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更新日:2026.05.26 / 掲載日:2026.05.26
V8エンジンを搭載する新生アルピナ【九島辰也】

文●九島辰也 写真●BMW
先日開催された「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」で、アルピナの新世代の幕開けを予感させる“ビジョンBMWアルピナ”がお披露目されました。雄麗なビッグクーペの登場です。これまでのアルピナはBMWのラインアップを基本形としていて、その枠から外れることはありませんでした。
ですが、今回はBMWに100%吸収されたことを機に、独自路線を歩み出します。BMWの現行ラインナップにないモデルです。
もちろん、いろいろ考察すれば、これが次世代の8シリーズといった見方ができないわけではありません。現行モデルは日本市場から撤退し、モデルサイクルは終了しようとしています。ラージクラスのパーソナルカーはSUVに取って代わりましたからね。2ドアでも4でもビッグクーペはトレンド外。
なので、まずはアルピナブランドのコンセプトモデルで登場させ、マーケットの反応を見るというやり方はあると思います。

それはともかく、リアルに目の前に現れた“ビジョンBMWアルピナ”はかなりかっこよかった。クーペ好きのワタクシのハートを貫きました。
流れるようなフォルム、エレガントな佇まい、それと新解釈のキドニーグリルが特徴的です。西洋の甲冑のような力強さを感じました。このフロント部分はアルピナB7に代表されるシャークノーズを取り入れたそうです。
ちなみに、冒頭の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」ですが、これは年に一度イタリアで行われるクラシックカーの祭典です。1929年スタートという伝統ある催しで、ある一定の規定をクリアしたモデルがその希少性とエレガントさを競います。“コンコルソ・デレガンツァ”はイタリア語なのですが、日本語にすれば、「エレガントさを競う(=コンクール)」ことになります。“ヴィラ・デステ”は湖畔にあるデステと言う名のヴィラ(宿泊施設)です。

でもってこのヴィラのある場所が素晴らしい。ロンバルディア州北部のコモ湖湖畔はアルプスを臨む高級リゾート。ジョージ・クルーニーなどが別荘を持ち、“リトルハリウッド”なんて呼ばれています。要するにセレブリティの避暑地ですね。訪れるのは今回が2度目ですが、エレガントな雰囲気には圧倒されます。
エントリーされるクラシックカーは英国とイタリア車が中心になります。戦前のロールス・ロイスやベントレー、戦後のアルファ ロメオやフェラーリなどが目を惹きます。スーパーカーはパガーニやブガッティあたり。コンセプトカーも展示されます。
そんなイベントのスポンサーをしているのがBMW。BMWにクラシックカーのイメージは薄いですが、文化の保存という意味で彼らは長年応援しています。ただ、BMWのモデルがないわけではありません。
今年は1937年型328ビューゲルファルテと1958年型507がエントリーしました。しかもこのBMW328ビューゲルファルテはコンクールの“ベスト・オブ・ショー”に選出されたから驚きます。ミッレミリア出場用につくられたこのクルマは最小限のウィンドスクリーンを装着していることからもわかるように、軽量化されたレーシングカーです。

“ビジョンBMWアルピナ”に話を戻すと、このモデルが紛れもなくアルピナであることはエクステリアから理解できます。それは1974年以降彼らが採用してきたボディサイドのデコラインが描かれていることや、1971年以降定番となったスポークホイールを装着しているからです。もちろん、実際は現代的にアレンジされていますが、それらがルーツであることは一目瞭然。アルピナのアイデンティティを感じさせます。

この他では、4人乗車であること、全長が5200mmあること、V8パワートレーンを積むことなどがアナウンスされました。アルピナのBEV路線は変更されています。ブランドポジションは、BMWとロールス・ロイスの間を埋める役目を果たします。確かに今回のデザインを見る限り、それは間違いないでしょう。
個人的に今回登場したビジョンBMWアルピナを見て、ビッグクーペで良かったと感じました。時世的にSUVの方が話題になりますが、アルピナのイメージではありません。それに先般新型メルセデス・ベンツSクラスにクーペが復活するという話を耳にしました。となると新たなトレンドが起きるかもしれません。SUV一色ではつまらないですからね。大人の乗れるエレガントなクーペの選択肢が増えることを希望します。