輸入車
更新日:2021.03.04 / 掲載日:2019.03.01

ポルシェ ボクスター/気になる中古車【試乗判定】

2015年モデル ポルシェ ボクスター

文●竹岡圭、九島辰也、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
(掲載されている内容はグーワールド本誌2019年4月号の内容です)
※ナンバープレートは、すべてはめ込み合成です。


一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?

Member Profile

  • 自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
    人気TV番組「おぎやはぎの愛車遍歴」の進行役としてもお馴染みの、人気自動車ジャーナリスト。2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

  • 自動車ジャーナリスト【九島辰也】
    長年にわたり男性ファッション誌や一般誌などでも活躍し続ける自動車ジャーナリスト。その知見は広く、プライベートでも各国のクルマを乗り継ぐ。

自然吸気の水平対向6気筒エンジンを搭載する最後の世代

3代目の前期モデルは最後の水平対向6気筒NA

編集部●中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は新型911の登場で注目を集めているポルシェからボクスターが登場します。お借りしたクルマは2015年モデルのベースグレードで、走行距離は6万6000kmです。九島さんはすでに新型911に試乗されたとのことですが、いかがでした?
九島●ひとことで言えば正常進化。レポートを楽しみにしてよ。
編集部●ボクスターは1996年に初代モデルが登場した2シーターオープンスポーツカーで、本日試乗していただくのはその第3世代になります。90年代当時、911以外のモデルが販売不振だったポルシェにとっても、ボクスターの成功は大きかったのでしょうね。
九島●本当の意味で会社を救ったのはカイエン(2002年)だけどね。
たしかに多くの部品を911と共有しながら、人気ジャンルの新型車を作るというのはアイデアだった。それに当時ポルシェはRRの限界を感じていて、ミッドシップのボクスターを作った部分もあったんだけど、それを見てRRの開発部隊が奮起したっていう副産物もあったそうだよ。
竹岡●私はボクスター好きよ。カッコいいカワイイのカッコいい寄りで、女性が乗っても似合うし。そういえば、このクルマを担当したデザイナーは、初代ボクスターをカッコいいと思ってカーデザイナーを志したって言ってたよ。
九島●へー、それはいい話だね。個人的にボクスターは、カジュアルなオープンスポーツとしてスタートした初代から、モデルチェンジの度にどんどんスポーツカーらしくなってきて、この3代目では本格的なスポーツカーになったという認識かな。
竹岡●オープンカーであっても速さを求められてしまうのはポルシェの宿命なのかも。いまとなってはモデルラインアップも増えたことだし、もう少し小さくてカジュアルなポルシェがあってもいいのかもしれない。
編集部●ではボクスターについて改めて紹介します。2012年6月に登場したこの3代目は、ベースグレード(265馬力)が2.7L水平対向6気筒エンジンで、高性能版の「S」(315馬力)が3.4L水平対向6気筒で、トランスミッションはいずれにも6速MTまたは7速PDK(デュアルクラッチ式AT)。2014年には「GTS」(330馬力)を追加。2016年のマイナーチェンジでは名称を「718ボクスター」へと変更しました。エンジンが水平対向4気筒ターボになったのが大きな話題で、2Lのベースグレード(300馬力)、2.5Lの「S」(350馬力)ともに大きくパワーアップしました。718版のGTSは365馬力という高性能です。
九島●そうそう、モデルライフの途中で名前が変わったんだよね。
竹岡●自然吸気の6気筒エンジンを搭載しているってことで、今日試乗するモデルは人気があるみたいだよ。中古車価格も高いんでしょ?
編集部●そうなんです。ポルシェにはそういう「最後の空冷」のようなマニアを刺激するポイントがあるので、購入にあたって研究が必要なブランドですよね。では、そろそろ試乗の方をよろしくお願いします。


九島「3代目になって本格的なスポーツカーとして成長した」
竹岡「親しみやすいデザインで女性ドライバーにも似合う」

DETAIL CHECK

流通している中古車は少ないがコンディションに注意して選びたい

編集部●お二人が試乗から戻られました。いかがでしたか?
竹岡●残念ながらちょっとコンディションが本来のものじゃない感じがした。段差を乗り越えるときのショックがクルマに残る感じで、クルマがぶるんって震えちゃう。
九島●エンジンのレスポンスがいまいちだったのは、おとなしく乗っているクルマ特有なんだけど、走行6万km程度でこんな風にはならない。
編集部●今回の試乗車特有の問題ということですね。ベースグレードという部分は気になりましたか?
竹岡●ベースグレードでも十分いいクルマ。でも、「S」以上はさらにポルシェらしさが濃いから、そこが難しい(笑)。この型のボクスターは現時点で最後の自然吸気6気筒エンジンっていう部分がプレミアになってるでしょ。あまりグレードを選ぶ余地はないかも。
九島●認定中古車は順番待ち、なんて話を聞いたよ。あまり理想を追い求めない方が結果的にいい出会いがあるかもしれない。ただし、乗り方によってクルマのコンディションに違いが出てしまうから、内外装の雰囲気を含めて、違和感があるかどうかは大切に見極めたい。
編集部●お店選びと並んで中古車購入の基本であり、極意ですね。お二人がボクスターに乗るとしたら、どういったクルマを選びますか?
九島●内装キャメルで外装ネイビーなんて大人だよね。
竹岡●私は逆にハッキリとした鮮やかなボディカラーがいいな。スポーツカーらしくオレンジとか!
九島●ベースグレードでいいから、ホイール交換とかして自分らしくさらっと乗りこなせたらカッコいいよ。

スポーツカーらしくシンプルで機能美にあふれたコックピット

 スポーツカーらしくシンプルにまとめられたコックピット。センターコンソールに操作系はまとめられており、屋根の開け閉めもボタンひとつで簡単に行える。ベースグレードであっても質感は高いが、上級グレードではさらにグレードアップし、贅沢な雰囲気に。

ボタンひとつでオープンドライブ シートヒーターで冬でも快適

 ハイバックタイプのシートは腰まわりのサポートが抜群で、コーナリングでも身体がしっかりと固定される。シートヒーターも備わっていて、シートの背後には風の巻き込みを低減させるウインドディフレクターも装備。屋根を開けていても室内は快適だ。

スポーツクロノパッケージ装着で走行性能はさらに強化される

 ポルシェの伝統である丸型の計器。911は5連だが、ボクスターおよびケイマンは3連。右側は液晶モニターとなっており、ボタン操作で各種情報を切り替えて表示できる仕組み。ダッシュボード中央の時計は、スポーツクロノパッケージ装着車の証。各種電子制御でスポーツ性能を効果的に引き上げる。

エンジンはミッドシップだからボンネット内部にもトランクが

 エンジンをミッドシップに搭載するボクスターには、通常のトランクルームのほかに、フロントボンネットの下にスペースが用意されている。こちらは深さも十分にあるため、大人二人分の旅行荷物を収納可能。意外に使い勝手がいいところもボクスター人気の秘密。

試乗判定レビュー

※各項目に対して10点満点評価。 ※ナンバープレートは、はめ込み合成です。

竹岡 圭

  • 【10点】ポルシェのなかでは、同じオープンモデルの911カブリオレとは一線を画し、スポーツモデルなんだけどちょっぴりカジュアルな雰囲気もあって、クーペスタイルのケイマンよりもスポコンじゃなく、オシャレという立ち位置。ライバルと比べると、圧倒的なブランド力と卓越した運動性能でズバ抜けたポジションを確立しているのがスゴイですよね。

  • 【8点】最近のいわゆる安全装備や快適装備を求めるならば、この時代のモデルにはまだ用意されていなかったりします。基本的に自分で走ってくださいという考え方のブランドなんですよね。さらにほとんどがオプション設定なので、自分の好みのものが付いているかどうかは難しいところ。ただタマ数がとにかく少ないので、ある程度の妥協は必要だと思います。

  • 【9点】ブランドに見合う運動性能ってあると思うんですよね。そこがしっかり進化し続けているところは高ポイント。またNAエンジンにこだわりがある方は、この世代が買いですよね。ただし今回の個体にかぎっては、気になるところもあったりしたので、購入する際は必ず試乗してのチェックが必要かも。なんたってスポーツカーですから素性が気になります。

九島辰也

  • 【10点】カジュアルなオープンカーとしてスタートしたモデルがマーケットからの要望を受けて進化を続け、この第3世代では本格的なスポーツカーになった。それでもどこかカジュアルな雰囲気も残しているのはさすがで、都会にもマッチするのだから魅力的だ。今回試乗したのはベースグレードだが、「S」、「GTS」はさらに刺激的で、マニアックな要望にも応える。

  • 【9点】自動ブレーキといった先進装備は備わらないが、スポーツカーにあれもこれもと装備を求めるのはある意味で野暮だ。シンプルで軽量に仕立てられたステアリングホイールを握って走らせれば、それがポルシェの考え方だとわかるはず。スポーツクロノパッケージを選べばクロノグラフ風の時計がダッシュボードに備わるなど、演出面でもこだわりを感じる。

  • 【9点】ライバルも実力を高めているが、走りの実力ではポルシェはさらに上をいく。スポーツカーというとガチガチに固められた足まわりを想像するかもしれないが、ボクスターは段差でのショックも綺麗に吸収する。そういう意味では今回の試乗車は本来のコンディションではなかったように思える。スポーツカーの中古車を購入する際はやはり注意が必要だ。

グーワールド 編集部

  • 【10点】つねに時代の先端を走るポルシェですが、マニア目線で見れば過去モデルにも、その時代ならではの味わいがあり、古いからといって安価ではないのが難しいところ。718ボクスターが直4ターボ化されたこともあって、今回試乗した3代目ボクスターは中古車市場での価格が下がりません。年式さえ気にしなければ、2代目の良質車という選択肢もあります。

  • 【9点】ポルシェは新車時にどのようなオプションを装着しているかで、同じクルマでも仕上がりにかなりの差が出るブランドです。基本的には上位グレードであれば装備も充実していると考えてよいのですが、初代オーナーがこだわり派で多数のオプションを装着しているケースもあるので、1台1台をじっくりと見比べて、好みに合う中古車を探してほしいですね。

  • 【10点】腕があるひとだけでなく、スポーツカービギナーにも楽しさを提供してくれるのがボクスターというクルマの大きな魅力。スポーツカーらしく走らせるだけでなく、屋根を開けてゆっくりと流すように走らせるのも楽しいクルマです。今回の試乗車は7速PDK仕様でしたが、少数ながら6速MTモデルも存在。価格は高いですが、楽しさも抜群です。

ポルシェ ボクスターのモデル主要変遷やスペック情報はこちら

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
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また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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