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更新日:2018.05.23 / 掲載日:2018.05.23

セナの名前が与えられた究極のマクラーレンが日本上陸!

マクラーレン セナ

文●ユニット・コンパス 写真●川崎泰輝

 東京タワーを目印に会場として案内された増上寺の三解脱門をくぐると、大殿の前に色とりどりのマクラーレンが5台ずらりと並ぶというインパクトのある光景が広がっていた。歴史ある伝統的な建築物と最新スーパースポーツの組み合わせという、まさにSNS映えするシーンを前に、お寺を訪れていた拝観者たちもスマートフォンを取り出して撮影に興じていた。
 2018年5月22日、晴れ渡った青空の下、東京の増上寺を舞台として実施された「2018 McLaren Japan Premiere」。その目玉となるのは、究極のマクラーレンとも言える「McLaren Senna(マクラーレン セナ)」の日本初披露である。

 F1で名高いマクラーレン。企業としてのマクラーレングループは、F1などレースを戦う「レーシング」、ロードカー(市販車)を担当する「オートモーティブ」、そしてテクノロジーを応用しコンサルティングなどを行う「アプライド・テクノロジーズ」という3部門から構成されている。
 驚くべきは、市販車部門である「マクラーレン・オートモーティブ」の成長速度だ。すでに名門として50年の歴史を持つレーシングチームに対して、オートモーティブが設立され、最初の販売店が誕生したのは、2011年6月のこと。それがなんと、2017年には販売台数3340台を記録しているという。「もっともリーズナブルで使いやすい」とされる540Cであっても2410万円する超高額車両であることを考えれば、それはまさに驚異的な成長と言えるだろう。

 マクラーレンはいかにして、この短期間でスーパーカービジネスを成功させたのか。

 答えは、圧倒的なパフォーマンスを発揮する真のスポーツカーを生み出すという、まさにレース屋的な発想だった。その歩みを背中から押す存在となったのが、1991年にマクラーレン・カーズ(現マクラーレン・オートモーティブ)が発表した伝説のスーパースポーツカー「マクラーレンF1」の存在だった。車両中央に設定されたドライバーズシートに象徴される、走りへの徹底的なこだわり、圧倒的なパフォーマンスは、後のモータースポーツでの活躍も合わせて、まさに伝説的だった。

 そして、21世紀の新生マクラーレンもまた、圧倒的な技術による究極的なモデルの発表によって、自分たちの価値を高めることに成功した。「世界初のハイブリッド・ハイパーカー」であるマクラーレン P1(2013年)である。高名なエンジニアであるダン・パリー・ウィリアムズ氏が指揮したP1は、レースフィールド直系の最先端かつ最高峰のエンジニアリングを凝縮した、まさにマクラーレンらしさの塊ともいえるモデルで、並み居るライバルたちを実力でねじ伏せたのだ。
 販売戦略も巧みだった。マクラーレンは自社のモデルを「スポーツ」、「スーパー」、「アルティメット」という3つのシリーズにカテゴライズして企画。各々は究極のスポーツカーとしてのDNAを受け継ぎながらも、ロードユースを重視したモデルからサーキットでの究極的なパフォーマンスを目標にしたモデルまでを作り分けることにした。
 そして、販売台数を稼ぎ出す「スポーツ」シリーズと同時に、イメージリーダーとなる「アルティメット」シリーズであるP1を登場させることで、垂直離陸的にブランドイメージを強化する戦略を描いたわけだ。

 まさに驚異的なスピードで成長を続けるマクラーレン。その次の1手もまた、彼らの優れたエンジニアリングによって成し遂げられた。P1以来の登場となる「アルティメット」シリーズのニューモデルだ。
 マクラーレン セナは、伝説のF1ドライバー アイルトン・セナの名を冠する、もっとも走りに対してピュアな、究極的にサーキット志向のロードカー。

 その開発コンセプトは「公道でも走れる、マクラーレン究極のサーキット仕様モデル」とシンプル。
 ドライバーとマシンとの間に純粋な絆を生み出すことを目指し、マクラーレン史上もっともレスポンスと一体感に優れたロードカーとして開発されたという。

 そのパフォーマンスは圧巻で、4LV8ツインターボエンジンの最高出力は800馬力、最大トルク800Nm(81.6kgm)、そしてボディ全体が生み出すダウンフォースは最大800kgに達する。それでいながら最新の軽量化素材をふんだんに使った車体は、乾燥重量でわずか1198kgに抑えられる。
 当然、パフォーマンスも超一級で、参考までにいくつかの数値を示すと、0-100km/h加速は0.28秒、200km/hからの停止距離は100m、停止状態から17.5秒で300km/hに到達する。

 世界限定で500台が生産されるセナの価格は675000ポンド、つまり日本円で1億円を超える超高額車両ではあるが、すでにすべての車両のオーナーが決まっている。

マクラーレン・オートモーティブ エンジニアリング・デザイン・ディレクターのダン・パリー・ウィリアムズ氏

 プレゼンターは、P1に引き続きセナの開発でもリーダーシップを発揮したダン・パリー・ウィリアムズ氏。まさしく、セナを語るのにもっともふさわしい人物だ。

 スライドを用いてのプレゼンで印象的だったのが、軽量化の大切さについて、物理学者ニュートンの「運動の第2法則」(F=mα)を用いて説明したこと。
 「運動の第2法則」が表すのは「F:力」と「α:加速度」、「m:質量」の関係で、力が同じ場合、物体が軽いほど加速度が上がるというものだ。つまり、車両を軽くすることで、同じエンジンパワーでも、より俊敏なクルマがつくれる。そういう根源的な物理法則にしたがって、セナはデザインされているというのである。
 なお、セナの1トンあたりの馬力は668ps。しかも、軽さが有効なのは加速だけではない。減速やコーナリングといった、ありとあらゆる場面で車両の運動性能に影響する。そして、車両の重心から遠い位置にあるものほど、軽くすることが大切になる。一例として、フロントフェンダーの重さが紹介されたのだが、片側でなんと0.66kg、ペットボトルほどの重さだというから驚く。
 この他にも、「公道用のレーシングカー」として設計された空力コンセプトや実験と検証を重視したエルゴノミクスなどについても、ウィリアムズ氏は具体的なデータを交えわかりやすく説明してくれた。プレゼンテーションについては、同時通訳付きで動画を収録しているので、時間のある方はぜひ観ていただきたい。

 マクラーレンの魅力は、レースに直結した高度かつ最先端のエンジニアリングをロードカーに結びつけることにある。セナは、そのことをもっともピュアに体現したモデルと言えるだろう。

「まったく妥協のないレベルにまで自分を高めるのだ。自分のすべてを、まさにすべてを捧げるのだーーアイルトン・セナ」

 この言葉に込められた精神性こそ、究極のマクラーレンである、マクラーレン セナの本質なのかもしれない。

マクラーレン セナ(7速AT・DCT)

全長×全幅×全高 4744×1958×1229mm
ホイールベース 2670mm
トレッド前/後 1654/1618mm
車両重量 1198kg(乾燥重量)
エンジン V8気筒DOHCツインターボ
総排気量 3994cc
最高出力 800ps/7250rpm
最大トルク 81.6kgm/5500-6700rpm
サスペンション前後 ダブルウィッシュボーン
ブレーキ前後 Vディスク
タイヤ前後 245/35R19・315/30R20

販売価格 1億48万円(全グレード)

 主催者として挨拶を行なったマクラーレン・オートモーティブ アジア日本代表の正本嘉宏氏(右)、マクラーレン・オートモーティブ アジア・パシフィック担当マネージング・ディレクター ジョージ・ビッグス氏(中央)、マクラーレン・オートモーティブ エンジニアリング・デザイン・ディレクターのダン・パリー・ウィリアムズ氏(左)

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