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更新日:2025.10.07 / 掲載日:2025.10.07
【フェラーリ】テスタロッサは今も昔もスーパーカーの頂点【九島辰也】

文●九島辰也 写真●フェラーリ
フェラーリが新型車を日本でお披露目しました。9月初旬にミラノでワールドプレミアされたモデルです。ポジションはSF90ストラダーレの後継に当たります。要するにラインナップの指標で表すならもっともレーシーなモデル。今年発表されたアマルフィとは対極と言ったところでしょう。同じDNAを持つスーパーカーでもキャラクターは異なります。

SF90ストラダーレの後継である証は、プラグインハイブリッドシステムを搭載するからです。4リッターV8ツインターボ+3モーターといったパワーソースを搭載します。マックスパワーは1050馬力。内燃機関の830馬力と3モーターの合計220馬力を足した数値です。SF90ストラダーレで4桁に突入し1000馬力で我々を驚かせたのですが、そこから早くも50馬力アップが図られました。
駆動方式はフロント左右に1つずつモーターを、リアに3つ目を搭載します。なので、言うなれば四駆。エンジンが始動しないEVモードではフロント駆動で走ります。
ところでこのモデルのネーミングですが、849テスタロッサと言います。“8”は気筒数で、“49”は総排気量3990ccの1気筒あたりの排気量、およそ490ccを意味します。それにしても細かいですね。かつては308や328のように排気量の頭2文字と気筒数といったようにわかりやすかったのですが、今回は複雑です。

そこで、ジャパンプレミアを機に来日した本社スタッフに名前について質問したところ納得の答えが返ってきました。それによると、フェラーリのトップレンジには過去を讃える要素が取り入れられるそうです。SF90は“スクーデリア・フェラーリ”の90周年を祝ったものでした。そして今回は“テスタロッサ”を用いることで、過去のそれを賞賛します。モデルで言えば、かつてル・マンで勝利したレーシングカーの250テスタロッサ、それと1984年にデビューした市販車のテスタロッサです。

マニアックな話で恐縮ですが、この言葉自体は1955年から使われています。でもそれはモデル名ではなくてエンジンの愛称。ある整備士が高性能エンジンを赤い塗料でマーキングしたことに端を発します。“テスタ”は頭、“ロッソ”は赤を意味します。つまり、エンジンのヘッドと呼ばれる部分が赤いことを指します。まぁ、近年はヘッドカバーケースがすべて赤ですからね。エンジンフードを開いてそうなっていても、それほど特別な感じはしません。

それではデザインですが、全体的にどこか懐かしい感じがします。というのも、フロント周りはあえて1980年代のテイストを取り入れているからです。あのテスタロッサですね。ただ、そこには伏線があり、12チリンドリやF80がデイトナをイメージさせていました。つまり、その流れでここにたどり着いたわけです。フロントフェイスあたりがちょっと角張っていたり、ヘッドライトカバーが四角だったり、そこに黒いアクセントが付いていたりする部分です。飛び出したバンパー下のスポイラーも角張っています。リアもそう。512Sをインスピレーションするテール部分に可動式のウィングが組み込まれますが、ここも少し角があるような造形で80年代風に見えます。

そんなスタイリングは写真で見るとレトロ感が強いですが、実車はそうではありません。そうした過去のモデルに通じるところが見え隠れしますが、フューチャーデザインであることは確かです。エアロダイナミクスに徹底的にこだわりながら、先進性を具現化しました。開発スタッフはこうも言っていました。SF90ストラダーレが意外にコンサバだった分、このクルマは冒険したと。
ということで、ついに登場した現代版テスタロッサには興味津々です。なんたって80年代に青春を過ごした我々にとって当時のテスタロッサはスーパーカーの頂点でしたから。その頃バイブルでした特捜刑事「マイアミバイス」ではその白いボディに目が釘付けになっていたと思います。その前の黒いデイトナと同じように……。あとは、いつごろテストドライブができるのか。マラネッロからの朗報を待つばかりです。