車のメンテナンス
更新日:2026.04.20 / 掲載日:2026.04.20
憧れの1台を「一生モノ」に。レストモッドが変える、ヘリテージカーとの付き合い方

旧車のスタイリングには憧れるけれど、「故障が怖い」、「夏は車内が暑くなりそう」、「高速を走るのが不安」などというイメージで二の足を踏む、という方も少なくないはず。そこで、元のクルマの魅力を保ちつつ、現代の技術で性能や安全性、快適性などを高めた「レストモッド」の実例をオートモービルカウンシル2026に展示されたクルマを通じて紹介します。旧車に安心して乗る1つの方法として、ご参考にどうぞ。
F1で培った技術も取り込んだ究極の空冷式ポルシェ911

ポルシェ911タイプ964をベースに、空冷式ポルシェのレストアやモディファイで有名なシンガーがF1チームウィリアムズのグループ企業「ウィリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング」を技術パートナーに迎えて制作したのが、こちらの「ポルシェ911リイマジンド・バイ・シンガーDLS」という1台。

ボディー外皮はオールカーボンとし、エグゾーストをインコネル性にするなど徹底的な軽量化を図り、エンジンの出力は500psまで引き上げられている。「ねじの1本から徹底的に見つめなおして作った」と言い、なんとオリジナルエンジンから流用されたのは、クランクケースのみ。外観のフォルムや車内のアナログメーター、シフトタッチなどはベースの車両の雰囲気を守りながら、究極まで走りに磨きをかけたものになっていました。

また、シンガーが最初にレストモッドを手掛けたポルシェも展示。こちらもボディーにカーボンを採用し、BBSやブレンボ、ミシュランなどの名だたるメーカーの協力を得て出来た特別な車両です。担当者が「作りたいと思ったものを、そのまま形にした」と話すように、ボンネットの中央付近に往年のレーシングカーのような給油口を設けるなど、遊び心を加えてユニークな姿に仕上がっています。

今、自動車メーカーが空冷のピュアスポーツカーを新たに作るということは現実的ではない中で、現代的な性能を持った空冷ポルシェは、とても魅力的な存在と言えます。
・シンガー公式サイトhttps://singervehicledesign.com/ja/
ワールドラリーカーの魂を宿したインプレッサ「プロドライブP25」

インプレッサがWRCに参戦するためのワールドラリーカー(以下WRカー)を最初に製作したのが1997年。そこから25年目の年に、WRカー製造やチーム運営を行っていたプロドライブが記念として作った限定車が「プロドライブP25」です。WRC参戦黄金期のマシンを、最新の技術をもって復活させるというプロジェクトによって作られたものでした。
インプレッサWRC97のスタイリングを担当したピーター・スティーブンスが監修した2ドアボディはドア以外のアウターパネルがすべてカーボン製。2.5Lのターボエンジンや競技用のシーケンシャル・ドグミッション、ビルシュタイン製ダンパー、APレーシングの大径ブレーキなどを備えて“最強の公道レーシングカー”にレストモッドされています。

2ドアの初代インプレッサの生産台数が少なく、プロドライブP25自体も少量生産だったため、同じものを手に入れることはなかなか困難ですが、プロドライブが同じくラリー用に手掛けた「インプレッサWRX」「インプレッサWRX Sti」などの開発にも携わっており、方向性も似た部分がありますので、その2モデルをレストア、レストモッドしてみるのも良いかもしれません。
伝説のラリーカー「ランチア・デルタ」の2つの異なる現代化

1987年から1993年の間にWRCで6度のマニファクチャラーズタイトルと4度のドライバーズタイトルをもたらした伝説のマシンがランチア・デルタ。それを異なるアプローチで現代化したのが「ランチア・デルタ・インテグラーレ・フトゥリスタ・バイ・アモス」と「デルタEvo マルディーニ・レーシング」の2台です。

ランチア・デルタ・インテグラーレ・フトゥリスタ・バイ・アモスは、デルタ・インテグラーレ 16Vをベースにモディファイして2018年に発売されたのがフトゥリスタ。5ドアから3ドアに変更し、アウターパネルの大部分にカーボンファイバーを採用。車重を1250㎏と軽量化した。骨格こそ、当時のままではあるものの、1000か所以上に補強を施しているといいます。
4気筒ターボユニットも量産車用のランプレディー・ユニットを踏襲しながら、吸排気系や冷却系、エンジンマネジメントシステムは大幅に手を加え、330psまでチューンナップできるようになっています。

もう一つのデルタEvo マルディーニ・レーシングはランチアにWRCでの黄金期をもたらした世界王者ミキ・ビアジオが中心となって作り上げたもの。ベースはデルタ・インテグラーレ・エヴォルツィオーネ2の最終型(1994年モデル)。

ターボエンジンは当時の競技仕様のものを基本にECUなどで現代化を図り340psを発揮するといいます。トランスミッションも強化をしたほか、クラッチはツインプレートに変更。ブレーキも最新のものを採用するなど、今でもラリー界のトップを狙えそうな内容となっています。
小型バスがトランスポーターに大変身

ベースとなる三菱・ローザ(2011年式)は保育施設や商業施設などの送迎などに使われることも多い小型バス。トランスポーターに大胆に変身させたのは、高知県平田町のエスジー。キャンピングカーのベースとしては利用されることもあるクルマですが、競技車両などを運搬するトランスポーターにするのは大胆かつ贅沢です。

まるで、欧州のキャンピングカートレーラーのようなアルミボディは近未来的な印象。外装の各所に付いた突起状のものは仮留めのためのもので、開発真っ最中のものを展示した形です。

とはいえ、クルマを積載する部分や5人乗りのシート周辺はほぼ完成に近い状態。エスジーの担当者も「販売を目指して、開発を進めている」と意欲的で、将来的に購入できる可能性は高そうです。
ここまで見てきたものは、ベース車両が高額なものが多かったですが、ローザはグーネットで調べてみると300万円弱から見つかるので、免許や保管場所などが許せば、レストモッドの実現は割と現実的。もちろん、キャンピングカー用の架装をするのもアリです。
メーカー公式のパーツで名車をレストモッド

GAZOO Racingが販売する「ヘリテージパーツ」は、メーカーが公式で作る純正の復刻部品。レストモッドにうってつけです。


オートモービルカウンシルの会場では、スープラ(JZA80)とスプリンター・トレノ(AE86)の実車とそのヘリテージパーツが展示されていました。


大きく見た目を変えるものではありませんが、現代の素材や技術で復刻されているため、安全性や快適性を高める、という点ではレストア(修復・復元)よりも、レストモッドというイメージがしっくり来ます。スープラのインストロメントパネルを例に取ると、現代の材料を使い耐久性を高めつつも、オリジナル部品のシボ加工は忠実に再現しています。

オートモービルカウンシルの会場には、既に発売の部品だけでなく、AE86用として6月に発売予定の4A-GEのエンジンのシリンダーヘッド/シリンダーブロックのほか、今後復刻予定の4A-GEエンジン用バッフルプレートなども展示されていました。
現在ヘリテージパーツは8車種300点以上。今後もさらなる部品のリリースが予定されていることも考えるとレストモッドのすそ野が広がりそうです。

レストモッドは日本でも少しずつ身近なものに
少し前までレストモッドといえば、レースカーやヒストリックカーベースとしたものがほとんどで、まるで美術品を修復・復元するのと同じような世界観でした。
しかし、今はそうではありません。
例えば、この記事で紹介した「GRヘリテージパーツ」と同様に、日産ではスカイラインGT-Rを対象にした「NISMOヘリテージパーツ」、マツダではNA型ロードスターとFC/FD型RX-7を対象にした「クラシック マツダ」を提供していて、ホンダも2026年4月から「ホンダ ヘリテージ ワークス」をスタートしました。マツダやホンダでは、モデルにごく一部のモデルに限定はされていますが、レストアサービスも提供しています。
また、小規模なショップでもレストモッドを行うところが増えており、高品質なコンプリートカーを提供するケースもみられるようになっています。
レストモッドは今や、「毎日乗れるクラシックカー」を実現するものでもあり、一般ユーザーにも身近なものになっています。かつて憧れたクルマがある、クラシックなクルマが好き、という方は、レストモッドして乗ってみる、ということを選択肢の1つに入れてみてはいかがでしょうか。
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ライタープロフィール
地方新聞社で記者としてキャリアをスタートし、自動車産業やモータースポーツ関連の原稿を多く手掛けた。その後、自動車分野を専門とする制作会社では雑誌やムック本、ディーラーの機関紙などの取材・編集などを担当。自動車ニュースサイトでデスクを務めるなどし、現在はグーネットマガジン編集部に。自動車関連で最も多く取材をした分野はキャンピングカー。
地方新聞社で記者としてキャリアをスタートし、自動車産業やモータースポーツ関連の原稿を多く手掛けた。その後、自動車分野を専門とする制作会社では雑誌やムック本、ディーラーの機関紙などの取材・編集などを担当。自動車ニュースサイトでデスクを務めるなどし、現在はグーネットマガジン編集部に。自動車関連で最も多く取材をした分野はキャンピングカー。

