ハイブリッド車は、EV(電気自動車)の中の1つであり、HV・PHEVがあります。
HVとPHEVは、どちらも走りながらバッテリー充電が可能であり、PHEVはさらに外部からの給電も可能です。
このハイブリッド車の充電とは、搭載されている駆動用バッテリーと補機バッテリーのうち、後者を指します。補機バッテリーは、ハイブリッド車のハイブリッドシステムの起動や電圧の安定化を担う重要なものです。
この記事では、ハイブリッド車の充電の仕組みや補機バッテリーの重要性について解説します。
ハイブリッド車とは?
ハイブリッド車とは、電気自動車の1つであり、エネルギー源としてガソリンエンジンと電動モーターを搭載しています。
エネルギーを多く使う発進時や速度が低いときは電動モーターを使って走り、スピードが上がってきたり加速したりするときはガソリンエンジンを使って走ります。2つのエネルギー源を切り替えて使うことにより、燃費効率の良い走りが可能です。
また、燃費向上の他にも、ガソリンエンジンの使用が減る分、CO2や排気ガスの量を抑えられ、環境にもやさしい走りを実現します。
このようなハイブリッド車は、1977年にトヨタから世界初の量産型モデルとして販売され、今日に至るまで販売台数を伸ばしているのです。
ハイブリッド車には2種類ある
ハイブリッド車はエネルギー源が2つある車を指し、その中で大きく分類すると、HV(ハイブリッド車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)に分けられます。
この2つを分けるポイントになるのが、バッテリーの充電方法です。HVは走行中に発電される電力を使って、バッテリーを充電します。一方で、PHEVは走行中の充電の他に、外部電源からの充電も可能です。
HVは、走りながら充電できる燃費の良さやCO2や排気ガスを抑えた環境にやさしい点が特徴です。
ガソリン車と異なり、「走りながらバッテリー充電できる」というのは、回生ブレーキという技術を活用しているためです。通常、車が加速する際に使用したエネルギーは、減速時に摩擦熱として放出されてしまいます。
しかし、回生ブレーキ技術では、使用したエネルギーを放出するのではなく、電動モーターの充電にエネルギーを使うことで、放出してしまうエネルギーの回収ができます。
PHEVは、HVのように走りながらの充電の他に、外部設備からも充電できるのが特徴です。
PHEVの充電は、充電スタンド以外にも、家の電圧が対応可能であれば、家での充電もできます。HVのように走りながらも充電可能ですが、外部から給電することで、より長い距離をガソリンエンジンを使用せず、モーターだけで走ることが可能です。また、近場など生活圏内であれば、モーターのみでも走れます。
外部充電が可能という点では、EV(電気自動車)と同じですが、EVは長距離走行するときに定期的な充電が必要です。一方で、PHEVは外部充電の他に、走りながらも充電できるため、長距離走行時に充電を気にする必要がありません。
HVには3つの種類がある
HVは、ガソリンエンジンと電動モーターの組み合わせで、燃費の良い走りを実現します。そのようなHVには、「パラレル式」「シリーズ式」「スプリット式」といった3つのエンジンの組み合わせ方があり、それぞれの走りには、特徴が見られます。
ここでは、それぞれのエンジンの組み合わせ方と走行時の特徴などを見ていきましょう。
1つ目はパラレル式です。走行中の主なエネルギー源はガソリンエンジンであり、電動モーターは補助的に使用されます。
主なエネルギー源はガソリンエンジンですが、発進時や低速時の走行で電動モーターを使用します。車の発進時、低速度で走るときはエンジンへの負荷が大きく、エネルギー消費量も多いですが、このようなときに使用するエネルギー源を電動モーターに変えることで大幅な燃費効率の向上が可能です。
高速で走っているときは、主なエネルギー源をガソリンエンジンに切り替え、急加速が必要なときにはガソリンエンジンと電動モーターの2つを合わせて使うことで、ガソリン車と比較して燃費効率を大幅に向上させます。
2つ目はシリーズ式です。パラレル式と異なり、基本的に電動モーターのみで動きます。
電動モーターのみで走るため、走行感覚はEV(電気自動車)と同じようなものが得られます。また、ガソリンエンジンが走行に対して直接的な関わりがないため、エンジン音や振動が減少し、快適な乗り心地を味わえるでしょう。
一方で、ガソリンエンジンの役割は、電動モーターを動かすためのバッテリー充電です。充電に必要な発電にのみ使用されます。そのため、バッテリーの残存電力が少なくなると、ガソリンエンジンを使った発電が行われ、走行中に発電しながら消費したエネルギーを賄います。
3つ目はスプリット式です。これは、ガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせて走る方式です。
発進時や低速走行時では、パラレル式と同じように電動モーターを使用して走行します。高速で走っているときや急加速で高負荷をかけるときは、ガソリンエンジンと電動モーターを状況に応じて併用した走りが可能です。
これにより、ガソリンエンジンでは無駄なエネルギーを使ってしまう発進時や低速走行時は電動モーターを活用し、高速走行や高負荷をかける走行時にはガソリンエンジンと電動モーターを併用することで、効率的な運転を実現します。
HVとPHEVの違いとは?
ここまでは、HVとPHEVの基本やHVのエンジン組み合わせにより、どのような走りができるかを解説してきました。
HVもPHEVも効率的な燃費の実現と環境にやさしい走りが可能です。しかし、HVとPHEVには特徴的な大きな違いが1つあります。それは、外部充電ができるか、できないか、という点です。
ここでは、HVとPHEVの充電方法や外部充電の有無による差、日々の管理などについて、見ていきましょう。
まず、HVは外部からの充電機能はありません。そのため、走りながら生まれた電気エネルギーをバッテリー充電に利用します。
外部からの充電はできませんが、走りながらバッテリー充電できるため、バッテリーの電力不足を心配する必要がないのは、メリットの1つといえるでしょう。また、このような点から、ドライバーがバッテリーの充電作業をしなくても良いため、日々の管理や点検はしやすいともいえます。
ただし、車に乗る機会が少なく長期間エンジンをかけないでいると、バッテリーの充電が切れてしまいます。バッテリーが完全に切れてしまうとエンジンはかからないため、ガソリン車と同じようにブースターケーブルを使ったジャンプスタートの対処が必要です。
そのため、定期的にエンジンをかけて走ることを心がけ、点検はこまめにしましょう。
PHEVはHVと同じように走行中にバッテリー充電が可能ですが、外部からの充電も可能です。外部からの充電が可能であることにより、EV(電気自動車)のような滑らかな走行感や電動モーターを主で使った燃費効率の良さが特徴です。
外部からの充電については、PHEVの普及に伴い、充電スタンドの普及も進んでいます。しかし、必ずしも出掛け先の近くに充電スタンドがあるとはいえません。そのため、自宅にPHEVの充電が可能なコンセントや設備を設置しておくと良いでしょう。
自宅で毎日のように充電できれば、より燃費効率の良い走りを実現できます。ただし、前述のハイブリッド車と同様に、車に乗る機会の少ない人は、こまめにエンジンをかけて走ることを意識しましょう。
HV・PHEVにおける充電の仕組みとは?
HVとPHEVは、どちらも走りながら充電できるのが特徴です。
走りながらバッテリー充電するにあたっては、回生ブレーキという技術が用いられています。「回生」とは、「再び元の状態に戻る」ことを意味します。この言葉のとおり、車が走行中に生み出したエネルギーを単なる摩擦熱として放出してしまうのではなく、バッテリー充電のための電気エネルギーとして再利用することで、燃費効率の向上が可能です。
また、PHEVは外部からの充電も可能であり、モーターのみでの長距離走行も可能です。これによりガソリンの使用を最小限に抑えられます。
PHEVは外部充電が可能ですが、充電スタンドが出掛け先の近場にあるとは限りません。そのため、事前に出掛け先の近くに充電スタンドがあるかといった確認が必要です。
ハイブリッド車に必要な2つのバッテリーとは?
ハイブリッド車にはモーターを動かしたり、エンジンを始動させたりするメインの「駆動用バッテリー」と、ハイブリッドシステムやその他の部分を動かすために必要な「補機バッテリー」が必要です。
この2つのバッテリーはそれぞれ役割が異なるため、どちらもハイブリッド車には欠かせないバッテリーです。特に補機バッテリーはハイブリッドシステムを動かすための要といえるでしょう。
ここでは、ハイブリッド車に欠かせない駆動用バッテリーと補機バッテリーの役割や交換の必要性などについて、見ていきましょう。
駆動用バッテリーの主な役割は、電動モーターの駆動やバッテリー充電に活用されるジェネレータ、その他の電子部品への電力供給です。
駆動用バッテリーは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池からできています。
車の利用状況により異なりますが、短期的な視点での交換は必要ありません。ただし、バッテリーのライフサイクルは、期間では約8年~10年、走行距離では約10万キロメートルとされています。
補機バッテリーの主な役割は、ハイブリッドシステムの起動やナビゲーション、電動ウィンドウ、電動ドアロックなど、車内の電子機器を動かす他、電圧の安定化も担っています。
補機バッテリーは、鉛蓄電池からできています。補機バッテリーに鉛蓄電池が使用されるのは、鉛蓄電池の大きな起電力を持っているためです。
起電力とは、電池や発電機で電流を流そうとする際の力の強さを示します。起電力が大きい鉛蓄電池は、大量の電力を必要とするハイブリッド車に適しています。
駆動用バッテリーと比較して、補機バッテリーのライフサイクルは3年~4年と短いため、日々の点検と定期的な交換が必要です。
補機バッテリーはハイブリッド車の要
補機バッテリーは、前述のとおり、ハイブリッドシステムの起動に使用されています。その他に、車を使っていないときでもコンピューターやカーナビなどの電子部品のバックアップ電源として、バッテリーから電気を常に消費しています。
このように、車を使っているとき、使っていないときに関わらず、補機バッテリーは使われているため、こまめな充電が必要です。日常生活で車を使う機会が少ない人は、意識して車を走らせ、走行中のエネルギーを使ってバッテリー充電がされるよう心がけましょう。
補機バッテリーは、ハイブリッド車のハイブリッドシステムを起動したり、維持したりするために欠かせないシステムです。
補機バッテリーは走行中に生まれるエネルギーを活用した回生ブレーキ技術を使って充電が可能です。定期的に走り、常にバッテリーが充電されている状態にしましょう。
前述に記載のとおり、補機バッテリーは車を使用していないときにも、ハイブリッドシステムのバックアップ時に電力消費されています。そのため、長期間、車のエンジンをかけずにいると、バッテリーが上がってしまう可能性があるため注意しましょう。
補機バッテリーが上がってしまったときの対処法は、主に2つです。
1つ目は、救援車とブースターケーブルをつなげて、充電する方法です。ここでのポイントは、救援車は同じハイブリッド車ではなく、ガソリン車である必要があります。救援車とブースターケーブルをつなげて、数分間充電した後に、ハイブリッドシステムが起動するか試みます。
2つ目は、補機バッテリーに充電することです。車を長期間使用せず、放電によりバッテリーが上がってしまった場合、自宅に充電設備を持っていれば、充電することで、バッテリー上りへの対処は可能です。
補機バッテリーは、駆動用バッテリーと異なり、ライフサイクルが3年から4年といわれています。
そのため、補機バッテリーの交換タイミングは、次のことを目安にすると良いでしょう。
- 補機バッテリーの使用期間が5年以上経過している
- 充電不足アラートが頻繁に表示される
- 補機バッテリーが上がってしまう頻度が高い
これらに当てはまる場合は、補機バッテリーの劣化やライフサイクルを迎えていることが考えられます。
ガソリン車のバッテリー劣化は、エンジンがかかりにくかったり、ヘッドライトが暗かったりするといった事象から、バッテリーの劣化を推測できますが、ハイブリッド車の補機バッテリーの劣化では、そのような事象は起こりません。そのため、日頃のこまめな点検が重要です。
ハイブリッド車の充電の必要性
ハイブリッド車には、ガソリンエンジンと電動モーターの2つのエネルギー源が備えられています。2つのエンジンは、発進時や低速走行時などは電動モーターを使い、高速走行時はガソリンエンジンを使うなど、走行状況に応じて、使い分けられています。
2つのエネルギー源があり、走行時には自動で発電するため、充電について基本的には心配する必要はないでしょう。しかし、バッテリーに十分な電力がないと起こりえるリスクがあります。
ここでは、充電しなくても走行可能なハイブリッド車の仕組みと、十分な充電がされてないと起こりえるリスクについて、見ていきましょう。
HVとPHEVは、どちらも走行しながら補機バッテリーを充電することが可能です。これは前述のとおり、「回生ブレーキ」技術が使われており、スピード減速時に失われるエネルギーを電動モーターの充電に使用しているためです。
日常的に車を使用する人であれば、車を走らせる度に、発電された電力によりバッテリー充電がされるため、バッテリーの電力不足は起こりにくいでしょう。
一方で、日常生活の中で車の使用頻度が低い場合は、定期的に車を走らせ、バッテリー充電がされるように意識する必要があります。
バッテリーの充電が不足していると、走行中のパフォーマンスの低下や最悪のケースでは、ハイブリッドシステムが起動しないことが想定されます。
駆動用バッテリーが劣化していると、エンジンがかかりにくかったり、加速が鈍かったりといった事象が現れますが、補機バッテリーでは表面的な事象は起こりにくいため、気づきにくいのです。
リスクを回避する対応策としては、日々のこまめな点検や定期的に走行することが大切です。補機バッテリーのライフサイクルは3年~4年と短いため、使用年数が経っている場合は特に注意しましょう。