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更新日:2021.04.16 / 掲載日:2021.04.16
【車中泊×クルマ】キャンピングカー選びの条件【九島辰也のクルマのある時間 第2回】

文●九島辰也 写真●ユニット・コンパス
ご存知のようにクルマのトレンドはSUV一直線です。当初は大きなボディもコンパクトサイズまで広がり、グッと扱いやすいモノになりました。でも、トレンドはそれだけではなりません。販売台数の規模はかなり小さくなりますが、じつはキャンピングカーも売れています。
キャンピングカーの目的は車中泊です。旅先でホテルや旅館に泊まるのではなくクルマに寝泊りします。それってコロナだから?ではありません。じつはそれ以前からこの手のクルマのブームは起きていて、にわかに人気を集めていました。
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キャンピングカーの種類は?どんなメリットがある?

キャンピングカー専門店トイファクトリーの作品。車内は2列目と3列目が対面使用になってくつろげる雰囲気
キャンピングカーといってもその種類は色々です。ベースになるのは大型のマイクロバスから軽自動車のワンボックスまで幅広く、カスタムもまるで「家?」ってくらいゴージャスなものから組み立て式のスチールパイプで寝床を作るものまであります。それに自走式もあればトーイングするキャンピングトレーラーも。後者はクルマ2台分のスペースが必要ですが、まぁ、じつに様々です。
中でも人気なのはバンタイプのワンボックスをコンバージョンしたモデル。一見してフツーのワンボックスなので、サイズもそうですし走行性能も極端に落ちません。なので、平日は実用車として使うことも可能。それでいて、中に入るとシンクだったり対面式のイス&テーブルが用意されています。でもってシートをアレンジするとベッドにもなったり。まさに部屋って感じです。シートカバーを模様替えすればまんまそう。そこから動画配信できそうですね。
この手のジャンルで個人的に思い浮かべるのは、フォルクスワーゲンタイプ2と呼ばれる“ワーゲンバス”とシボレーアストロ。90年代後半から2000年あたりにかけて、その手のクルマをたくさん取材しました。ワーゲンバスは女性人気が高かったのを覚えています。かなりメルヘンチックな内装も珍しくなかった。それに対しアストロベースは怪しい雰囲気の仕様が多かったです。2列目以降はレザーのキャプテンシートとウッディなモールが設置され、天井にはシャンデリア風な照明がぶら下がっていたりと、ゴージャスな世界を演出していました。スタークラフトという名のコンバージョンメーカーが人気でしたね。今考えればアストロのそれは当時のトレンドだったんでしょう。たぶん。 それはともかく、こうしたキャンピングカーの醍醐味は行き先を自由に変えられることです。ホテルや旅館を予約するとそこを目的地としますが、そうではなくなります。例えば東京から静岡方面に向かおうと計画していても、天気次第でそれを福島方面に変えるのも自由。目的地を宿ではなく、海や山といった“自然”にできます。星空を好きなだけ眺められますし、朝日をたっぷり拝められます。誰に遠慮をすることなく。
ただ車中泊するにはいろんなルールがあるのでそれを知らなければなりません。そりゃそうですよね。そこが誰の土地かわかりませんから。なので、オススメはRVパーク。日本RV協会が推進しています。大腕振って車中泊ができます。もちろん、そこにもちゃんとルールはあるのでそれを守らないとですが。「ここ大丈夫かな?」というストレスはゼロです。
オーテックが販売しているセレナ マルチベッド。価格は356万5100円から
オーテックは福祉車両などの特装車を手掛ける会社。それだけにノウハウも豊富で品質と価格のバランスに優れる
軽自動車をベースにしたキャンピングカーも人気。こちらは「ちょいCam」のエブリィワゴンをベースにしたもので価格は244万2110円
トヨタのバスを改装した「RVグランモービル」のTRAD699。あえて窓や車体に手を加えていないことで、抜群の完成度を誇る
TRAD699の室内。3世帯家族向けのキャンパーとして需要があるという
「ホワイトハウス」が販売しているシトロエン ヴェルランゴ ソレイユ。価格は367万7500円から
アメリカで目撃した驚きのキャンパーとは?

ウィネベーゴのキャンピングトレーラー ボヤージュ。価格は1232万円
話は変わりますが、アメリカではキャンピングカーでの旅はひとつの文化になっています。キャンピングカーというか、モーターホームが多いですね。シンクやベッドだけでなく、冷蔵庫やトイレも備えているやつです。あれは確かイエローストーン国立公園だったと思います。とても不思議な光景を見ました。それはモーターホームがジープを引っ張って走っている姿です。「これって逆?」と思いました。ジープのようなヨンクがモーターホームを引っ張るものかと。
そこで、周りにいたアメリカ人に尋ねると納得の答えが返ってきました。モーターホームでジープを引っ張ってキャンプ場に行くのは、現地に着いたら昼間はそれで買い出しに行ったり色々な場所を探検に行くのだと。つまり、モーターホームは家で、ジープは現地での足ということです。なるほど長期滞在する彼らはそんな使い方をするんですね。
でもこれには適したクルマと適さないクルマがあることを知らなければなりません。引っ張られるクルマはハブをフリーにするシステムが付いていないとダメ。そうしないとデファレンシャルギアやトランシミッションを壊してしまいます。そこを壊すと莫大なお金がかかります。重要ですね。
いずれにせよ、車中泊はブームです。皆さん思いのほか楽しんでいるようで。この原稿も家の書斎ではなく、森の匂いがするキャンピングカーの中で書けたら……なんて考えちゃいました。
ボヤージュの室内はもはや「家」と呼べる広さだ
キッチンや独立したトイレ、シャワールーム、ベッドスペースが存在する
執筆者プロフィール:九島辰也(くしま たつや)

自動車ジャーナリストの九島辰也氏
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。