徹底分析中古車相場
更新日:2018.11.15 / 掲載日:2017.12.21
【日産 GT-R】中古車相場の徹底調査で分かったこととは…?
ナンバープレートはハメ込み合成です。
世界を相手に開発された渾身のリアルスポーツカー
2007年10月、東京モーターショーで日産 GT-Rが初公開された。価格、性能、デザインのどれを見ても既存の国産スポーツカーを凌駕するもので、大きな話題となったのを覚えているひとも多いはず。今年(2017年)は、日産 GT-R生誕10周年という節目の年。当時は高嶺の花だったGT-Rは、現在中古車ではどのくらいの価格なのか、今回はグーネットのデータを解析し、詳しく紹介していく。
1999年1月に発表されたR34型。スカイラインGT-Rの最終章を飾る1台。
しかしその前に、GT-Rとは一体どんなクルマなのか、ここで復習しておこう。「GT-R」とは、かつてスカイラインに設定されていたグレードの名称で、最初に登場したのは1969年のことである。3代目スカイラインに設定された最初のGT-R(PGC10/KPGC10型)は、プリンス R380というレーシングマシンに積まれたエンジンをロードカー(公道走行車)向けに仕立て直したS20型ユニットを搭載していた。その理由はただひとつ、ツーリングカーレースで勝利するため。つまり、スカイラインGT-Rはモータースポーツの申し子とも言える硬派な存在だったのだ。その高い性能はライバルを圧倒し、数多くの勝利を収めている。その後1973年に、ベース車のフルモデルチェンジで次世代のスカイラインGT-R(KPGC110型)が登場。しかしこちらは排ガス規制のあおりを受け、モータースポーツシーンに投入されることなく生産を終えてしまう。ここまでのスカイラインGT-Rは、第1世代と呼ばれている。
GT-Rという名前が再び世に現れたのは、それから16年も経った1989年のこと。8代目スカイラインに設定された新世代スカイラインGT-R(R32型)は、当時盛んだった全日本ツーリングカー選手権(グループA)への参戦を目的に開発された。エンジンはRB26DETTという専用開発された高性能な直列6気筒ターボを搭載し、アテーサE-TSなど先進の電子制御装置を備えたスポーツ4WDモデルとして、またもやモータースポーツの世界で多大な成果をあげた。その後ベース車のモデルチェンジにより、R33型、R34型へと進化を続けていたが、またもや排ガス規制などのあおりを受け、2002年に生産が終了。R32型~R34型までが、スカイラインGT-Rの第2世代である。
スカイラインGT-Rの歴史は、以上をもって幕を下ろした。しかし冒頭で述べたとおり、2007年10月、日産はまったく新しい世代の高性能スポーツカーとしてGT-R(R35型)を発表。スカイラインのグレード名から独立し、日産のひとつのモデル名としてGT-Rが復活したのである。ライバルは、ポルシェやフェラーリなどの欧州プレミアムスポーツカーたち。またGT-Rはモータースポーツの申し子であることは昔と変わらずで、数々のレース車両が製作され、いまも現役で活躍中である。
1969年2月に発表された初代スカイラインGT-R。写真はその翌年に登場した2ドアハードトップ仕様。
1973年に登場したKPGC110型。「ケンメリGT-R」という愛称で親しまれたが、レース参戦はしなかった。
1989年5月発表のR32型。90年代の国産スポーツカーブームを牽引した1台で、グループAで活躍。
1995年1月発表のR33型。先代よりサイズが大きくなり、ファンのあいだで賛否両論に。しかしニュルでのタイムはこちらが速かった。
モデルイヤーで中古車相場が大きく変わる
スポーツカーは年々改良が加えられることが多く、GT-Rもその例外ではない。ここでは、改良の推移とその中古車相場、在庫数などを追ってみる。
●2007年10月発表モデル/中古車平均価格:537万円(在庫167台)
GT-Rを発表。VR38DETTと呼ばれる3.8L V6ツインターボエンジンを搭載し、最高出力は480馬力を実現していた。
●2008年12月発表モデル/中古車平均価格:710万円(在庫16台)
エンジン組み立て精度アップ、コンピューター制御の改良により最高出力は485psに向上。新構造ショックアブソーバーも与えられた。
●2009年10月発表モデル/中古車平均価格:685万円(在庫16台)
フロントサスのショックアブソーバーとスプリング精度を向上させて乗り心地を改善。リヤサスも剛性が高められるなど、足まわりを中心に改良を受けた。
●2010年10月発表モデル/中古車平均価格:686万円(在庫17台)
2011年モデルが登場。ブースト圧やバルブタイミング、空燃比を変更することで最高出力は530馬力に向上。フロントまわりの形状も小変更。
●2011年11月発表モデル/中古車平均価格:711万円(在庫20台)
2012年モデルが登場。インテーク吸入効率の向上、エキゾースト排気効率の向上などにより最高出力を550馬力に向上。ボディ剛性も強化。
●2012年11月発表モデル/中古車平均価格:826万円(在庫32台)
2013年モデルが登場。高出力用インジェクターの採用、過給バイパスに専用開発のオリフィスを追加するなどし、レスポンスを向上させた。
●2013年11月発表モデル/中古車平均価格:818万円(在庫21台)
2014年モデルが登場。LEDヘッドランプ、LEDポジショニングランプ、新デザインリヤコンビランプを採用。ボディ剛性、足まわりも改良。
●2014年11月発表モデル/中古車平均価格:956万円(在庫44台)
2015年モデルが登場。ショックアブソーバーの減衰力特性やECUチューニングの改良を実施。タイヤ材質や内部構造なども見直された。
●2016年7月発表モデル/中古車平均価格:1156万円(在庫12台)
2017年モデルが登場。Vモーショングリルを採用するなど、外観をリニューアル。気筒別点火時期制御の採用により、最高出力は570馬力となった。
※中古車平均価格は、グーネット2017年9月6日現在のデータによる。また、NISMOは集計から除く。
上のデータを見ると、2008年12月までに販売された初期型が、もっとも在庫が豊富かつ安いことがわかる。それから2012年モデルまでは、どの年式でも物件数は同じ程度で、平均価格は700万円前後で推移する。さらにその後、年式が新しくなるにつれ相場が急激に上がっていき、最新の2017年モデルにおいては、新車販売価格とほとんど変わらない価格帯となる。
つまり、ある程度予算がかぎられているなら、現実的に購入可能な年式は2008年までの初期型といえるかもしれない。またこの年式なら500万円を切る物件もちらほら存在していることも覚えておきたい。なお、走行距離はこの年式だと3万km以上がほとんど。もし低走行な個体がほしいなら、十分な予算を用意して、高年式をねらう必要があるということだ。
GT-Rのベストバイのグレードは?
GT-Rは、基本的にグレード間の性能差はほとんどない。エンジンもすべて共通で、装備内容が異なる程度。まずはグレードの概要と中古車動向を見てみよう。
●ベースグレード/中古車平均価格:608万円(在庫33台)
いわゆる素のGT-Rがこちら。快適装備などはかぎられるものの、メカニズムはどのモデルも基本的に共通だから、こだわりがなければこれで十分。
●ピュアエディション/中古車平均価格:799万円(在庫47台)
上記のベースグレードが、2010年の改良で「ピュアエディション」に名称変更。エントリーモデルという位置付けは同じだ。
●ブラックエディション/中古車平均価格:696万円(在庫103台)
ブラック基調のシートが与えられた中級グレードで、物件もそこそこ流通している。
●プレミアムエディション/中古車平均価格:673万円(在庫152台)
専用仕立ての室内に加え、BOSEサウンドシステムなど豪華装備が与えられた上級グレード。
●スペックV/中古車平均価格:在庫なし
2009年~2011年まで設定されていたスポーツグレード。カーボンセラミックブレーキ、専用サス、レイズ社製ホイールなどが装着される。
●トラックエディション エンジニアードbyニスモ/中古車平均価格:在庫なし
2014年に登場したスパルタンなモデルがこちら。NISMO製パーツが装着され、サーキット走行に適した1台。
●エゴイスト/中古車平均価格:在庫なし
2010年~2013年に設定された豪華仕様。スペックV同等の装備に加え、自分好みの仕立てが可能なインテリア、BOSEサウンドシステムなど、よりプレミアム感を高めたグレード。
※中古車平均価格は、グーネット2017年9月6日現在のデータによる。また、NISMOは集計から除く。
もっとも豊富なのが、上級グレードの「プレミアムエディション」。次いで「ブラックエディション」、「ピュアエディション」、ベースグレードの順に少なくなる。「エゴイスト」や「スペックV」などの生産終了した特殊グレードは、ほとんど流通していないようだ。
GT-Rというクルマは、レースにも出場可能なほど高性能を持つが、オーナーの用途を見ると、ほとんどが街乗りに使われる傾向にあるのがわかる。ストイックなグレードよりも豪華装備が充実した「プレミアムエディション」が豊富なことがなによりの証拠。だから、過酷に扱われた個体は少なく、第2世代GT-R(R32~R34)のように改造車も少ない。これは購入を前向きに考えているひとにとって、安心の材料だと思われる。
ベストバイグレードは、メカニズムに大差がないため用途や好みによるところが大きく、それよりもモデルイヤーによる性能差が大きいため、答えを出すのが難しい面がある。強いて言うなら、低価格の物件が豊富にある初期型の中心グレード「プレミアムエディション」と言ったところだろうか。
サーキット走行が前提ならNISMOという選択肢も
最後に、GT-Rシリーズの頂点に位置するNISMOにも触れておこう。NISMOは日産車に設定されるスポーツグレードの名称だが、GT-Rにおいてはベース車から大幅なパワーアップが施され、性能も価格もワンランク上に位置している。徹底的にエンジンチューンが施され、大容量タービンを装着することで最高出力は600馬力を達成。ボディ剛性はさらに強化され、公道よりもサーキットが主戦場となる。2017年モデル以降はショックアブソーバーが改良されて公道でも楽しめるようになったものの、標準のGT-Rと比べるとスパルタンなことに変わりはない。
グーネットのデータベースには、26台の物件が登録されている(2017年9月現在)。平均価格は1726万円で、もっとも安い個体でも1400万円と破格の高さ。ただし多くは1万km未満の低走行車ばかりで、登録のみでほぼ未使用状態のものも多い。一般論ではだれにでもオススメできるものではないが、サーキット走行前提だったり、コレクター目的で購入するのはアリかも。
全体をまとめると、登場から10年経っても、GT-Rはあまり安くなっていないというのが結論。ただし、完全に夢のクルマというわけでもなく、頑張れば手が届くゾーンにあるということも忘れてはならない。そして、この手のクルマは待てば待つだけ安くなるというものではなく、おそらくこの先10年経っても大幅な値崩れは期待しないほうがいい。ほしいときが買い時、それがGT-R購入の秘訣だ。