ハイブリッド車ではエアコンの使い方を間違えると燃費ダウンにつながる可能性があります。
この記事では、カーエアコンの仕組み、ハイブリッド車のエアコンの種類・効きの良さ・燃費との関係を説明します。
ハイブリッド車ならではのエアコンとの関係を知って、上手にカーエアコンを使いこなしていきましょう。
ハイブリッド車のエアコンの仕組みは車種によって異なる
エンジンの力で動かす従来型のカーエアコンは、エンジンの稼働を最小限に抑えたいハイブリッド車とは相性がよくありません。そのため、ハイブリッド車では「電動コンプレッサー式」の冷房システムが一般的に採用されています。
また、一部のハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHEV)では、冷暖房の効率を高めるために「ヒートポンプ式」のエアコンが搭載されているケースもあります。
ただし、どのタイプのエアコンが搭載されているかは車種やグレードによって異なります。
エアコンの方式によって燃費性能や冷暖房の効きに違いが出るため、それぞれの仕組みを理解しておくことは、快適で効率的なカーライフを送るうえで重要です。
カーエアコンに使用されるヒートポンプ式の仕組み
ヒートポンプ式は、家庭用のエアコンでも採用されているエアコンの主流の方式です。
ヒートポンプ式は、冷房の性質を利用して外気から熱を吸収または放出させることで冷たい空気や温かい空気を作り出し、室内の温度を調整します。1つの冷房循環システムの流れの向きを切り替えることで、冷房と暖房の両方に対応できます。
今回は冷房の場合の循環システムについて説明します。
外気の熱を吸収したり、放出したりして冷たい空気や温かい空気を作り出せる性質を持つ冷房は、常にエアコンシステム内を循環しています。このときの冷房は気体の状態と液体の状態が混ざって存在しています。
エアコンシステムは、冷房が状態を変化させながらエアコンシステム内の各装置を循環することで機能しているのです。冷房の流れを1つずつ確認していきましょう。
エアコンのスイッチを入れると、循環していた冷房ガス(気体状態の冷房)の一部がコンプレッサーで圧縮されます。コンプレッサーは圧縮機の役割を担っていて、圧縮された冷房ガスは低温低圧の状態から高温高圧の状態に変化します。
コンプレッサーはエアコンの心臓とされ、エンジンの力で動くのが主流でしたが、ハイブリッド車の中には電気の力で動く電動コンプレッサーも登場しました。
高温高圧状態になった冷房ガスは、圧力差によってコンデンサーに移動し、コンデンサー内で冷却されることで液体に変化します。コンデンサー内に細い管が曲がりくねって配置されていて、冷房ガスが通ることで熱を放出する仕組みです。
このとき、冷房ガスは高温高圧の気体から、低温高圧の液体へと変化します。コンプレッサーからコンデンサーに繋がれたこの配管は触ると熱く、冷房に使われる配管だから冷たいわけではないため注意してください。
コンデンサーで低温高圧の液体状態になった冷房は、レシーバーで余分な水分や不純物が取り除かれます。レシーバーはタンクのような形をしていて、冷房を一時的に蓄えるとともに、余分な水分や不純物を取り除いてくれます。
レシーバーによって、冷房は安定した状態にされ、必要な量だけが次の膨張弁に送り出されるのです。
レシーバーから送り出される低温高圧液体状態の冷房は、膨張弁(エキスパッションバルブ)で一気に圧力が下げられて霧状に変化します。
冷房は気化するときに熱を吸収するため、膨張弁で一気に圧力を下げ気化しやすくする過程が必要なのです。
気化しやすい状態にされた冷房が、エバポレーター内を通過しながら気化することで外気の熱を奪い、冷たい空気を作り出します。
エバポレーター内には、ブロアファンで吸収した外気が通り抜けるようになっています。吸収した外気がエバポレーター内を通り抜けるタイミングで、冷房が気化することで外気から熱を奪います。
熱が奪われた外気が冷たい空気に変化する仕組みです。
冷房によって熱を奪われ冷たい空気になった外気は、ブロアファンで車内に送り出されます。これでようやくエアコンから冷たい空気が出てくるのです。
エアコンは冷たい空気を送り出すことで、設定された温度に室温を調整しています。
暖房では冷房が反対向きの循環をすることで、外気から温かい空気を作り出す仕組みが行われています。
ハイブリッド車のエアコンの種類
ハイブリッド車では、冷房に電動コンプレッサーを用いたエアコンが採用されており、これによりエンジン非稼働時でも冷房が可能です。
ヒートポンプ式は、冷暖房両対応のシステムとして一部の車種で採用されていますが、すべてのハイブリッド車が冷房にヒートポンプ式を使っているわけではありません。
また、多くのハイブリッド車では暖房にヒートポンプ式を採用しているモデルもありますが、低価格帯では依然としてヒーターコア(エンジンの排熱利用)が主流です。
ハイブリッド車の冷房には、電動コンプレッサーを用いたエアコンシステムが主に採用されています。これはエンジンに依存せず、電気だけで作動できるため、エンジンが停止している状態でも冷房が使えるという点がメリットです。
一部のハイブリッド車やプラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)では、冷暖房の両方に対応できるヒートポンプ式エアコンが採用されています。ヒートポンプは、熱を作り出すのではなく、空気中の熱を移動させる仕組みで冷暖房を行うため、電力消費が少なく、省エネルギー性に優れています。
多くのハイブリッド車では、依然としてエンジンの排熱を利用するヒーターコア式が主に使われています。これは、構造がシンプルでコストも抑えられるため、特にコンパクトカーや低価格帯のモデルで一般的です。
一方でヒートポンプ式暖房は省エネ性が高く、エンジンの使用を最小限に抑えられるため、燃費や快適性の向上に寄与します。そのため、プラグインハイブリッド車(PHEV)や電動走行比率の高い上位モデルで採用が進んでいます。
多くのハイブリッド車では依然として、ガソリン車と同様にヒーターコア式(エンジンの熱を利用する方式)が使われています。
ヒーターコア式はシンプルで暖房性能も高いですが、エンジンが頻繁に停止するハイブリッド車では、暖房能力が安定しないという課題が。そのため、車種によってはヒーターコアに加えて電気式のPTCヒーターを併用し、エンジン停止中の補助暖房として活用しています。
また、寒冷地仕様の車では、ヒートポンプ式とPTCヒーターの両方を組み合わせる構成も見られます。
PTCヒーターは、ヒートポンプ式の補助の目的で多くのハイブリッド車に搭載されています。PTCヒーターは電気ヒーターのため、温める力が強く、エンジン停止中でも働きます。
暖房を強く働かせたい寒い地域やエンジンを入れた直後などにPTCヒーターを働かせることで、車内を快適な温度に保てるのです。ただし、PTCヒーターは消費電力が大きいため、長時間使用してしまうと燃費が悪くなってしまう可能性があります。
ハイブリッド車のエアコンの効き
「ハイブリッド車のエアコンの効きが悪い」といわれているのは、エンジンが関係しています。
カーエアコンは基本的にエンジンの力で動いていますが、ハイブリッド車はガソリン車に比べてエンジンを使わないためエアコンの効きが悪いのではないかといわれているのです。
しかし、本当に効きが悪いのかというとそうではありません。車種にもよりますが、ハイブリッド車のエアコンはエンジンを使わない分を電気の力で補う工夫がされています。
そのため、ハイブリッド車は必ずガソリン車よりもエアコンの効きが悪いかといわれると、そうではありません。
ストロングハイブリッド車の場合は、ガソリン車と同じようにエアコンが効きます。
クーラーの効きで重要なのはコンプレッサーで、従来はエンジンで稼働していたため、エンジンをあまり使わないハイブリッド車とはあまり相性が良くありませんでした。ところが、電動コンプレッサーが登場したことにより、ハイブリッド車でもエンジンの使用状況にかかわらず、クーラーが効くようになったのです。
また、暖房の場合もエンジンの熱で温めるヒーターコア式だけでなく、電気の力を利用するヒートポンプ式やPTCヒーターが導入されたことで、効きが良くなりました。
そのため、電気の力でエアコンを稼働できる機能がきちんと搭載されているストロングハイブリッド車では、快適にエアコンが使用できます。
電気の力でエアコンを稼働させる機能が搭載されていないマイルドハイブリッド車では、エアコンの効きが悪いと感じる場合があります。これがハイブリッド車がエアコンの効きが悪いと考えられている理由です。
ハイブリッド車はエンジンを止めるアイドリングストップが積極的に行われています。ガソリン車のエアコンに近い仕組みを持つマイルドハイブリッド車は、アイドリングストップの最中はエアコンが効きません。そのため、信号などの停車時にエアコンが止まってしまい、エアコンの効きが悪いと感じてしまうことがあるのです。
エアコンの効きが気になる人がマイルドハイブリッド車に乗る場合は、エアコンの種類に注目することをおすすめします。
エアコンはエンジンの力で動く仕組みのため、エンジンをあまり使用しないハイブリッド車とはあまり相性が良くありません。ストロングハイブリッド車ではそれを補うために、電気の力で動くエアコンシステムが多数導入されています。電気の力を使ってエアコンを動かせるため、常時エアコンが稼働しています。
しかし、マイルドハイブリッド車ではガソリン車と同じようなエンジンの力で動くエアコンシステムが導入されている場合があるため、アイドリングストップの最中にエアコンが稼働しないという問題がおきます。これがハイブリッド車のエアコンの効きが悪いと感じてしまう理由です。
ハイブリッド車のエアコン使用時の燃費
ハイブリッド車の場合、クーラー使用時とヒーター使用時のどちらも燃費が低下してしまいます。
ここからは、クーラー使用時とヒーター使用時、それぞれどのくらい燃費が低下するのか解説していきます。
ハイブリッド車のクーラー使用時の燃費は、3割程度低下するとされています。
クーラーの場合はヒートポンプ式が使われており、コンプレッサーを動かすためにエンジンを使う必要があります。そのため、エアコンを動かすためにエンジンを動かすことで燃料を消費してしまうのです。
コンプレッサーの負荷は外気温度と室内温度の差が大きいほど強くなるため、真夏の暑い日のほうが燃費は悪化します。
ハイブリッド車はヒーター使用時の場合も燃費が3割程度低下するとされています。
ガソリン車のヒーターは、ヒーターコア式を採用していて、ヒーターコア式はエンジンを動かしたときに発生する熱を利用して車内を温めているため、別で燃料を使用しておらず燃費への影響が少ないのです。
しかし、ハイブリッド車はエンジンをあまり動かさないにもかかわらず、暖房を動かすためにエンジンを稼働させなければならない状況ができてしまいます。
定期的にエンジンを止めることによる燃費の向上を図るハイブリッド車にとって、常にエンジンを動かすことは燃費の悪化を意味します。
エアコン使用時の燃費対策の方法
ハイブリッド車でエアコンを使う場合はどうしても燃費が悪くなってしまいます。エンジンの力で動くエアコンとエンジンの稼働を抑えたいハイブリッド車は相性が良くないのです。
しかし、シートヒーターやハンドルヒーターの活用、内気循環モードの使用など燃費の悪化を抑える工夫は可能です。これらの対策をすることで、エアコン使用時でも燃費を維持できます。
燃費対策の方法を知って、上手にエアコンを使いこなしていきましょう。
エンジンが暖まってからエアコンをつけると、ハイブリッド車の燃費低下を抑えられます。エンジンが暖まっていない状態でエアコンをつけると、温めるために強い力が必要になるため、回転数が跳ね上がってガソリンを多めに消費してしまいます。
エンジンを始動してすぐはエアコンをつけないようにして、ある程度エンジンが暖まったらエアコンをつけると燃費対策ができます。
シートヒーターやハンドルヒーターは電気で動くためエンジンを動かさず、燃費に悪影響が少ないとされています。シートヒーターやハンドルヒーターは温められた電熱線から直接体に熱が伝わるため温まりが早く、ヒーターのように空気を介さないため、放熱によるロスも少なくて済みます。
特に、シートヒーターは背中からお尻までの広い範囲を温めてくれるため、十分に温かさを感じられるでしょう。燃費に良くて、温まりが早いシートヒーターやハンドルヒーターはハイブリッド車におすすめの機能です。
エアコンは内気循環を活用したほうが効きが良いとされています。
外気循環をすると外気を取り入れてしまうため、エアコンの温度調節の負荷がかかります。燃費対策するのであれば、内気循環モードにしたほうが燃費と効きが良くなるのです。
ただし、内気循環をずっと使用していると、窓が曇って視界が悪くなったり、社内の二酸化炭素濃度が上がって眠気を引き起こしたりするなどの危険が伴います。
燃費を気にして内気循環を使い続けるのではなく、エアコンは内気循環と外気取り入れを交互に使って、安全かつ快適な車内環境を維持しましょう。
エアコンの設定温度と外気温の差が少ないほど、燃費低下を抑えられます。外気温との差が大きいとエアコンがより多くのエネルギーを使用するため、燃料の消費が激しくなるのです。
エアコンの設定温度は25℃前後にするのがおすすめです。
一方、設定温度を高くしすぎると、車内が十分に冷えず不快に感じる場合があります。25〜26℃程度に設定し、内気循環モードと併用すれば、冷房効率を高めながら消費エネルギーも抑えられるでしょう。