クルマ徹底解説
更新日:2020.02.07 / 掲載日:2019.11.30
BMW Mスポーツ・ディファレンシャルとは?作動原理やメリットをわかりやすく解説します

電子制御式デフギアにより、最大限の旋回性能と加速性能を発揮する「Mスポーツ・ディファレンシャル」
文●工藤貴宏 写真●BMW
クルマはカーブを曲がる際、右のタイヤと左のタイヤとで回転数が異なる。カーブの内側のほうが走る距離が短いため、内側となるタイヤのほうが回転数が少ないのだ。
そのためクルマは、左右の回転数が異なっても問題なく走れるように作られている。それをおこなう駆動輪の左右の回転差を吸収するシステムが「デフギヤ(ディファレンシャルギヤ)」と呼ばれるものだ。これがないとスムーズなコーナリングができない。
しかしこのデフギヤは、アクセルを積極的に踏み込んでスポーツ走行を楽しむ際にネックとなることがある。旋回中に車体が傾いた際には内側のタイヤが浮き気味となり、その浮き気味のタイヤのほうに駆動力を多く送ってしまいタイヤの空転を誘発するのだ。
そこで効果を発揮するのが「330i」にオプション設定、「M340i xDrive」に標準採用される「Mスポーツ・ディファレンシャル」。デフギヤに組み込まれた精密に制御される電子制御式の無段階可変ロッキング機構(流した電気信号に応じてロック率を切り替える機構)が、旋回中に空転を検知すると瞬時にデフギヤの作動を制限(ロック)。外側のタイヤへとしっかり駆動力を送ることで、エンジンのパワーを無駄なく路面に伝えてダイナミックにカーブを走ることができるのだ。また、カーブの出口の加速も鋭くなる。
Mスポーツ・ディファレンシャルの優れているところは、モーターを組み合わせるロック機構を電子制御で緻密にコントロールすることで、走行状況にあわせた最適なロック率を実現すること。ロック率は0から100まで自在にコントロール可能。曲がり始めは左右の回転差を許容して曲がりやすくし、アクセルを踏み込んだ時だけデフギヤの作動を制限し、加速度を高めることができるのだ。
そのため右へ左へと曲がる峠道などではクルマの挙動を安定させるとともに、ハンドリングの向上にも役立つ。また、左右輪の路面状況に変化があるような滑りやすい路面での発進時にもトラクションを高めるメリットもある。