輸入車
更新日:2024.08.24 / 掲載日:2024.08.24
エメヤがロータスの常識を覆す【九島辰也】

文●九島辰也 写真●ロータス
ロータスが新型車を発表しました。自ら“エレクトリックハイパーGT”と呼ぶエメヤ(EMEYA)です。ロータスといえば、すでにBEVのSUV、エレトレをラインナップしていますから、今回はその背の低い版といったところでしょうか。デザインからも系譜であることを感じさせます。

エメヤとエレトレは新世代ロータスの旗印となります。このモデルをスタートに完全なラグジュアリー電気自動車カンパニーにスイッチすることになりました。親会社ジーリーの意向なのかわかりませんが、その路線に猛進しています。時代の流れでしょう。ジーリーは中国の大手自動車メーカーですから、その目線になるのはわからなくもありません。同傘下のボルボがそうであるように、ロータスもそうなります。
そう考えると、最後の内燃機関車となってしまったエミーラは希少です。ガソリンエンジンをミッドシップマウントしたそれはイメージ通りのロータスでした。特に最後に追加された2リッター直4 DOHCターボ車は秀逸。なんたってAMG製エンジンですからパワーはもちろん、フィーリング、サウンド共にエモーショナルです。3.5リッターV6スーパーチャージャーも悪くはないですけどね。明らかに軍配は直4に上がります。

エメヤに話を戻すと、グレードは3つあります。スタンダードのエメヤとエメヤS、トップエンドのエメヤRです。パワーは前2モデルが612ps、エメヤRが918psというから相当パワフルですね。電気のチカラは恐ろしい。駆動方式はすべてAWD。前後のアクスルにそれぞれモーターを装着します。
特徴的なのはデザインですが、個人的にはサイズに驚きました。カタログに記載されるスリーサイズは全長5139mm、全幅は2005mmで、全高は22インチホイールを履いたエメヤRで1467mmとなります。でもってホイールベースは3069mm。これだけを見ると、キャビンの広い高級サルーンといった寸法です。車高こそ違いますが、メルセデス・ベンツEQSを思い出しました。



このサイズからもわかるように、既存のロータスのイメージからするとこれらすべてを受け入れるのは難しい気がします。BEVになっただけでなく、サイズまで巨大化してしまったのですから別物です。あのコンパクトなボディを小気味よく走らせるロータスとは真逆のような気がします。ロータスは唯我独尊で、“ラグジュアリー”って言葉とも関係のないところにいましたし。
なんてことを鑑みると、これらのモデルを日本で販売するのは無謀のような気がしなくもありません。BEV大国中国では人気になるでしょうが、この国では難しいでしょう。そもそもロータスはマニアックなブランドですから、それが浸透していない新興国では問題ないでしょうが、そうでない国やエリアでは受け入れに時間がかかりそうです。

さらにいえば、同カテゴリーに入ると目されるポルシェ・タイカンやその兄弟車アウディe-tron GTも日本では苦戦しているのを見逃せません。どちらのクルマもデザインやパフォーマンスはいいんですけどね。日本では適さないのか、もしくは時代が早過ぎるのか、なかなか浸透しません。タイカンはドジャースの大谷翔平選手とのコラボで、新ビジュアルを投入したりして仕掛けているんですけど、残念ながらポルシェ好きならずとも多くのクルマ好きが気にしているのは、992.2なんて呼ばれる新型911の方だったりします。まぁ、911に関しては仕方ありませんが。
最後にエメヤの価格ですが、スタンダードで1634.6万円からで、トップエンドのエメヤRは2268.2万円からとなります。もはや価格もEQSやタイカンレベル。これまでのロータスからはかけ離れます。つまり、マーケットはまったくもって別。新生ロータスの新たなる挑戦ってところでしょうか。時代は移り変わります。