よろしくメカドック[2019.02.06 UP]

今だからこそ面白い! 『よろしくメカドック』作者 次原隆二先生インタビュー

1958年生まれ・福岡県出身。1982年に『よろしくメカドック』を週刊少年ジャンプで連載。現在は、漫画家としての活動のほか、株式会社コアミックス、株式会社ノース・スターズ・ピクチャーの役員も務める。

―まず、漫画家になったきっかけを教えてください。

昔から漫画家になろうと思っていたわけではなかったんですよ(笑)。僕の高校時代は、ちょうど共通一次試験への切り替わりの直前だったのだけれど、目指していた国立大学の受験に失敗してしまった。もし浪人したら翌年からは共通一次試験が始まって、選択科目数がいきなり増えてしまう。これはもうダメだと、それなら手に職を付けようと、整備専門学校に進学することにしました。もともと機械が好きだったから、エンジンの構造なんかを覚えるのは面白かった。漫画との出会いは、その専門学校1年の夏休みを使って描いた作品が週刊少年ジャンプで賞を獲ったこと。それがきっかけで担当の編集者から「プロを目指してみないか」と声をかけてもらうことができた。

―しかしデビューしてすぐにヒットとはいかなかった……。

そうです。最初の作品は人気が出ないまま残念ながら打ち切りになってしまった。それで、他の作家さんにない「自分だけの武器」は何か? と考え、クルマもの、当時興味があったチューニングの世界を題材にすることにしたんです。

整備士の経験と知識を生かしチューニングカー漫画で大ヒット! でも本当は……

「第1回 東京エキサイティングカーショー」のパンフレット。実際にチューニングカーを取材すべくこうしたイベントにも度々参加した。現在でも「東京オートサロン」の名称で歴史を繋ぐ歴史ある催しだ。

―まさにその「チューニング」こそ、『よろしくメカドック』(以下、メカドック)を大人気作品にした大きな魅力のひとつでした。次原先生ご自身はクルマをチューニングしてレースするなどされていたんですか? 

いいえ、全然(笑)。結構、誤解されることも多いのですが、私自身、運転はまったくスピードとか出さない方でして。これまでクルマも改造とかしたことないんです。それに、東京に出て連載が軌道に乗ってからは忙しかったこともあって、自分のクルマすらあまり乗ることができなかったですね。

―それは非常に意外です! 描写にリアリティがあるので、先生自身がそういったチューニングなどの経験が豊富な方なのだろうと想像していました。

ありがとうございます。『メカドック』は少年向けの漫画ですから、ストーリーそのものは荒唐無稽です。でも、そこにちょっとリアルな情報、要素を混ぜることで、お話に魔法がかかる。それが漫画の面白さでもありますね。

―なるほど! 先生の作品に登場するクルマは国産車がほとんどですよね。たとえば、同じクルマ漫画の名作である『サーキットの狼』(池沢さとし作)では、世界中のスーパーカーが登場して、スーパーカーブームをつくりました。『メカドック』に登場させたクルマにはどのようなこだわりがあったのですか?

『メカドック』にとってクルマは影の主人公です。どうやったらクルマが活躍できるのかを大切にしながら、ストーリーやチューニングのアイデアを考えました。週刊少年ジャンプなので、どうしてもバトル要素というか、レースの部分がメインになっていましたが、自分としては、最初の頃のような身近なクルマが出てくる話も好きなんですよ。潰れそうな喫茶店を救うためにバスをお店に改造するとか(第4話「パドックを救えの巻」)、ホンダシティをターボ化するとか(第6話「ブラック・シティ」の巻)。いつか自分でも手に入れられそうな身近なクルマ、国産スポーツカーが、自分にとってのスーパーカーだった、というのが影響しているのかもしれません。

クルマ選びの基準は「ワクワクする新技術があるかどうか」

歴代の愛車はイラストとして残されていた。スズキ フロンテクーペ、ニッサン シルビア、トヨタ MR2。当時は連載が忙しく、あまり乗る機会がなかったという。

―作品がヒットしたことで、そんな夢も叶ったと思うのですが、当時の愛車を教えていただけますか?

最初に乗ったのが、親から譲ってもらったスズキのフロンテクーペでした。自分で初めて購入したのは日産シルビア(S12)でしたね。新しい機能や機構が好きで、思い返せばそういう新しい装備がついたクルマばかり乗り継いできました。シルビアを選んだ理由は、「ドライブガイド」っていう原始的なカーナビや、暗証番号式のキーレスエントリーが搭載されていたから。その次に購入したトヨタMR2(AW11)も、「国産車初のミッドシップエンジン」というところに惹かれました。ミッドシップといっても、当時は忙しくてクルマにほとんど乗れず、その性能を体験することはありませんでしたけどね。あ、そうそう、一度だけありました! 急いでいて、普段だったら信号で余裕をもって止まるところをそのまま曲がったことがあったんです。そのときすごくスムーズに曲がれて、「これがミッドシップか!」と感動したのを覚えています。いまの愛車はスバルのレヴォーグですが、スバルに乗るようになったきっかけも、水平対向エンジン(ボクサーエンジン)を試してみたいという興味からでした。

次原先生が初めて自分で購入したクルマは、ニッサン シルビア(S12)だった。暗証番号式キーレスエントリーなど、その装備はいま見ても未来的。

現在の愛車であるスバル レヴォーグ(写真は同型車)は、アイサイトに代表される先進安全技術がお気に入り。この前にはレガシィアウトバックも所有していた。

じつはすでに存在している!? 『よろしくメカドック2』

かつて所有していたシルビアのカタログはいまでも手元に大切に保管されている。未来的な装備に心が踊ったという。

―1980年代は、自動車がものすごい勢いで進化していった時期でもありましたね。「世界初」という言葉がカタログやCMをにぎわせていましたし、「DOHC4バルブ」、「インタークーラー付きターボ」、「ハイキャス」、「280馬力」といったキーワードがクルマ好きを大いに盛り上げてくれました。『メカドック』を読み返すと、あの時の感動と興奮が昨日のことのように思い出されてきます。

今思い返せば、あの時代に『メカドック』を描けたのは本当に幸せでした。今でもよく、「ぜひ『メカドック2』を描いてください」という声を頂戴するのですが、現在ではきっと漫画として成り立たないでしょう。自動車もコンピューター仕掛けですし、自動運転が実現しようとしている時代ですから。チューニングカーで公道バトルというのも、なかなか無理がありますし。私自身も、いろいろと模索してきましたが、2001年から連載した『レストアガレージ251〜車屋夢次郎〜』という作品が、ある意味で『メカドック2』だったのかもしれません。

クルマ好きを実際に取材したからこそ描けた「リアル」

仕事場には、コレクションでもあり、資料でもあるたくさんのミニカーが壁を埋めていた。

―『レストアガレージ251』は、レストアの達人である里見夢次郎が、依頼者のクルマを修復することで、クルマだけでなくその自動車にまつわる思い出までをも修復して、依頼者やその周辺の人々を癒していくという人情ものです。

そうです。じつは、もともとの構想段階では古本屋が舞台だったのですが、どうしてもしっくりこなかった。あるとき自分の得意とするクルマを題材にすればいいのでは? というアイデアが浮かんで、自動車修理工場を舞台にした現在のスタイルにたどり着きました。『メカドック』では、クルマが影の主人公で登場人物が脇役という構図でしたが、『レストアガレージ251』では、クルマは脇役で人物が主役という逆の構図となっています。

―その脇役とされたクルマたち、「レストアガレージ251」では旧車がクローズアップされていますが、非常にリアルタッチで描かれているため、まさにその場で本当にレストアが行われているかのような臨場感を味わえます。話の内容は、まさに大人だからこそ機微がわかる人情ものですから、大人になった『メカドック』世代にはまさにぴったりです!

ありがとうございます。クルマを描くのは非常に大変で、当時はいろいろなところにご協力をいただいて取材を行っていました。あらゆる角度から何百枚も資料写真を撮影しました(笑)。オーナーの方々に話を伺うのですが、皆さんに共通していたのが、心の底から芯までクルマを愛して、大切にしているということ。旧車を維持するのが、並大抵の努力ではないのが伝わってきました。

次原先生が「車好きとしての原点」と語ったマッハ号。テレビアニメ『マッハGoGoGo』に登場するマシンで、車体にはさまざまな仕掛けを持つ。

資料スペースには、たくさんの自動車雑誌や書籍が並ぶ。実際にあるメカや仕組みを取り入れることで、創作にリアリティと面白みが生まれるという。

次原隆二先生にとっての夢の1台であるトヨタスポーツ800。大衆向けスポーツカーとして開発され、1965年から1969年まで製造された。写真はトヨタ自動車が所有する個体。

―もしも今、1台だけ、好きなクルマが手に入るとしたら?

ヨタハチ(トヨタ スポーツ800)でしょうか。でも、旧車乗りの方々を見ていると、とても自分には荷が重い(笑)。デザインは当時のままで、中身が最新というクルマが出たら最高ですね。

―本日は、ありがとうございました。


聞き手
宗平光弘
株式会社プロトコーポレーション 常務取締役
ITソリューション部門担当。「2018−2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」実行委員。当サイト「PROTO総研/カーライフ」の所長を務める



次原隆二先生インタビュー記念!『よろしくメカドック』が期間限定読める!毎週3話ずつ、10週連続で公開します。


インタビュー最後に語られた「ヨタハチ」が登場!
『レストアガレージ251〜車屋夢次郎〜』を特別公開!
関連エピソードを毎週1話更新、各話は3週間限定で公開します。

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