カーライフ・ドライブを楽しむ
更新日:2026.05.09 / 掲載日:2026.05.09
残された昭和ドライビングウェイを楽しむ旅へ 前編

懐かしのドライブ道を走ろう!
「この道、懐かしいなぁ」、「久しぶりにこの道を走った!」、「このお店まだ続いているんだ……」
そんなふうにドライブ中に思ったことはないだろうか?
懐かしさが残る“道”や街道沿いにあった“ドライブインや食堂”などの記憶は、なにかしら残っているもの。
そこで本特集では、特に昭和のノスタルジックな雰囲気が残る場所を中心にピックアップ。
懐かしい時代のよさを改めて思い出す、素敵なドライブを楽しんでもらいたい。
撮影/木村博道、渡部祥勝
(掲載されている内容はグー本誌 2026年5月発売号掲載の内容です)
郷愁を求めて昭和レトロドライブへ──
小さくて、古くて、懐かしい、そこは自販機と向き合った記憶の地(群馬県)
ドライブ中、ふと、道路沿いの建物が目に入ったことはないだろうか。ふらっと駐車場へ入ってみると、看板には「ドライブイン」と書かれていて、店内には麺類や、ハンバーガーなどの時代がかった自販機が並んでいる───。
ドライブインは、クルマの普及とともに各地へ広まったものの、高速道路の整備やSA・PAの充実化が進み、一般道でも道の駅などが普及したことで、存在感は薄まっていた。しかし、令和の今、その魅力が再認識されているという。
外装や内装から感じられる、古めかしいがノスタルジックなムードに加えて、素朴でアットホームな食事や、クラシックな自販機の雰囲気などを堪能できる場所。全盛期を知る中高年は懐かしさのようなものを感じ、現代の若者にとってはSNS映えする「エモい」スポットとなる。
最新鋭の新名所より、風情のある場所が、今ドライバーの心を温めてくれる存在となっている。
オススメの立ち寄りスポット
ピット・イン77
近年、全国で注目を集めているレトロな自販機設置型のドライブインで、県道142号線沿いにある。店内にはホットサンドやハンバーガー、うどんやラーメンなどの販売機が設置され、ゲームコーナーも併設されている。レトロな書体のイカした看板が特徴だ。
Data 住:群馬県太田市牛沢町332-1 営:24時間営業


オススメの立ち寄りスポット
オレンジハット沖之郷店
『ピット・イン77』からクルマで30分程度の距離、県道38号線沿いにある同店は、建物前に広大な駐車場が備えられた自販機設置型ドライブイン。軽食や飲料の自販機は充実しており、店内には食事できる場所も確保されている。ゲームコーナーも完備。
Data 住:群馬県太田市沖之郷町448-4 営:24時間営業


PART1 昭和の面影を残す 道編
懐かしのドライブはここを走るべし
十石峠街道 (群馬県)
群馬県高崎市と長野県佐久市をつなぐ古道。かつて米作りが難しかった上州へ、信州から一日「十石」の米を運んだことがその名の由来とされる。現在は国道299号や462号として整備され、神流川沿いの風光明媚な景色や歴史ある宿場町の面影を楽しめる。



十石峠街道の神流川の中にそびえ立つ、周囲約50m、高さ約15mの巨大な奇岩「丸岩」は歴史を感じさせてくれる。丸岩から高崎方面へ向かうと、「道の駅 万葉の里」が見えてくる。地元の特産品を楽しめる休憩・観光スポットだ。
季節ごとの贅沢で爽やかな古きよき山道の風情を味わう
日本の道路網は、昭和30年代頃から、モータリゼーションの発達に合わせて整備されてきた。クルマの普及や進化とともにインフラ整備も一気に進み、現在では、高速道路も一般道も全国的に整えられている。昭和の時代に構築された古い道路が、今もしっかり運用されていることにも目を見張るが、こういった古い道にも定番のドライブコースがある。
古い道路というと、道幅が狭かったり、路面状況がよくないといったマイナス面も見受けられがちだが、それらを補うポジティブな面も備えている。
たとえば、景色や四季を存分に楽しめること。速いペースで走っていては見逃してしまう、特有の空気感や紅葉や新緑といった四季折々の景色を堪能できる。また、コーナーをひとつずつ丁寧に曲がっていくことで生まれる心地よいリズム、加速と減速の緩やかな波を感じられる。
道幅の狭さが、趣深さを生むこともある。対向車や路面状況に注意してゆっくり走ることで、運転操作に集中できるうえ、速度域が低いため、リスクを抑えて、自身が安全と感じられる速度で走ることができる。
自然との対話、心身の癒やし、そして愛車との一体感を安全に楽しめる。これぞ昭和のドライビングウェイの醍醐味である。
オススメの立ち寄りスポット
ドライブイン七興


十国峠街道(国道462号)を群馬方面に抜けて、藤岡市に入ると見つかる古風なドライブイン。1975年創業の歴史ある自販機設置型のドライブインで、昭和の雰囲気を色濃く残していることから「レトロ自販機の聖地」としても知られている。
Data 住:群馬県藤岡市上落合853 営:24時間営業 休:日曜日
懐かしのドライブはここを走るべし
御坂みち (山梨)
山梨県の南に位置する富士吉田市を起点に、終点の笛吹市に至る国道137号のことを通称「御坂みち」と呼ぶ。御坂峠をまたぎ、甲府盆地と河口湖の間を結ぶ重要な道で交通量も多い。御坂峠の富士河口湖町側にある天下茶屋には太宰治が宿泊したことでも知られている。




御坂みちからほど近い、笛吹市の八代ふるさと公園から見る甲府盆地の景色はすばらしい。道中には色鮮やかな桃の花がたくさん咲いていた。秋には味覚狩りが楽しめるなど、ドライブの楽しみが広がる。クリアに晴れた日には雄大な富士山の姿が見られる(取材時は曇り)。
“変わらない道” には人それぞれの懐かしい思い出が詰まっている
令和時代となった現在にも、もちろん、日本各地に多くの人から支持されているドライブウェイが存在している。
それらのなかには、昭和~平成~令和と時代が移り変わるなかで、新たに開通したり、より利便性を高めるための改良が加えられた道もある。一方、昭和時代から“変わらない道”として残っているものもまだ多い。 高速道路が拡充し、ドライブで下道を走る機会が減りつつあるなか、沿道でレトロな建物などを見かけて、どこか懐かしさを覚えたり、当時の記憶が蘇るといった経験が、読者のみなさんもあるのではないだろうか。
昭和という時代を感じられるドライブは、自分の歩みを遡り、どこか温かな気持ちにさせてくれる……そんな素敵な時間を創出してくれる。
取材で訪れた「御坂みち」も古くからある道のひとつで、御坂峠のワインディングを走り抜けて県内の南北を結ぶ定番ルート。道中にはドライブインもある。本特集のテーマに合致したどこか懐かしい道であった。
オススメの立ち寄りスポット
ドライブイン黒駒

新御坂トンネルの北、御坂みち沿いにあるドライブイン黒駒は、レトロな雰囲気を残す昔ながらの食事処。甲州名物の「ほうとう」1200円(税込)は、味噌味でじっくり煮込まれたもちもちの麺が最高。野菜やキノコがたっぷり入っていて、食べごたえもある。
Data 住:山梨県笛吹市御坂町藤野木1681ー4 営:8:00〜16:30 休:日曜日※季節により異なるため要確認


テーブル席とお座敷席があるシンプルな店内。木製のお品書きがいい雰囲気を醸し出している。
column あの頃オレたちは弾丸だった……
爆走! 昭和世代の街道ドライブ
昭和レトロドライブについて紹介してきたが、昭和の頃に青春時代を過ごした年配ドライバーに登場してもらい、じつのところを語ってもらった。リアル世代にとって、昭和のドライブは決して美しいものじゃなかった!?
清水草一さん
1962年生まれ、東京都出身のベテラン自動車評論家。多数の自動車専門誌、ウェブ媒体で連載を持ち、50台以上のクルマを購入してきた。


高速が未整備だった時代、若者は貧しい街道を走った
昭和レトロがブームだという。昭和に青春時代を過ごした我々世代にとっては、言うまでもなく懐かしいが、では当時我々が昭和レトロなドライブインなどをどう感じていたかというと、懐かしいと思うはずはなく、もちろんオシャレでもなかった。それは当時、古き悪しき昭和の象徴であり、バブル世代としては、できれば立ち寄りたくない場所。逆に我々が好んだのは、ファミリーレストランなどの近代的で画一的なサービスだったのだから、皮肉というべきか。
昭和世代が実際にどんなドライブをしていたかというと、基本的には弾丸系だった。できるだけ速く目的地に到着し、体育会的にガツガツ遊んで帰る。途中立ち寄るのはサービスエリアかファミリーレストラン。当時まだサービスエリアも自由化されておらず、メニューはイマイチだしトイレもキレイとは言えなかったので、高速道路を降りてからファミリーレストランがあると、歓声とともに滑り込んだ。デニーズの「コーヒーおかわり自由」がどれだけありがたかったか……。先を急ぐ弾丸ドライブ中でも、ファミレスにはつい長居してしまった。

そもそも昭和時代は、高速道路もまだ多くが整備途上で、すぐに途切れてしまうので、一般道を走る距離が、今よりはるかに長かった。たとえば関越道の関越トンネルが開通したのは1985年。それまでは、国道17号線で三国峠を越える以外、新潟県に行く手段はなかった。国道17号線の長くて狭くて混んだ道筋は、ぞっとするほど殺伐としており、走破するのは苦行そのもの。だからこそ燃えたのかもしれないが。
そうやってたどり着いた県境の三国トンネルは、信じられないほど狭くて暗く、対向車線の大型トラックは、恐怖以外の何物でもなかった。あんな貧しい街道を走って、ユーミンの里・苗場になんとかたどり着いていたのかと思うと、我ながら呆然とする。
当時我々が爆走した国道たちは、高速道路の開通後、ほとんど走ることもなくなった。そんな街道をたまに走ると、昭和の冷凍食品的な風景が点在していることに愕然とする。それは昭和世代にとって、懐かしいというよりも、ちょっと暗い気持ちになる、昭和ドライブの貧しさや苦行の跡なのである。
