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更新日:2018.09.21 / 掲載日:2017.12.04
売れなければエコじゃない! トヨタが電動化技術に関する説明会を実施
eQ、プリウス、プリウスPHV、MIRAI
文と写真●ユニット・コンパス
「私たちこそが電動化をリードしている」。トヨタは2017年11月27日、電動化技術に関する説明会を開催。そこで、1997年の初代プリウス登場以来20年に渡って積み重ねてきた電動化技術についての解説が行われた。その内容は、多岐にわたる電動化技術への取り組みの実績、進化の軌跡であり、その濃密な解説からも、ハイブリッドカーを累計1100万台生産し、環境対策に貢献してきたというトヨタの自負が感じられた。
そもそも今回説明会には、「トヨタのEV対応が遅れているのではないか」、「急加速しているEVシフトに日本の自動車産業は耐えられるのか」という声に対する、トヨタ側のカウンターという側面があった。電動化のコアテクノロジーは、「バッテリー」、「モーター」、そして「PCU(コントロールユニット)」であるが、それこそまさしくトヨタが得意とするハイブリッドカーのコア技術であるからだ。
早すぎたトヨタのピュアEV「eQ」から学んだこと
eQ
では、なぜトヨタは積極的にピュアEVを販売しないのか。その理由は、電動化技術を自社開発し、知りすぎていたことの裏返しでもあったようだ。じつはトヨタは、2012年9月に小型車「iQ」の車体を利用したピュアEV「eQ」を販売している。2010年に数千台規模のEVを導入すると発表していたアナウンスに対するプロダクトアウトである。しかし、実際の販売台数はグローバルで100台とスケールダウンした内容だった。当時の技術レベルでは、バッテリーは高価で重く、エネルギー容量も少ないため、当時最新のリチウムイオンを用いてもなお航続距離は100km(JC08モード)にとどまってしまったからだ。iQをベースにしたのも、航続距離からシティコミューター的な使い方をせざるを得ないことの逆算である。結果として360万円という価格は、4人乗り(実質2人乗り)の超小型車としては割高であり、本格的な販売は難しいという判断も仕方ないものだった。
「エコカーは普及してこそ環境への貢献」。これはトヨタが繰り返し発しているメッセージだ。高価なバッテリーを大量に使えば航続距離の長いEVを作ることは技術的に可能ではあるが、それでは広く一般的に販売できる価格にすることは難しい。それならば、引き続き先進技術の研究を続けつつ、現実的な解として、量販できるエコカー、つまりハイブリッドカーに注力しようというのがトヨタの選んだ道なのである。当初はプリウスだけだったハイブリッドカーのラインアップはいまや全カテゴリーへと拡充、いまではユーザーのライフスタイルに合わせて無理なくエコカーを利用することができるようになった。
結果として、ハイブリッドカーの累計生産台数は1100万台を超えた。いまやトヨタ製ハイブリッドカーのグローバルシェアは40%を超えるまで成長。これまでに削減してきたCO2は8500万トン以上になるという。
多様な電動化車両によってCO2ゼロを目指す
トヨタの電動車両開発の歴史
では、これからどうなっていくのか。トヨタでは、「2050年 新車CO2ゼロチャレンジ」として、今後も電動車両の開発を一層加速し、2050年で新車から排出されるCO2を90%削減を目指す。エンジンのみを搭載するクルマは徐々に少なくなり、ハイブリッドやプラグインハイブリッドに加え、FCVやピュアEVも開発していくという。人間がクルマに合わせるのではなく、使い方にあったエコカーを提供するべく、技術開発を続けていくという考え方だ。
さらに、電動化車両の性能を決定づけるキーテクノロジーは電池であるが、トヨタはリチウムイオンに代わる次世代電池として注目されている「全個体電池」の研究開発についても取り組んでおり、関連技術の特許取得数は世界トップだと言われている。トヨタでは、全個体電池の実用化を2020年代前半を目標に続けており、こちらも引き続き注目が必要だ。
100年に1度の転換点と言われている自動車の電動化。その変化に対応すべく、各自動車メーカーは開発ペースを加速させ、対応モデルを増加させるなど真剣な取り組みを行なっている。我々消費者としては、その進化がユーザー目線であることを望みつつ、新しい時代の到来を楽しみにしたい。
2050年 新車CO2ゼロチャレンジ
ハイブリッドシステムの構造(プリウス)
ハイブリッド技術の進化は小型軽量化、高機能化、低コスト化の歴史でもある
4代目プリウスのバッテリーパック
初代プリウスのバッテリーパック
4代目プリウスのPCU
初代プリウスのPCU
4代目プリウスのモーターおよびトランスアクスル
初代プリウスのモーターおよびトランスアクスル