車の歴史
更新日:2020.10.06 / 掲載日:2020.10.06

スバルGTワゴンの血統

「より遠くまで、より早く、より快適に、より安全に」ーー1989年、スバルの考えるグランドツーリング性能を具現化したのは、水平対向エンジン+4WDを引っ提げたレガシィツーリングワゴンだった。2014年のレヴォーグ登場まで20年以上に渡って磨かれたその走りへのこだわりは、新型レヴォーグにも脈々と受け継がれている。

LEGACY 1st 初代レガシィ(1989~1993年)

レオーネからレガシィへ。ワゴンが実用車から憧れへ変わる

世界基準の上級ワゴンとついに肩を並べた

’89年1月、デビュー前のレガシィは米国アリゾナで2つの世界記録(当時)を達成。平均速度223km/h余りで10万kmを連続走行するというものだった。

レオーネによって乗用4WDの世界を築いた富士重工(現SUBARU)は、’80年代半ばに新しい価値観を持つセダンとワゴンの開発をスタートさせた。このクルマはレガシィと名付けられ、’89年1月に鮮烈なデビューを飾った。社運をかけて送り出しただけに、パワーユニットからシャシーまで、すべてが新設計。

主役はBFの型式を持つツーリングワゴンで、ウエッジシェイプの伸びやかなフォルムにキックアップしたツーリングルーフを組み合わせ、商用車とは違うプレミアム感を明快に打ち出した。ボディサイズは継続販売されているレオーネやレガシィセダンよりひと回り大きい。

サスペンションは4輪ともストラットの4輪独立懸架を採用。時代の先端をいくエアサスペンションも選べた。そして駆動方式は全車フルタイム4WD。

パワーユニットはシリンダーヘッドからブロック、クランクシャフトに至るまで新設計の水平対向4気筒。EJ18型エンジンは排気量1822ccのSOHC4バルブ、上級のVZは1994ccのEJ20型DOHC4バルブエンジン(150PS/17.5kg-m)を積んでいた。

4WDシステムは電子制御4速AT車がMP-T、5速MT車はビスカスカップリング式センターデフ方式を採用した。

秋にはフラッグシップとしてインタークーラー付きDOHCターボの「GT」を設定する。最高出力は200PS/6000rpm、最大トルクは26.5kg-m/3600rpmで、こちらにも5速MTと電子制御4速ATが用意されていた。

高性能と優れた快適性を前面に押し出したツーリングワゴンはアウトドアブームの後押しを受け、販売台数を一気に伸ばしている。1年足らずでシリーズ全体の3分の2を占め、瞬く間にレガシィの主役に躍り出たのだ。それだけでない。ワゴンのベンチマークとしても認知された。

’91年には新開発したSOHC4バルブのEJ20型エンジンを積み、優れた走行性能に加え、割安感も打ち出したブライトンを投入する。このブライトンは柱のひとつへと成長した。’92年6月のマイナーチェンジの機をとらえ、ブライトンFFと2212ccのEJ22型水平対向4気筒SOHCエンジン(135PS/19.0kg-m)を積むブライトン220も仲間に加わる。

ワゴンを身近なものとし、ブームをけん引したのは間違いなく初代レガシィだった。

LEGACY 2nd 2代目レガシィ(1993~1998年)

バブル期の設計ながら5ナンバーを堅持。商業的にも最も成功したレガシィ

正常進化した2代目でレガシィ人気は世界的に

水平対向エンジンをコアテクノロジーに、安全性が高く、運転も愉しいシンメトリカルAWDを採用したレガシィは、世界中でヒットとなった。その2代目は’93年10月にベールを脱いでいる。ツーリングワゴンはBG型を名乗り、メカニズムなどは正常進化の形をとった。

デザインのチーフを務めたのは、オリビエ・ブーレー氏だ。後にベンツに移籍して敏腕をふるったが、BH型レガシィは今なお傑作のひとつに数えられている。エクステリアは5ナンバーの小型車枠にこだわりながらデザインされた。キープコンセプトだが、面質は豊かで、伸びやかだ。キャビンは広くなり、快適性も高められた。

エンジンはEJ20型水平対向4気筒を受け継いでいる。型式は変わっていない。だが、大がかりな改良を施し、ドライバビリティや燃費を向上させた。登場したのは1994ccのEJ20型だけだ。EJ18型エンジンは整理されている。

SOHCをボトムに、DOHCとDOHCターボの3機種が用意され、GTに搭載のターボは、応答レスポンスが鋭く、低回転からトルクを発生する2ステージツインターボへと進化した。タービンの軸受け部はボールベアリングだ。このEJ20型4気筒DOHCツインターボはワゴン最強の250PS/31.5kg-mを発生した。

4速ATを採用するGTの4WDシステムは、走行状況に応じて前後のトルク配分を変え、安定性や旋回性能を高める不等&可変トルク配分電子制御4WDのVTD-4WDだ。GT以外の4速AT車はアクティブスプリット式4WDを、5速MT車はビスカスLSDを採用したセンターデフ式の4WDシステムを採用している。

’94年5月、EJ18型エンジン搭載車を復活させ、10月には北米仕様と同じ2457ccのEJ25型DOHCエンジンを積む250Tシリーズを送り込んだ。そして’95年夏には最低地上高を200mmまで上げ、悪路走破性を高めた「グランドワゴン」も投入した。このクロスオーバーSUVは’97年8月に「ランカスター」と改名する。

’96年6月には大がかりなマイナーチェンジを実施した。エンジンは進化版のBOXER・MASTER-4だ。GT-Bはビルシュタイン製の倒立ダンパーを装備し、タイヤも17インチの45タイヤを履いている。5速MT車は280PSとなり、ライバルとの差をさらに広げた。

LEGACY 3rd 3代目レガシィ(1998~2003年)

時代を反映して、環境性能と安全性能を大幅に強化した

インテリアの上質感も 「極めた」3代目

シンメトリカルAWDによって全方位の安全性と走る喜びを追求してきたレガシィツーリングワゴンは、1998年6月にモデルチェンジを行った。セダンは「B4」と名前を変えて半年後に新型に生まれ変わることになる。3代目のBH型ツーリングワゴンの開発コンセプトは『レガシィを極める』だ。グランドツーリングカーとしての完成度を飛躍的に高めるために、変革と創造を加えた。

エクステリアはキープコンセプトだ。小型車枠を守るとともにウエッジシェイプを基調としたデザインを継承している。インテリアも質感を高めたが、注目されるのは高級機として知られるマッキントッシュ製オーディオが用意されたことだ。

サスペンションは、ハンドリングとスペース性を高い次元で両立させるためにリヤにマルチリンクを採用した。また、横滑りを抑え込む車両挙動安定制御のVDCも選べるようになるなど、安全性能も高まっている。

自慢の水平対向エンジンは、改良を加えた進化版の「ボクサー・フェイズII」だ。TXとブライトンが積むのは、希薄燃焼のリーンバーン方式を採用したEJ20型SOHCエンジンである。2代目のときに登場したが、3代目では希薄燃焼の領域を広げ、排ガス対策にNOx吸蔵型触媒を採用した。10・15モード燃費は13.6km/Lだ。

自然吸気のDOHCエンジンは吸気系に可変バルブタイミング機構のAVCSを採用し、これに可変吸気システムを組み合わせてドライバビリティを向上させた。155PSの最高出力は変わらないが、最大トルクは20.0kg-mに増えている。

GT系のEJ20型DOHCターボは斜流タービンを採用した2ステージツインターボだ。4速AT車は260PS/32.5kg-m、5速MT車は280PS/35.0kg-mを発生する。2457ccのEJ25型DOHCエンジンは167PS/24.0kg-mにディチューンしたことにより扱いやすさを増した。

’99年8月、ランカスターに小型CCDカメラを搭載したADA(アイサイトのルーツ)を設定。2000年5月には排気量2999ccのEZ30型水平対向6気筒DOHCエンジンを積むランカスター6を追加設定するなど、精力的にラインナップ拡充に努めた。

’01年5月にマイナーチェンジを実施したが、このときに「六連星」エンブレムを復活させている。’02年秋にはEZ30型エンジンを積むGT30も誕生。翌年、4代目にバトンを託した。

LEGACY 4th 4代目レガシィ(2003~2009年)

世界市場を見据え5ナンバーサイズから脱却。より上質へ舵を切る

後期型ではアイサイトも登場

世界基準のグランドツーリングワゴンを目指し開発されたのが、4代目のBP型レガシィツーリングワゴンだ。2003年5月、シリーズの先陣を切って登場したが、世界を意識したことは全幅を1730mmに広げたことからも分かる。ワイドボディに加え、軽量化を図ったことによって運動性能は飛躍的に高められた。

エンジンの主役は1994ccのEJ20型水平対向4気筒DOHCエンジンだ。熟成の域に達していると思われたが、振動を抑える鉄鋳込みジャーナルブロックや等長等爆エキゾーストシステム、電子制御スロットル、ツインスクロールターボなど、新技術を積極的に盛り込んでいる。ATにはニュートラルコントロールシステムが組み込まれ、上級モデルにはスポーツシフト付き5速ATも登場した。

2.0Rは可変バルブタイミング機構などで武装した自然吸気DOHCエンジンを積んでいる。5速MT車は190PS/20.0kg-mのハイスペックだ。足元もKYB製の正立式ダンパーに加え、2.0GTと同じ高性能タイヤを履いている。

2.0GT系も大幅な改良を行い、実力を高めた。デュアルAVCSや超低排圧ツインマフラーなどを採用し、過給機はツインスクロール式シングルターボだ。世界初採用のチタン製タービンと相まって鋭いレスポンスを手に入れている。

5速AT車は260PS/35.0kg-m、5速MT車は280PSのスペックだが、扱いやすい。2.0GT系はビルシュタイン製ダンパーを採用し、フラッグシップの2.0GTスペックBは18インチタイヤだ。

9月には2999ccのEZ30型水平対向6気筒エンジンを積む3.0Rを、10月にはランカスターの後継となるアウトバックを加え、ラインナップを盤石なものにしている。また、この直後に国内販売累計100万台の偉業も達成した。

初めてのマイナーチェンジは’04年5月だ。さらに’05年5月と’06年5月にもマイナーチェンジを実施したが、このときに画期的なドライバーアシストシステムの「SI-ドライブ」を搭載している。

’06年12月にはSI-ドライブにレーダー式のクルーズコントロール機能を加えたSIクルーズリミテッドを送り込んだ。’08年5月に登場した最終型では運転支援システムのアイサイトやEJ25型DOHCターボも選べるようになった。

LEGACY 5th 5代目レガシィ(2009年~)

大きくゴージャスに変わっていくレガシィ。主力エンジンも2.5Lへ

北米市場を意識し、さらにボディは大型化

 第5世代のレガシィツーリングワゴンとアウトバックは’09年5月に登場した。型式は「BR」だ。北米市場を意識してボディはひと回り大きくなり、伝統のサッシュレスドアを廃してサッシュ付きドアとした。

パワーユニットは親しんできたEJ20型を整理して2457ccのEJ25型水平対向4気筒エンジンを主役に据えている。SOHCの自然吸気エンジンに組み合わせるのは、新開発の無段変速機(CVT)、リニアトロニックだ。便利なパドルシフトやSI-ドライブ、電動パーキングブレーキも標準で装備した。

イメージリーダーはDOHCターボの2.5GTだ。こちらにはスポーツシフト付き電子制御5速ATとケーブル式リンケージを採用した6速MTを設定した。また、アウトバックには3629ccの水平対向6気筒エンジンを積む「3.6R」を設定している。アウトバックは全高が1605mmになり、立体駐車場が使いづらくなった。

5代目のリヤサスペンションは新設計のダブルウイッシュボーンだ。横滑り防止装置のVDCも全車に標準となっている。また、パワーステアリングが油圧式から電動式に替えられたのもトピックのひとつだ。

’10年5月に初めてのマイナーチェンジを断行し、このときバージョン2に進化したアイサイトを搭載した。渋滞走行時などの追従性を高め、先行車が停止したときは自車も停止するなど、機能を大幅に増やしている。進化版のアイサイトは大好評となり、ほとんどのユーザーがアイサイト搭載車を選んだ。

’11年6月には2度目のマイナーチェンジを行った。大がかりなマイナーチェンジを行うのは’12年5月だ。フェイスリフトを実施して見栄えを良くするとともに、自然吸気エンジンを新世代のFB25型水平対向4気筒DOHCに換裝して環境性能を向上させている。排気量は2498ccで、173PS/24.0kg-mを発生。アイドリングストップも初めて採用された。また、アイサイトも進化している。

GT系にも新エンジンが加えられた。BRZに搭載されているFA20型DOHCで、これにターボ(DIT)を組み合わせている。300PS/40.8kg-mを発生し、トランスミッションは8段ステップ変速を持つリニアトロニックだ。

四半世紀にわたってワゴンブームを引っぱり続け、リーダーの座に君臨したのがレガシィツーリングワゴンである。

  • 5代目BR型は2.5LのEJ25型がメインユニットになる。GT系のターボはプレミアムガソリン仕様で最高出力285PSを絞り出す。

●文:片岡英明(月刊自家用車2014年記事より抜粋)

提供元:月刊自家用車

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