナログスイッチを共存させたインパネ。マニュアルも用意される
新型ではクルマを操る楽しさを追求していく
絶対的な速さではなく、クルマを操る楽しさを重視するという新型フェアレディZ
今回はデザインのみの紹介かと思いきや、フェアレディZ統括責任者の田村宏志氏も登場。新型フェアレディZの方向性について、「600馬力以上を発揮し、絶対的な性能を目指したGT-Rに対して、フェアレディZはダンスを楽しむような、クルマとの一体感、操る喜びを追求します」と言及。従来の自然吸気エンジンに代わってV6ツインターボを採用したことについては、「ターボであってもNAのような自然なフィーリングが実現できるため、パフォーマンスアップと両立する」と期待をあおった。また、現在の開発状況については、「まだ先行開発が終わったばかりで、これから市販化に向けての開発作業を行う」と語るに留まった。しかし、今回公開されたプロトタイプの完成度を見るかぎり、完成はそう遠くない未来に感じられた。いずれにせよ、新型フェアレディZは、その登場にむけて確実に動いていることが確認できた。日産にとってはもちろん、日本のクルマ好きにとってもシンボリックな1台であるだけに、新型が路上を走る日を今から楽しみにしたい。
日産 フェアレディZ プロトタイプ(6速MT)
■全長×全幅×全高:4382×1850×1310mm
■エンジン:V6ツインターボ
■タイヤ前・後:255/40R19・285/35R19