新車試乗レポート
更新日:2024.05.20 / 掲載日:2024.05.20

「一粒で二度美味しい」ってこういうこと【AMG CLAシューティングブレーク】

文●工藤貴宏 写真●澤田和久、内藤敬仁

 ちょっと前の記事で「実はメルセデス・ベンツ CLAシューティングブレークが好き。理由はデザインが美しくて、使い勝手もいいから。まさに才色兼備」なんていう話を書いたわけですが、正直にいえばCLAシューティングブレークのなかでもいちばん欲しいのはもっとも熱い「メルセデスAMG CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレーク」。それにしても長い車名ですね。

コンパクトなボディに高度な技術を凝縮したCLAのAMGモデル

CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレーク

 メルセデスAMGというのは超高性能モデルに与えられるサブブランドで、「45」というのはそのエンジン出力を自然吸気エンジンで例えると排気量4.5Lに相当するから。「S」はそんなメルセデスAMGの中でもより刺激の強いモデルに与えられる称号です。そして「4MATIC+」は、電子制御のセンターデフを使って前後駆動力配分を積極的にコントロールする高度な仕掛けの4WD(メルセデス・ベンツは4WDを4MATICと呼ぶ)を採用しているという意味。積極的に前後駆動力配分をコントロールする理由はもちろん、走行性能を高めるためです。

 というわけでメルセデスAMG CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレークとは、CLAシューティングブレークに高出力エンジンと高性能4WDを組み合わせたハイパフォーマンスモデルというわけ。

CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレーク

 エンジンは排気量わずか2.0Lのターボだけど、「たったの2.0L」なんて侮ることなかれ。最高出力421㎰もあってちょっと信じられない領域ですから。日本車でいえば排気量3.0Lのターボエンジンを積む日産のスポーツカー「フェアレディZ NISMO」の最高出力が420㎰だから、だいたいそれと同じくらい。それをわずか2.0Lの排気量で実現しているのだから凄すぎませんか?

 停止状態から時速100キロに到達するまでの加速に必要な時間はたったの4秒。最高速度は270キロ。とんでもない俊足ですね。

CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレーク

感情をゆさぶるAMGの2Lターボユニット

CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレーク

 でも、実際にドライブして心に響くのはそんな“わかりやすい速さ”とは別の特徴。ドライバーの感性に訴えてくるエモーショナル感です。エンジンは低音が太く響く排気音もシフトアップ/ダウン時に発生する“バババッ”という炸裂音の演出も最高。テンションを上げてくれますねぇ。

 そして刺激を求める運転好きなら絶対に恋に落ちるであろう、エンジンのフィーリング。一般的に2.0Lターボエンジンは低回転域のトルクが太くて扱いやすく実用的な特性なのですが、CLA A45Sでは一味違う。いや結構違う。

 エンジンは回転を上げるほど、すなわちアクセルを踏み込めば踏み込むほど元気が良くなりパワーがさく裂。まるでレーシングカーみたいにレスポンスが鋭く、高回転までブン回すのが超気持ちいいのです。その際の、一気にエネルギーを放出するような感覚がたまりません。誇張抜きにこんなに刺激的な4気筒ターボエンジンははじめて。

 ドライバビリティは、シフトアップのキレも加速のつながりも、そしてエンジンの回転落ちの早さも素晴らしくて運転が楽しすぎる。まるでレーシングカーみたいですよ。それを低回転域の扱いやすさの犠牲なしにやっているんだから驚くばかりです。

 そんな動力性能に曲がりたい方向へスッと向きを変えるハンドリングも含めて、乗り味と性能はまるでスーパースポーツカーです。

一流のスポーツカーなのにファミリーカーとしても優秀

CLA 45 S 4MATIC+ シューティングブレーク

 でも、そんな走りの性能だけで終わらないのがCLA 45Sの面白いところ。走行モードを「コンフォート」へと切り替えた瞬間にエンジンの刺激はパッと身を潜め、乗り心地もグッとマイルドになっておしとやかに。つまり快適に移動できるクルマへと大きく“キャラ変”するというわけ。

 ワゴンボディのCLAシューティングブレークはキャビンに加えて荷室も広くて実用的だから、ファミリーカーとしてのマッチングも最高です。

 スポーツカーとしての走りも凄いけど、実用的なファミリーカーとしても不満がない。CLA 45Sはそんな2面性が凄いというわけで、こういう二重人格なら大いにアリじゃないですか。

 ちなみにCLAシューティングブレークのAMGモデルにはCLA45Sのほかに「CLA35 4MATICシューティングブレーク」というのもあって、こちらは同じAMGモデルながら最高出力は305㎰とちょっと控えめ。とはいえこちらもかなりの速さと刺激で、たしかに“35”でも十分だと思います。でも“45S”と乗り比べると、やはり刺激の部分で45Sのほうがスパイス多め。そこまで求めないのであれば35で十分ですが、骨の髄までしゃぶり尽くしたいというのであればやっぱりマイスターが手組みしたエンジン(35は手組みではなく一般的な組み立て方法)を積む45Sが欲しくなっちゃいますね。

2023年のマイナーチェンジで進化した内容

 そんなCLA 45Sは2023年秋にマイナーチェンジを施していて、最新モデルはヘッドライトまで含めて顔つきがひときわシャープになってリヤコンビネーションランプもより精悍なデザインへとリファイン。新デザインの19インチ鍛造ホイールも履いています。

 また、インテリアは新世代のステアリングホイールを採用し、最新のインフォテイメントシステムも搭載。Burmesterのプレミアムオーディオや360度カメラシステムも標準装備となりました。

まとめ

 本当は実用的なファミリーカーと自分が楽しむための超高性能スポーツカーの2台が欲しいけれど、駐車場なども都合もあるから1台しか持てない。クルマ好きの中にはきっと、そんな人もきっと多くいるでしょう。メルセデスAMG CLA45S 4MATIC+シューティングブレークは、ぜひそんな人におススメしたいクルマなのです。

 超高性能スポーツカーの走りの性能を備えつつ、実用的で快適なファミリーカーとしても使える「一粒で二度おいしい」状態。こんな二重人格(二重車格?)なら大歓迎ですよね。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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