ハイブリッド車のバッテリー上がりにはいくつかの前兆があります。例えば、モニターに「充電不足」といった警告が表示されたり、燃費が悪化したり、スムーズにエンジンがかからなくなるといった症状が代表的です。
このような前兆を見落とさず、適切に対処することで、あらかじめ防止できる可能性があるのです。
この記事では、ハイブリッド車におけるバッテリー上がりの前兆を紹介します。さらに、バッテリーに関する基礎知識、バッテリー交換の目安、バッテリー上がりの原因・対処方法・注意点なども解説します。
ハイブリッド車のバッテリー上がりの前兆
ハイブリッド車は、バッテリー上がりの前兆とされるサインを見落とさず、適切に対処することで、バッテリー上がりを防げる可能性があります。
例えば、液晶モニターに「充電不足」のような警告が表示される場合は、バッテリーの状態が不良なサインです。対処しなければ、いずれバッテリー上がりを起こす可能性があるため、速やかに充電や点検することが重要です。
ただし、充電しても、短期間で消耗してしまうような場合は、バッテリーの交換が必要な可能性があります。
さらに、以下のような症状も、バッテリー上がりの前兆を示している場合があります。
- エンジンがスムーズにかからない
- 燃費が悪化した
- スムーズに加速できない
- 異音が聞こえる
これらの症状が見られる場合は、できるだけ早めに専門業者に相談し、点検を依頼しましょう。
ハイブリッド車のバッテリーに関する基礎知識
ガソリン車に取り付けられているバッテリーは1つですが、ハイブリッド車には2つ設置されています。それぞれ「駆動用バッテリー」と「補機バッテリー」と呼ばれ、異なる役割を果たしています。
ここでは、ハイブリッド車に設置されているバッテリーに関する、基本的な情報を解説します。
ハイブリッド車の動力源は、ガソリンで動かすエンジンと、電気で動かすモーターがあります。
駆動用バッテリーは、モーターを動かすための電力を供給する高電圧かつ大容量のメインバッテリーです。200ボルトを超える電圧を持っています。大抵の場合、リチウムイオン電池や、ニッケル水素電池が用いられており、大容量のためバッテリー上がりは比較的生じにくいとされています。
このバッテリーが担っている役割は、以下のように重要なものです。
- モーターを駆動する
- エンジンを始動する
- 走行時に電装品へ電気を供給する
ガソリン車には搭載されていないため「ハイブリッドバッテリー」とも呼ばれています。
補機バッテリーは、ガソリン車に取り付けられているものと同じ、12ボルトの鉛蓄電池です。ハイブリッド車においては、駆動用バッテリーの補助電源として機能します。
具体的には、以下のような役割を担っています。
- ハイブリッドシステムを起動する
- エンジンが停止している際のバックアップメモリー
- ハイブリッドシステムが停止中に電装品へ電力を供給する
- 電圧の安定化
このバッテリーは、ガソリンエンジンと電気モーターの2つの動力源を状況に応じて活用する「ハイブリッドシステム」に電力を供給しているのです。
ガソリン車のバッテリーは、基本的にはエンジンルーム内に取り付けられています。一方、ハイブリッド車は一般的にトランクあるいは後部座席の下部などに取り付けられているのです。
とくに、駆動用バッテリーは重量があります。そのため、バランスを考慮して、主にトランクまたは後部座席の下部など、車体の下方に搭載されているのです。
補機バッテリーも、通常はトランクもしくは後部座席の下部などに設置されています。なお、車種によってはエンジンルーム内に取り付けられていることもあります。
ハイブリッド車においてバッテリー上がりは、バッテリーの電気が不足することで生じます。つまり、バッテリーに蓄積された電気より多くの電気を使用すると、バッテリー上がりが起こるのです。
ハイブリッド車のバッテリー上がりは、主に補機バッテリーの電力が不足することで生じます。駆動用バッテリーも、長期間走行しない場合や、経年劣化が進んだ場合に、バッテリー上がりが発生する可能性があります。
しかし、駆動用バッテリーは大容量で寿命も長いため、バッテリー上がりを引き起こすケースは非常に少ないとされているのです。そのため、ハイブリッド車におけるバッテリー上がりの多くは、補機バッテリーの電力が不足することで引き起こされています。
バッテリーは暑さに弱いため、夏はダメージを受けやすい時期です。直射日光が当たるところや、換気が悪く熱気がこもったガレージは、バッテリーに負担がかかります。
駐車する場所は、直射日光が当たらず、通気性のよいところがバッテリーを長持ちさせるのに適しています。ガレージに駐車する場合は、換気を心がけ熱気がこもらないようにしましょう。
一方、冬はバッテリー上がりが多い時期といわれています。バッテリー液が冷えて効率的に充電できなくなるうえ、エアコンやシートヒーターを使用することでバッテリーの消費量が増加するため、バッテリー上がりが生じやすいのです。冬の時期は、とくに予防策を意識することが大切です。
ハイブリッド車のバッテリー交換の目安
バッテリー交換のタイミングは、駆動用バッテリーと補機バッテリーで異なります。ここでは、それぞれを交換する目安について紹介します。
ただし、走行距離や使用期間が目安に達していない場合でも、燃費が悪くなったり、異常なエンジン音が聞こえたりする場合は、注意が必要です。バッテリーの交換が必要なケースがあるため、早期に専門業者で点検を受けましょう。
駆動用バッテリーを交換する目安は、一般的に8年から10年程度、走行距離では約10万kmです。ただし、車種や製造された年、利用状況などによっても変動があります。
一般的には、製造された年が古いものや、車を使用する頻度が高い場合は、早期に劣化しやすく寿命が短い傾向があります。そのため、走行距離や使用年数だけでなく、バッテリーの状態や劣化の兆候にも注意しておくことが大切です。
補機バッテリーは、利用状況に応じて異なるものの、3年から5年程度が交換の目安とされています。
ハイブリッド車に取り付けられている補機バッテリーは、ガソリン車と同じ仕様である12ボルトの鉛蓄電池が用いられています。ガソリン車では一般的に2年から3年でバッテリーの交換が必要です。ガソリン車と比べると、ハイブリッド車の補機バッテリーは長い期間使用できます。これは、ハイブリッド車では、主に駆動用バッテリーが必要な電力を供給していることが理由です。
ハイブリッド車によくあるバッテリー上がりの原因
ハイブリッド車におけるバッテリー上がりの原因としては、以下のようなケースがあります。
- 電装品(ライト、エアコン、オーディオなど)の切り忘れ
- 半ドア状態での駐車
- ACC状態での長時間の電装品使用
- 一定期間走行しない
- 整備不良
- バッテリーの劣化や寿命
半ドアの状態では、警告灯が点灯し、電力を消費してしまいます。これが長く続くと、バッテリーが消耗し、バッテリー上がりを引き起こす可能性が高まるのです。
「ACC状態」とは、車の電源モードの「Accessory」を指します。車種によって異なるものの、多くの場合、ブレーキを踏まず、プッシュスタートボタンを1回押したときが、ACC状態です。
ACC状態では、カーナビやオーディオ、スマートフォンの充電など、一部の電装品を使用できます。しかし、エンジンは作動していません。この状態で長時間電装品を使用し続けると、電力を消費し、いずれバッテリー上がりを起こすのです。
また、長期間車を走行させないことも、バッテリー上がりを引き起こす一因です。車を使用していないときも、バッテリーは常に電力を消費しています。一方、バッテリーの充電は、走行することで行われる仕組みになっています。車に乗らない日や、走行距離が短い日が一定期間続いた場合、充電が追い付かず、バッテリー上がりを起こす可能性があるのです。
また、ドライブレコーダーを装着している車も、注意が必要です。とくに、駐車時の車両監視に対応しているドライブレコーダーは、エンジン停止時も常に電力を消費し続けます。長期間車を使わない場合や、駐車している時間が長い場合は、バッテリーの消耗が進行し、バッテリー上がりを引き起こす可能性があります。
未然に防ぐには、これらの原因を把握し、日頃からバッテリーを管理することが大切です。
ハイブリッド車のバッテリー上がりの症状
例えば、ハイブリッド車のバッテリー上がりには以下のような症状が見られます。
- エンジンがかからない
- キーレス操作でドアのロックを開閉できない
- ライトが点灯しない
- パワーウィンドーの開閉ができない
このように、エンジン始動や、電装品の作動に影響を及ぼします。これらの異常が見られる場合は、バッテリー上がりが疑われるため、早めに点検を受けましょう。
ハイブリッド車のバッテリー上がりを予防する方法
未然にバッテリー上がりを回避するためには、いくつかのポイントに注意を払うことが大切です。
とくに重要なのは、定期的に車を走行させたり、電装品の使いすぎを避けたりすることです。また、定期的に点検を受け、メンテナンスすることも、バッテリーの状態を保つうえで有効に働きます。
ここでは、ハイブリッド車のバッテリー上がりを予防する方法を、それぞれ解説します。
バッテリー上がりを回避するためには、定期的に車を走行させることが不可欠です。
バッテリーの充電は、走行中に行われる仕組みです。そのため、1週間から2週間に1回程度は、1時間以上走行させてバッテリーを充電しましょう。
走行できない場合は、コンスタントに充電することで、バッテリー上がりを防止できます。
電装品を使いすぎたり、切り忘れたりするとバッテリーの電力を消耗し、バッテリー上がりにつながります。とくに、エンジンが停止している状態で電装品を使用すると、バッテリーは充電されることがなく、消耗していきます。
エンジンが作動していないときは、エアコンやライト、オーディオなどの電装品を長時間使用しないよう注意しましょう。また、車を停止させたときは、電装品の切り忘れがないか、半ドアになっていないか確認することも重要です。
エコモードは、エンジンやエアコンの稼働を緩やかにして、電力の消費を抑えるモードです。エコモードを使用すると、バッテリーにかかる負担が減り、結果的にバッテリーの劣化を抑える効果があります。
エコモードの利用に加えて、定期的に走行したり、電装品の使いすぎや切り忘れを防いだりすることも重要です。これらを併せて実践することで、バッテリー上がりのリスクを最小限に抑えられます。
駆動用バッテリーは、自分で交換できません。200ボルトを超える電圧を使用しているため、交換作業には感電の危険が伴います。そのため、駆動用バッテリーの点検や整備を実施する人は「低圧電気取扱特別教育」を受講することが、労働安全衛生法によって義務付けられています。駆動用バッテリーの交換が必要な場合は、必ず専門業者に依頼しましょう。
補機バッテリーは、工具と新しいバッテリーを準備すれば、自分で交換できます。補機バッテリーは、一般的にトランクや後部座席の下部に取り付けられており、交換方法はガソリン車と似ています。ただし、感電事故を起こさないよう十分な注意が必要です。交換作業に不安を感じる人は、専門業者に依頼するとよいでしょう。
ハイブリッド車のバッテリー上がりが生じた際の対処方法
自身で行える対処方法として、ガソリン車とケーブルで接続する方法や、ジャンピングスターターで充電する方法があります。
ただし、適切に行わなければ感電のような事故につながるおそれがあるため、十分に注意が必要です。不安がある場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。
バッテリー上がりしたハイブリッド車と、ガソリン車を2本のブースターケーブルでつなぐと、エンジンを始動できます。これは、ジャンプスタートと呼ばれる方法です。
この方法を実施する場合は、ハイブリッド車と同じボルト数のガソリン車を接続しなければなりません。接続する車両のボルト数が一致していないと危険です。
接続場所や順番、エンジンをかけるタイミングなどの間違いがないように、十分確認する必要があります。正しい方法で行わなければ、事故につながる可能性があります。
自信がない場合は、専門業者に依頼する方が安全です。
ジャンプスターターとは、車のバッテリーを充電するための専用機器です。ハイブリッド車とジャンプスターターをケーブルでつなぎ、ジャンプスターターのスイッチを入れることで、車のバッテリーに充電できます。
ジャンプスターターを用いるときは、ボルト数と最大電流が車種に合っているものを選ぶ必要があります。一般的に、乗用車の場合は12ボルト、最大電流300アンペアが適切で、大型車の場合は24ボルト、最大電流700アンペア必要です。
ただし、車種によって異なる場合があるため、取扱説明書で確認しましょう。また、寒さの厳しい場所では、やや高いアンペア数に対応しているジャンプスターターを用いると効果的です。
長期間の放電やバッテリーの劣化によって、寿命が尽きている場合は、バッテリーを交換する必要があります。補機バッテリーを交換する目安は、利用状況によっても異なりますが、約3年から5年です。
バッテリー上がりが生じた際に、充電してもバッテリーの電力が回復しない、急速に減少する場合は、バッテリー交換が必要な可能性があります。
ハイブリッド車のバッテリー上がりに自身で対応するのが不安な人は、専門業者に依頼することをおすすめします。誤った方法で行うと、感電事故を引き起こす可能性があるため危険です。
専門業者に依頼した場合、応急処置としてエンジンを始動させる費用の目安は、1万円前後です。ただし、深夜や高速道路での対応、出張が必要な場合などは、追加の費用がかかることがあります。また、バッテリーを交換する必要がある場合は、バッテリー本体の費用もかかります。
自動車保険に加入している場合、費用が保険でカバーされることもあるため、事前に契約内容を確認しておくと安心できるでしょう。
ハイブリッド車のバッテリー上がりが生じた際の注意点
ハイブリッド車のバッテリー上がりが生じた際は、繰り返しエンジンをかけようとしてはいけません。何度もエンジンをかけると、バッテリーへの負担が大きくなり、より一層バッテリーが消耗してしまいます。
バッテリー上がりが疑われる場合は、冷静に対処することが大切です。
また、ガソリン車とケーブルで接続してエンジンを始動させた場合は、30分〜1時間程度走行して、バッテリーに電力を蓄える必要があります。この方法は、一時的な対処方法であるため、バッテリーに十分な電力を蓄えることはできません。
エンジンが始動したら、バッテリーを充電するための走行を忘れずに行いましょう。