輸入車
更新日:2025.08.09 / 掲載日:2025.08.09
人気中古車実車レビュー【ルノー カングー】カワイさと実用性を兼ね備えたフレンチミニバン

[ルノー カングー]自動車ジャーナリスト 竹岡 圭と巡る人気中古車実車レビュー
文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス、シトロエン、フィアット
※中古車参考価格は2025年7月グーネット調べ。 ※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2025年9月号の内容です)
試乗レポートではわからない、身近でリアルな使い勝手を実車を取材してレビューするのが、「人気中古車実車レビュー」。デザイン、装備、使い勝手をレビューしつつ、中古車相場についても中古車販売店に取材し掘り下げます。
Profile:自動車ジャーナリスト 竹岡 圭
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもお馴染みの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
まるで家族のような特別な存在になるクルマ
今回チェックするのは、輸入車のなかでも独自のキャラクターで人気を集めているカングー。ルノー・ジャポンが主催するオーナーイベント「カングージャンボリー」には、毎年日本各地から愛好家が集まり、交流を深めています。取材させていただいたのは、2019年登録の「カングー エヴァジヨン」で、走行距離は5万4000㎞、支払総額は225万円となっています。
実車チェックを行うのは、自動車ジャーナリストの竹岡圭さん。カングージャンボリーで司会をつとめていることもあって、クルマとしてだけでなく、カングーのオーナー像についてもよく知っているとのこと。
「いまでこそ似たようなコンセプトの輸入車ミニバンも増えてきたけど、初代カングーが登場した2000年初頭は、まさにオンリーワンだった。スライドドアで室内が広くて、輸入車なのに価格も手頃。商用車ベースなだけあって各部が頑丈でがっしりしているから、クルマに詳しくない人にとっても『触っても壊れなさそう』って安心できる。それからカングーって、クルマというよりも家族というかペットみたいな感覚で可愛がってる人が多いんだよね。あと、カーマニアというよりも、自分のライフスタイルがあって、それの一部としてカングーのある生活を楽しんでるの」
今回紹介するのは2世代目にあたるモデルで、日本では2009年から2023年まで販売されていました。初代に対してボディサイズが拡大され、室内空間も広くなり、安全装備が充実。初代の道具感はそのままに、より幅広いユーザーが親しめるようになりました。
マイナーチェンジは2回で、特に2013年の改良で外観が大きく変わっています。さらに、2014年5月の改良ではエンジンが変更され、1.2L直4ターボが登場。当初はMTモデルのみの設定でしたが、2016年7月の改良からはAT仕様(6速EDC)もこのエンジンに切り替わっています。また、2021年には1.5L直4ディーゼルターボにMTを組み合わせた400台の限定車が導入されています。
今回取材に協力してくれたカングー専門店スターロックカンパニー広報の三宅さんによれば、カングーの中古車市場はこの2代目が中心。メインカーとして使われていた車両が多いことから、走行距離は伸びている傾向にあるとのこと。10年・10万㎞を迎えるような車両はエアコン故障やタイミングベルトの交換などメンテナンス費用もそれなりにかかってしまうので、価格だけでなくクルマの状態をよく確認してから購入してもらいたいとのこと。
「カングーって毎年のように限定車が出ていて、それがまた魅力的なの。個性的なボディカラーが採用されているし装備も充実しているから、いい個体が見つかればラッキーかも。台数が少ないってことはそれだけ人と被らないし」と竹岡さん。
取材車も100台の限定車で、フランスの豊かな自然をイメージしたヴェール ジャッド メタリックという専用カラーや専用フロアマットなどを装備。ほかにも多数の限定車があるので、古着を探し当てる感覚で選ぶのも楽しいかもしれません。

輸入車ミニバンのブームを作り出した

カングーはルノーが販売しているミニバンで、本国フランスでは郵便局の配達車としても活躍。商用車由来の使いやすい荷室やシンプルななかに温かみを感じるデザインにより日本にも数多くのファンがいます。今回取材したのは2代目モデルで、中古車市場で最も人気のあるカングーとなっています。
中古車参考価格帯:60万円〜380万円(09年〜23年 カングー 全グレード)

取材協力|スターロックカンパニー本店

カングー専門店として日本一の販売実績を誇るお店。在庫台数が多いことに加えて、幅広いグレードや限定車を取り揃えています。自社工場を併設しているため、購入後のメンテナンスや修理にも対応。さらにオリジナルのカスタムパーツも開発していて、より自分の好みにあった1台に仕上げることができます。
SHOP DATA
住所:東京都町田市山崎町1534-1
TEL:042-794-9872
定休日:水曜日
営業時間: 10:00〜19:00
URL:https://star-rock.com
ルノー カングーの実車をチェック!
【デザイン】まるで動物のよう愛着が持てる顔がカングーの魅力!

日本だとこのジャンルはワンボックスタイプが主流ですが、カングーはボンネットが前に出たフルゴネット(フランス語でライトバンの意味)で、独特の可愛らしさがあります。顔つきもまるでペットのような愛らしさがあります。シルエットは四角いのに、丸みのあるディテールもこのクルマのチャームポイントでしょう。普通のクルマだとチープな印象になってしまう無塗装のブラックバンパーやスチールホイールも、おしゃれに思わせてしまう魅力がカングーにはあります。

【装備】贅沢さはないけど頭上収納など使える工夫が各所に

2代目カングーが日本に導入されたのは2009年。なので最近のクルマのような先進安全装備やハイテクアイテムは採用されていません。年式を考えれば、シンプルな分故障リスクが少ないという見方もできます。一方で、毎年のように限定車が導入されていて、専用ボディカラーや装備が採用されていました。取材車は「エヴァジヨン」と呼ばれるモデルで、ブラックバンパーやフロアカーペットと防水マットが一体になったデュアルカーペットなどが採用されています。

【使い勝手】夢が膨らむ大空間日常のお出かけからレジャーまで大活躍

スクエアな室内空間、開口部の大きなスライドドア、そして180度開く観音扉。これらによって、カングーは優れた使い勝手を実現しています。それはまさに、カングーが働くクルマとして作られたからこそ。ラゲッジルームの壁も凹凸が少なく、荷物を搭載する際にも無駄なスキマが生まれません。また、シートを倒すとフラットな空間が出現。助手席まで倒すと、最大で2800L以上の空間が出現。オーバーヘッドコンソールをはじめ、収納も各所に備わっています。

シンプルだからこそ飽きのこない1台

竹岡 圭 レビュー
デザイン[★★★★★]
現行型も角の取れた四角いデザインに、後部のスライドドア&ダブルバックドアという基本形は変わりませんが、サイズも徐々に成長しているせいか、2代目カングーの人気もまだまだ高い。見ているだけで笑顔になる甘すぎないカワイサと、商用車なのにポップな世界観を作ったこの分野のパイオニア感はさすがです。
装備[★★★★☆]
疲れ知らずの3席独立型後席をはじめに、カングーにしかないものはたくさんあります。2代目は前後席の間にルーフボックスがあるなど、収納スペースが豊富。最新の安全装備や快適装備はまだ装着されていませんが、その分シンプル。数が少ない限定モデルが多種類あるので、好みのものがあったら即ゲットをオススメ。
使い勝手[★★★★★]
ロックを外すと180度まで開くダブルバックドアは、使い勝手抜群。商用車ベースということもあり、荷室スペースに出っ張りがないので、ガレージ感覚で自由自在にレイアウト可能です。開口部も低いので、重たく大きな荷物も載せられますし、2列目シートも倒してマットを敷いて、お部屋のような車中泊仕様にも。
編集部 レビュー
デザイン[★★★★★]
初代に比べてひとまわり大きくなったことで、登場当初は「デカングー」なんて呼ばれた2代目。でも3代目がさらにサイズアップしたことで、相対的にジャストサイズという評価に落ち着いています。ベースは働くクルマですが、デザインがポップで愛嬌があり、キャラクター的な魅力はいまだ健在といえるでしょう。
装備[★★★★☆]
日本の至れり尽くせりなミニバンと比べてしまうと装備は正直劣ります。特に電動スライドドアがオプションでも選べないのは、覚悟が必要。もちろんオートエアコンのような基本的な快適装備は備わっています。一方でシートは日本のミニバンより快適。座面もしっかりしていて、シートアレンジも多彩です。
使い勝手[★★★★★]
スライドドアや左右に開くバックドアのおかげで、荷室の使い勝手は抜群。2列目シートを前倒しにすればラゲッジルームがそのまま大きくなったような広大な空間が出現します。さらに助手席も前倒しにできるので、車中泊だって余裕。ミニバン的な使い方だけでなく、キャンピングカーにもなってくれるのです。
ライバルモデルをチェック!
シトロエン ベルランゴ

こちらもベースは商用車ながら、内外装ともにシトロエンらしいおしゃれなデザイン。ルーフには広い明かり窓があって開放的。経済的なディーゼルエンジン仕様なのも魅力です。
中古車参考価格帯:230万円〜450万円(19年〜25年 ベルランゴ 全グレード)
フィアット ドブロ

個性的なルックスをした商用車ベースのミニバン。5人乗りの標準ボディとロングボディで7人乗りのマキシを用意。自動ブレーキやACCなど装備が充実しているのもポイントです。
中古車参考価格帯:300万円〜420万円(23年〜25年 ドブロ 全グレード)