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更新日:2025.07.31 / 掲載日:2025.07.31
新型ムーヴの魅力に迫る!
DAIHATSU 新型ムーヴ魅力ガイド&ライバル比較
30年もの間、軽自動車市場を牽引してきたムーヴがフルモデルチェンジ! 7代目となる新型は、スライドドアの追加や最新安全装備の強化など、より完成度の高いモデルに生まれ変わった。ここではその魅力をお伝えしよう。
●文:横田晃 ●写真:澤田和久
うれしい価格でデビュー。待望のスライドドアにも注目すべし

生き残りをかけて「スライドドア」モデルへ
1995年に初代がデビューしたダイハツ・ムーヴは、1993年に誕生してミラクルヒットとなったスズキのワゴンRとともに、今日では国内自動車市場の約4割を占めるまでになった軽自動車人気の牽引役を果たしてきた。これまでの30年間、6世代の累計販売台数は340万台以上という、大ベストセラーだ。
ヒットの理由は、全長と全幅がミニマムな軽自動車の枠内で全高を高めに取ることで、大人4人がゆったり乗れる広さを実現したことにある。これはいわゆるハイト軽ワゴンと呼ばれるパッケージだ。
ところが近年ではその人気を、ダイハツ自身が2003年に投入したタントに代表される、さらに全高を高めて広大な室内空間を実現したスーパーハイト軽ワゴンと呼ばれる車型に譲っている。
もともと初代ムーヴは、広い室内で多彩に使えるレジャーカーという需要も意識した設計で、当時としては新鮮だったアクティブなキャラクターが、若いファミリー層に支持されていた。マイナー時に追加された〝裏ムーヴ〟と銘が打たれたカスタム仕様もウケて、軽自動車市場の主役になっていた。
しかし30年後の今では、世の中も大きく変わった。現在子育て中の世代は、前述の通りスーパーハイト軽のさらなる広さやスライドドアの使い勝手を支持している。
では、これからのハイト軽のムーヴはどうあるべきか。それをじっくり考えるために、時間が必要だった。最後の2年は残念な不祥事のせいだが、もしも順調に進んでいたとしても、先代ムーヴの登場から新型となる7代目の誕生までには、9年もの時間をかけて商品計画が練られた。
その間に、ダイハツでは新世代プラットフォームとなるDNGAが開発され、2019年にタントが、2022年にはムーヴの派生車種だったキャンバスがそれを使ってモデルチェンジを遂げた。それぞれの主なターゲットはタントが子育て世代、キャンバスが若い女性になる。そして両車とも、リヤには両側スライドドアを採用して好評だ。
そうして、現在の軽自動車の2大ユーザー層をそれぞれしっかりと掴んだ上で、今なお人気が高いジャンルのハイト軽の新たなスタンダードとなるために、なされた決断が、ムーヴのリヤスライドドア化だったのだ。
ムーヴは先代で、派生車種となるキャンバスを誕生させて成功したが、新型では逆にキャンバスが先行し、新型ムーヴはキャンバスと同じ型式を持つ派生モデルという逆転関係になっている。
もちろん、デザインは明らかに異なり、とくにAピラー部分は丸みを帯びたキャンバスとはまったく違う。しかし、じつは新型ムーヴは先代より全高が少し高く、キャンバスと同寸となっている。
当然、前後席の広さやフロア高もキャンバスと同じ。スライドドアの開口部のサイズも、キャンバスと同じになっている。
一方、女性を意識した商品企画のキャンバスに対して、男性をふくむ、より広いユーザーがターゲットの新型ムーヴは、走りの味付けがキャンバスよりきびきびと仕立てられているという。ソフトな乗り心地を重視したキャンバスより、ステアリングのレスポンスもよく、スポーティな走りを楽しめるように工夫されているのだ。
そんなキャラ分けの具体例としては、キャンバスには設定のない走りのグレード、RSでは、CVT の変速にステップモードが採用されており、多段ATのようなスポーティな加速が楽しめるとのこと。
乗り手や使い方を選ばないストライクゾーンの広さ。それが新型の最大の魅力といえるだろう。
RS
主要諸元(RS・2WD) 全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1655 ホイールベース(㎜):2460 トレッド【前/後】(㎜):1300/1295 最低地上高(㎜):150 車両重量(㎏):890 パワーユニット:658㏄直列3気筒ターボ(64ps/10.2㎏-m) ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)リーディングトレーリング(R) サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーションビーム式(R) タイヤ:165/55R15






X
主要諸元(X・2WD) 全長×全幅×全高(㎜):3395×1475×1655 ホイールベース(㎜):2460 トレッド【前/後】(㎜):1300/1295 最低地上高(㎜):150 車両重量(㎏):860 パワーユニット:658㏄直列3気筒NA(52ps/6.1㎏-m) ブレーキ:ベンチレーテッドディスク(F)リーディングトレーリング(R) サスペンション:マクファーソンストラット式(F)トーションビーム式(R) タイヤ:155/65R14







雰囲気を高めるスタイルパッケージも用意
新型はカスタムグレードが設定されていないが、ディーラーOPで都会的な佇まいを強めたノーブルシックと、スポーティかつクールに仕上げられたダンティスポーツという、2つのスタイルプログラムが用意される。


新型ムーヴ 主要諸元&装備比較

新型ムーヴのライバル一覧比較
実用機能と価格に優れる新型ムーヴが登場したことで、キャラが近いムーヴキャンバスやワゴンRスマイルはもちろんのこと、1クラス上のタントやN-BOX、スペーシアなどにも大きな影響が出るのは間違いなさそうだ。
コスパに優れる新型ムーヴ登場ライバルたちとの関係はどうなる?
スーパーハイト軽もライバルになりうる
歴代ムーヴはワゴンRと激しい販売合戦を繰り広げ、近年はホンダのN‐WGNも交えて、軽自動車市場を盛り上げてきた。しかし、従来のモデルはいずれもリヤがオーソドックスなヒンジドア。新型ムーヴがスライドドアを採用したことで、その力関係も変化していくと思われる。
スライドドア化の理由を開発陣は、ユーザーからの声に加えて、市場を動かす動機にしたかったと語っている。厳しい経済環境も背景に全般的に長期保有化が進み、最近は膠着状態の感もある既存のハイト軽ワゴンのユーザーに「これなら乗り換えよう」と思ってもらえる武器として、スライドドアが選ばれたというわけだ。
結果として、新型ムーヴはこれまでのようにワゴンRとのガチンコ勝負ではなく、やや背を高めたうえでリヤスライドドアを備えたワゴンRスマイルや、同門のムーヴキャンバスが直接のライバルとなっていきそうだ。
コスト面ではヒンジドアより不利なスライドドアを採用しながら、売れ筋グレードのX・2WDで150万円を切る価格設定は、ライバルを突き放す武器。ワゴンRスマイルの中間グレード、ハイブリッドSの170万円超と比べても、お買い得感が光る設定だ。
一方、タントを見に来て「もっと安いのがいい」というユーザーをカバーするのも、新型ムーヴの役割という。となると、タントのライバルにして、現在の軽自動車市場のベストセラーであるホンダN‐BOXや、スズキのスーパーハイトワゴン、スペーシアも、新型ムーヴの対抗馬になってくる。
N‐BOXにはファッションスタイルやカスタム、同コーディネートスタイルと、幅広い個性がラインナップされているが、新型ムーヴでは従来のカスタムを廃した代わりに、ダンディスポーツスタイル、ノーブルシックスタイルというカスタマイズパッケージが用意されており、ターボで武装した走りのRSとともに、こだわりのあるユーザーのニーズに応える。
最近の市場ではN‐BOXジョイ、スペーシアギアというアウトドアテイストのモデルが人気だが、ムーヴにはそういった仕様はなく、いい意味で普通のクルマであることが武器になりそうだ。
DNGAの優れた素性は、背の高いタントに上質な走りを実現させたことで証明された。それより背の低いムーヴでは、走りも楽しめると開発陣は胸を張る。
広さに走り、使い勝手、経済性まで、バランスに優れたムーヴは、幅広いライバルと比べて選ぶ〝原器〟になりうる一台なのだ。
DAIHATSU 新型ムーヴ

DAIHATSU ムーヴキャンバス
2022年に登場した2代目は、先代同様に両側スライドドアを採用。DNGA技術やターボ車の追加、最新スマートアシストの採用などで全方位に進化。ムーヴとの違いは可愛らしい個性的なエクステリア&インテリアで、女性の好みを重視している。


SUZUKI ワゴンRスマイル
2021年に発売されたハイト軽ワゴン。ワゴンRの派生モデルに当たり、全高は1695㎜、ヒンジドアではなく両側スライドドアが採用されていることが特徴。パワートレーンは全車マイルドハイブリッドを搭載。2トーンルーフを含む多彩なボディカラーを選ぶことが可能。


DAIHATSU タント
現行型は2019年にデビュー。歴代モデルはセンターピラーレス構造のミラクルオープンドアで人気を集めているが、現行型はDNGA技術が投入されたことで、全方位に進化を遂げている。2022年にはSUV風の加飾がプラスされた「タントファンクロス」も投入されている。


HONDA N-BOX
3代目となる現行型は2023年に登場。ホンダ独自のセンタータンクレイアウトにより、低床構造を実現。圧倒的なスペース効率に加え、秀逸なサスチューンがもたらす、優れた走行安定性も高く評価されている。2023年にはN-BOXジョイもラインナップに加わっている。


SUZUKI スペーシア
現行型は2023年にデビュー。全車速追従機能付きACCや車線維持支援機能などにも対応した運転支援機能や新世代プラットフォームの採用により基本性能を大幅に強化。パワートレーンも全車マイルドハイブリッド化が図られるなど、大きく商品力を高めている。

