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更新日:2018.11.10 / 掲載日:2017.08.28
メルセデスAMGにGT RやGT Cロードスターなど新バリエーションが登場
文●ユニット・コンパス 写真●川崎泰輝
2017年、AMGは生誕50周年という節目を迎えた。昨今、メルセデス・ベンツのほとんどのモデルにAMGが設定され、世界中のファンを魅了していることは、ここで改めて記す必要がないかもしれない。とくに2005年に100%メルセデスの子会社となり「メルセデスAMG」という新社名になって以降は、単なる高性能バージョンに留まらない、ファン・トゥ・ドライブな魅力を強く打ち出している。
2010年になると、メルセデスAMGは独自開発したプレミアムスポーツカー「SLS AMG」を送り出した。これは公道走行用のロードカーだけでなく、FIA GT3という規格のレースマシンも合わせて製作され、モータースポーツフィールドで多くの実績を残している。そしてその後継車となるメルセデスAMG GTシリーズは、SLS AMGよりもグッとリーズナブルな価格に設定され、1000万円~2000万円クラスのプレミアムスポーツカテゴリに投入されることになった。メルセデスのトップ・オブ・スポーツモデルが一般ユーザーでも手にすることができるのは、ファンにとって喜ばしいこと。さらにGTシリーズ(メルセデスAMG GT3)は、モータースポーツ分野においても現在進行形で活躍中だ。とくに記憶に新しいのは、2016年にニュルブルクリンク24時間耐久レースにおいて1位~3位を独占したこと。アウディ、ポルシェなどの強豪をも寄せ付けない強さを見せてくれた。
当初メルセデスAMG GTシリーズは、もっともスタンダードなモデルの「GT」とその高性能版「GT S」というふたつのバリエーションでスタート。しかし、2016年6月にはさらに高性能な「GT R」が公開され、その翌年となる2017年6月、ようやく日本にも導入されるに至った。それに加え、オープントップを採用した「GT ロードスター」と「GT C ロードスター」も追加され、バリエーションが拡大されたのが、今回の大きなトピック。さらにメルセデスAMG E63シリーズに、新たにステーションワゴンが加わったことで、AMGラインアップの体制がより盤石なものとなった。まさにAMG生誕50周年に相応しい展開と言っていいだろう。
GT3マシンの技術を惜しみなく投入した超ホンキ仕様の「GT R」
大型アジャスタブルリヤウイングもGT Rならではの見どころ。ブレードの角度は精密に調整可能である。
発表の会場で目にしたGT Rは、メルセデスらしからぬ明るいトーンのグリーンカラーが鮮烈に輝いていた。このボディカラーの名称は「AMGグリーンヘルマグノ」。グリーンヘル(緑の地獄)とは、ドイツ・アイフェル地方にあるニュルブルクリンクサーキット(以下ニュル)の愛称である。ヘルなんていう少々物騒なネーミングは、緑に囲まれたニュルの長閑な雰囲気とは裏腹に、アップダウンが非常に激しく、サーキットのなかでもとくに苛酷なレイアウトに由来する。ニュルの地で鍛えられたGT Rに相応しいボディカラーと言えそうだ。
既存のGT Sも高性能なリアルスポーツカーだったが、新登場したGT Rはそれと比べてどこが変わったのだろうか。まず注目したいのはパワーユニット。従来のGTやGT Sと同じく4.0L 直噴V8ツインターボを搭載するが、ターボチャージャー2基はすべて専用設計。これは一般的な外側に位置するのではなく、シリンダーバンクの内側に配置する「ホットインサイドV」レイアウトとしたのが見どころ。過給圧はGTの1.2バールから1.35バールへと引き上げられ、さらにエグゾーストポートの最適化と圧縮比の変更も行われた。その結果、最高出力はGTの462馬力、GT Sの510馬力を大きく上まわる585馬力というパワーを実現。一方トランスミッションは、1速をワイド化すると同時に7速とファイナルギヤをクロスさせることで、素早いシフトチェンジが可能となった。スポーツカーの世界で性能の目安となる0-100km/h加速はわずか3.6秒。これは、ライバルの最新型ポルシェ 911 GT3のマニュアル車よりもコンマ3秒速いと言えば、その凄さがわかるはずだ。
エアロダイナミクスも徹底的にこだわり抜いた
メルセデスAMG社のプロダクトマネージャーのアルネ・ウィーブキング氏も来日。エアロダイナミクスをはじめとするGT Rの新機軸について熱く語ってくれた。
GT Rは、デザイナーとエアロダイナミクスのエンジニアが、かつてないほど連携して開発が進められたという。エクステリアでまず目につくのが、フロントグリルに15本の垂直フィンをあしらった「パナメリカーナグリル」だろう。GT3バージョンではすでに与えられていたが、量産車としてはGT Rが初採用。また、フロントバンパー形状も完全オリジナルでデザインされており、左右に配置される大型エアインテークは駆動システムに必要な冷却気量の増加に対応したもの。フロントリップスポイラー、エアインテーク外側のエアカーテンなども気流を整え、Cd値の向上に貢献している。
また、GT Rの真骨頂とも言えるのが「アクティブ・エアロダイナミクス・システム」の導入である。これは、エンジン前方のアンダーボディに隠されているカーボンファイバー製のエアロパーツのことで、「RACE」モードでは80km/hに達すると、40mmほど自動で下降し、フロントリフトを40kg(時速250km/h)低減するという。また、フロントバンパー下部には電子制御式の垂直ルーバーも備えられており、こちらも空力性能に大きく貢献している。
シャシーも既存モデルと比べて大きな進化を遂げた。そのひとつが4輪操舵システム「AMGリヤ・アクスルステアリング」の採用。これはAMGとしては初めて標準装備されるもので、バイワイヤシステムによりリヤホイールのトー角が走行状況に応じて最大1.5度変化する。これにより鋭いコーナーリングを実現し、限界域におけるコントロール性が大きく向上している。サスペンションはサーキット走行を想定し、ダブルウィッシュボーン、ステアリングナックル、前後ハブキャリアを100%鍛造アルミニウム製に変更。さらにリヤアクスルにおいては、アンチロールバーの径も太くなった。タイヤは、新開発の「ミシュランパイロットスポーツカップ2」を標準装着。これは公道走行可能なレーシングタイヤと言っていいもので、ラップタイムの短縮に役立つという。
そのほか、超軽量カーボン製の専用フロントフェンダー、カーボンファイバー製ルーフ、9段階調整式AMGトラクションコントロール、電制LSD、カーボンファイバー製トルクチューブなど、GT3譲りの技術を惜しみなく投入。ひとことで言えば、公道走行可能なレーシングカーと言った造りなのである。
【メルセデスAMG GT R(7速AT・AMGスピードシフトDCT)】
全長 4550mm
全幅 1995mm
全高 1285mm
ホイールベース 2630mm
重量 1660kg
エンジン V8 DOHC ツインターボ
総排気量 3982cc
最高出力 585ps/6250rpm
最大トルク 71.4kgm/1900-5500rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後 Vディスク/Vディスク
タイヤ前・後 275/35R19・325/30R20
販売価格 2300万円(GT Rのみ)
航空機をモチーフとしたダッシュボード。
ナッパレザーとDINAMICAマイクロファイバーを使用した軽量なバケットシートを装着。
GT R専用設計となる「ミシュラン パイロットスポーツカップ2」を装着。サーキットでのラップタイムを主眼としながら、公道での性能も犠牲にしないタイヤ作りを目指したという。
2座ロードスターバージョンも新登場
今回のもうひとつの目玉となるのが、ロードスターバージョンの追加だろう。これからの季節にぴったりのオープンモデルだが、走りの性能はクーペと比べてもほとんど引けをとらない。アコースティックソフトトップと呼ばれる幌は、走行中でも50km/hまでなら開閉可能で、それに要する時間はわずか11秒と短い。ソフトトップの開閉はオーバーヘッドコンソールのスイッチで操作ができるので簡単なので、信号待ちなどでも気軽にオープンにできるはず。トップのカラーはブラック、レッド、ベージュの3色から選べる。ソフトトップは3層構造となっており、マグネシウムやアルミニウムを用いることで軽量化図り、低重心化にも大きく貢献しているのが特徴だ。ラインアップは「GT ロードスター」と「GT C ロードスター」の2モデルが用意され、最高出力はそれぞれ476馬力と557馬力となっている。どちらもGT Rで初採用された縦型フィンの「パナメリカーナグリル」を採用している。
【メルセデスAMG GT C ロードスター(7速AT・AMGスピードシフトDCT)】
全長 4550mm
全幅 1995mm
全高 1260mm
ホイールベース 2630mm
重量 1740kg
エンジン V8 DOHCツインターボ
総排気量 3982cc
最高出力 557ps/5750-6750rpm
最大トルク 69.3kgm/1900-5500rpm
サスペンション前/後 ダブルウィッシュボーン/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前/後 Vディスク/Vディスク
タイヤ前・後 265/35R19・305/30R20
販売価格 1834万円~2298万円(ロードスター全グレード)
E63シリーズのラインアップがさらに充実化!
新型Eクラスの最高峰に位置するメルセデスAMG E63シリーズには、当初セダンの「E63 S 4MATIC+」のみが導入されていた。しかし今回、セダンのE63シリーズにエントリーモデル「E63 4MATIC+」が登場。最高出力は前者では612馬力だが、新規追加されたモデル(車名には「S」が付かない)では571馬力を発揮する。しかしエントリーモデルとはいえ、そのパワーは圧倒的なのは言うまでもない。さらに両エンジンがともにステーションワゴンにも設定され、E63シリーズは合計4モデル構成となった。さらに、セダンの「E63 S 4MATIC+」をベースに、deginoナイトブラックマグノを設定したボディ、ハイグロスブラックの専用エクステリアパーツ「AMGナイトパッケージ」を組み合わせ、よりスポーティに仕上げた期間限定車の「エディション1」も今回新たに登場。こちらは特別感のある内外装により、所有欲を大いに満たしてくれる存在である。
【メルセデスAMG E63 S 4MATIC+ ステーションワゴン(9速AT)】
全長 5005mm
全幅 1905mm
全高 1475mm
ホイールベース 2940mm
重量 2140kg
エンジン V8DOHCツインターボ
総排気量 3982cc
最高出力 612ps/5750-6500rpm
最大トルク 86.7kgm/2500-4500rpm
サスペンション前/後 4リンク/マルチリンク
ブレーキ前/後 Vディスク/Vディスク
タイヤ前・後 265/35R20・295/30R20
販売価格 1650万円~1910万円(E63シリーズのセダン/ワゴン全グレード)
「GT Cロードスター」と上野金太郎氏。