車の最新技術
更新日:2025.10.22 / 掲載日:2025.10.22
市販化求む! 太陽光で年間3000km分を充電【日産 Ao-Solar Extender】

文●内田俊一 写真●ユニット・コンパス
日産はジャパンモビリティショー2025のトウキョウフューチャーツアー2035に日産 サクラ Ao-Soler Extenderを出展する。軽BEVのサクラをベースに車載用電動スライド式ソーラーパネル、Ao-Soler Extenderを用いて自ら充電するプロトタイプである。
アイディアコンテスト優勝

過去初代リーフにもリアに小さなソーラーパネルを用いた仕様があったが十分な発電量を確保するには至らなかった。また、e-NV200を用いてソーラーEVを試作したこともあったが、ソーラーパネルの面積は十分だったものの高効率の特別なパネルを使用したことから高価格となり、市販するレベルではなかった。
それであれば市販されているソーラーパネルの面積を広くすることで十分な発電量を確保すればいいのではないかという発想から生まれたのがこのAo-Soler Extenderだ。因みに日産社内で開催されている2021年度のアイディアコンテストで優勝した案がもとになっている。
様々な実験を繰り返し、2025年4月に試作車の第1号車が完成。現在実証実験を行っている真っ最中だ。そのポイントは本物のソーラーパネルが載っており、実際にきちんと発電すること。そして電動でソーラーパネルがスライドすること。発電した電気はサクラのバッテリーに充電されること。最後にナンバー付きで公道走行が可能なことだ。

それをもとにショー用にプロトタイプを作成。Ao-Soler Extender部分をより薄くスタイリッシュに仕上げ、ボディカラーを特別色の“青空ブルー”に。光が当たったところだけギラリと光るのが特徴だ。同時にホイールも新作。空力を意識しフラットな面構成でシルバーのラインが入れられた。その結果ソーラーパネルのシルバーのライン、ボディのシルバーのライン、そしてホイールのシルバーのラインの3つでトータルコーディネートされている。


市販のソーラーパネルがキー

具体的な仕様だが、走行モードの時はパネルを格納してルーフにある1枚のパネルにより、最大約300Wの電力を生成。駐車しているときはパネルが前に伸び広い面積で発電。その際は最大500Wに到達する。その結果として年間約3000km相当の発電量を確保する(神奈川県の日照時間等をもとに算出)。つまり日向に駐車しているだけで“勝手に”充電するというわけだ。
これによるメリットは大きく2つ。ひとつは充電の手間が大幅に減ること。通勤や買い物などの近距離使用ユーザーであればほとんど充電する必要はなくなるだろうし、また、ソーラーパネルが伸びることで日よけにもなることからエアコンの消費電力も押さえられる。

もうひとつは災害時の小さな発電所、小さな避難所という位置付けだ。電気自動車は万が一のときに電源になり家電が使えることで好評であるが、1度使いきってしまえば電池がなくなってしまう。しかしAo-Soler Extenderであれば太陽光発電により電池は復活し、さらにエアコンが使えるので小さな避難所にもなるという大きな特徴を持っている。
また、突風や、降雨、日暮れなどの際には自動で伸びた部分が格納もする。
いくらだったら買いますか?

関係者によると、展示されている会場で声を聞かせてほしいという。「どんなに性能やデザインが良くても高くては誰も買ってもらえないでしょう。ですので、いくらだったら買いますか?それを聞くために今回ショーに出しました。いくらで出してほしいと自由に意見を頂戴したい。それが我々の励みになります」とコメントしていた。
そこでのキーは市販している太陽光パネルを使っているということで、可能な限り安価に提供したいかという思いの表れである。重量は30kg程度にすることで、車体補強なしに取り付けることが可能とのこと。
ちなみに日産Ao-Soler Extenderとは、日本語の青空とソーラーパネルのソーラーをかけ合わせたAo-Solar。それからパネルが伸びる、エクステンドするところからエクステンダーとして、日産Ao-Soler Extenderと名付けられたという。