輸入車
更新日:2022.09.30 / 掲載日:2022.09.30
JAGUAR XF SPORTBRAKE/気になる中古車【試乗判定】
文●竹岡 圭、ユニット・コンパス 写真●ユニット・コンパス
※中古車参考価格はすべてグーネット2022年9月調べ。
(掲載されている内容はグーワールド本誌2022年11月号の内容です)
※ナンバープレートはすべて、はめ込み合成です。
一般ユーザーが乗っている使用過程車をテストすることで、新車ではわからない実力をチェックするのがこのコーナー。売れ線中古車の本当のトコロを厳しい目線でインプレッション! 果たしてその結果やいかに!?
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自動車ジャーナリスト【竹岡 圭】
カーライフのサポーターとしてTVやラジオなどでもおなじみの人気自動車ジャーナリスト。全日本ラリーにも参戦経験を持つ。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
ジャガーらしさを備えたスポーツワゴン
国産車には少なくなったスタイリッシュなワゴン
編集部●気になる中古車を実際に試乗することで、その実力をチェックしようというのがこのコーナー。今回は、ジャガーの高級スポーツワゴンであるXFスポーツブレイクが登場です。お借りした車両は2L直4ディーゼルターボを搭載する「プレステージ」で、走行距離は約2万2000kmです。
竹岡●今日はまたおしゃれなクルマだね。そういえば、ワゴンって国産車だと最近少ないじゃない。昔はレガシィにカルディナ、アコードとか、カッコいいクルマがたくさんあって人気あったのにね。
編集部●国産の新車で販売しているワゴンといえば、カローラスポーツ、レヴォーグ、マツダ6、アウトバック……おそらく全部で10モデルはないと思います。
竹岡●私の世代だと、若かった頃は家のクルマの多くがセダンで、それで遊びに行くのはあんまりカッコいいイメージじゃなかった。そこに現れたワゴンは、スタイルも商用バンとは全然違ったし、走りもよくて90年代にはブームになった。いまは家のクルマがミニバンになって、憧れがSUVに移ったけど、ワゴンはワゴンでよいところあるのよね。
編集部●欧州車はワゴンの選択肢が豊富ですね。3シリーズなどのDセグメントや今日のXFが属するEセグメントのクルマは、多くがセダンとワゴン、そしてSUVという車型で展開されています。
竹岡●XFスポーツブレイクって、スタイルがシュッとしてスマートだから一見わかりにくいんだけど、全長約5mもある大きなクルマなんだよね。それでワゴンとなるとかなり希少価値があるんじゃないかな。
編集部●そうですね。国産車に同クラスのライバルはいません。トヨタが新型クラウンでエステートを復活させました。SUV以外の選択肢として、上級ワゴンは見直される傾向にあるのかもしれませんね。さて、そんなXFスポーツブレイクが日本に導入されたのは2017年11月のことで、セダンに遅れること2年というタイミングでした。
竹岡●XFスポーツブレイクはワゴンといってもキャラクターがよりスポーティより。ボディの75%がアルミだったり、サスペンション形式も走りを意識していたり、高級車でも走りにこだわるのがジャガーらしい。
編集部●パワートレインは大きくわけて3タイプ。2L直4ターボ(「ピュア」200馬力・「プレステージ」250馬力、「Rスポーツ」300馬力)、3LV6スーパーチャージャー(「S」380馬力)、2L直4ディーゼルターボ(180馬力)です。トランスミッションは8速ATで、ガソリンモデルは後輪駆動、ディーゼルは後輪駆動と全輪駆動が存在します。
竹岡●そうそう! ジャガーってけっこうグレードがたくさんあるんだ(笑)。それで今日試乗できるのは、ディーゼルの後輪駆動180馬力ね。おそらくいちばん売れたグレードじゃないかな。
編集部●2021年のマイナーチェンジで内外装がリフレッシュされ、エンジンも新しくなりました。装備類も見直され、インフォテインメント系や運転支援が強化されています。さて、そろそろ試乗に行きましょう。
「SUVよりもセダンに近いスタイリッシュな造形とスポーティな走りが魅力」
DETAIL CHECK
走りの一体感はセダン同等、それでいて使い勝手のよさは圧倒的
編集部●試乗から戻りました。運転してみてどうでしたか?
竹岡●やっぱりワゴンにはワゴンのよさがある。SUVはアイポイントが高くて運転しやすいけど、クルマとしてはどうしても重心が高くなって、速度が上がってくるとクルマの動きが大きくなってしまう。でもXFスポーツブレイクは、本当にセダンと同じような感覚でコーナーも走れるから安心感があるし、長距離を移動するなら絶対に楽。グーワールドの読者はオトナ世代が多いから、クルマの走りにもこだわるだろうし、セダンのよさも知ってるじゃない。そういう人だったら気に入ってもらえると思うよ。
編集部●なるほど。欧州の高速道路ではこういう高級ワゴンをよく見かけますが、やはり移動距離が長くて平均速度も速いですものね。
竹岡●それとジャガーというブランド力の高さは魅力的。ゴルフ場でも高級ホテルでも気にせず乗っていけるステータス性がある。それでいてあまりギラギラした印象がないのも女性的にはうれしいところ。中古車市場はどうなってるの?
編集部●正直に言いますと物件数は非常に少ないです。グーネットの登録は50台以下でした。今日と同じようなクルマがだいたい400万円前半で探せる状況です。
竹岡●そうだよね。ちょっと印象が薄いというか、存在が忘れられがちなクルマではあるよね。だからこそクルマ通な雰囲気も出せそう。
編集部●後席の乗り心地もよかったです。セダンより足が柔らかくて。
竹岡●これをサラッと乗りこなせたら、かなり素敵なオトナでしょう。
ジャガーらしいデザインを最新技術で表現
ジャガーらしさをシンプルかつモダンに表現したインテリア。タッチ操作に対応するインフォテインメントディスプレイやACC、自動ブレーキなど装備も充実。後期型ではセレクターがダイヤル式から電気レバー式に変更された。
ゆったりとくつろげる室内 乗り心地もよく快適
ボディサイズを生かした広々とした快適な室内空間はセダン、スポーツブレイクに共通する美点。後席は、ルーフが荷室まで伸びていることで、セダンよりも快適に感じられる。一方で静粛性についてはセダンに軍配が上がる。
エンジンは大きく3種類 グレードでパワーが異なる
前期モデルは2L直4ターボ(200馬力、250馬力、300馬力)、3LV6スーパーチャージャー(380馬力)、2L直4ディーゼルターボ(180馬力)。後期型ではエンジンを改良し、パワーを引き上げながら燃費を低減している。
SUVよりも広い荷室空間 床も低く積み下ろしも楽
ラゲッジルームの容量は、写真の標準状態で565L。3分割可倒式のリアシートを折りたたむと最大で1700Lもの空間が出現する。荷室には金属製のレールと可動式のフックが備わり、重たい荷物などを任意の位置で固定できる。
試乗判定レビュー
竹岡 圭
ポジショニング[10点]
昨今のSUV流行りの時代においては、かなりの希少価値の高いモデルです。このサイズのワゴンって、日本車では本当に少なく、輸入車でもかなり少なくなりましたよね。とはいえ、高速走行性能や荷物の積載性では、ワゴンのほうが優れているのは間違いないし、高級ホテルのエントランスの前に乗り付けても見劣りしない上質感はさすがです。
装備[9点]
存在自体も知る人ぞ知る的なところがありましたが、装備的にも特別コレ!といった特筆モノはありません。でも、とにかくこの広々としたサイズ感が魅力ですよね。加えて、質感の高さはさすがジャガーといったところで、座っているだけで上質な雰囲気が味わえるところはさすがです。ダイヤル式のシフトレバーは個人的には使いやすいと思います。
走り[9点]
人も荷物も載せてロングドライブという性格を考慮したのか、サルーンをゆったりと仕上げた雰囲気。固さとフワッと感が路面に合っているときはいいのですが、ちょっとタイミングやバランスが崩れると、この味わいに慣れるまでは気になる方もいらっしゃるかも。少々ハイスピードよりのほうがしっくりくるので、高速移動が多い方向きでしょうか。
グーワールド 編集部
ポジショニング[10点]
ドイツ御三家と同じような高級セダン・ワゴンというジャンルであっても、生活感のない洒脱な雰囲気が漂うのはジャガーというブランドの特徴でしょう。特にXFスポーツブレイクは、乗り手のアクティブなライフスタイルを想像させるワゴンボディですから、ハイソ感はさらに高いです。惜しいのは中古車の台数が少ないこと。
装備[9点]
登場したのが2017年末ということもあり、前のクルマに追従するクルーズコントロールや自動ブレーキといった先進安全装備は全車に標準。ジャガー・ランドローバー車はインフォテインメントに力を入れていて、インテリアは物理スイッチも少なく、すっきりとシンプル。エンジンをかけると飛び出るシフトレバーは後期型ではレバータイプになります。
走り[9点]
走りでセダンと大きく差が出たのが、スポーツブレイクではリアにエアサスを備えること。これは重い荷物を積んだ状態でも車高を一定に保つため。同時に、エアスプリングのおかげで、リアからの突き上げがおだやかに感じられるようになっています。より大人数で出かける機会の多いクルマだけにこのセッティングは納得。オトナのワゴンなのです。
[JAGUAR XF]ハイテクで高みを目指したラグジュアリーなスポーツセダン
2015年に2代目へとフルモデルチェンジしたXF。ボディの75%にアルミを使うことで軽量化と高剛性を両立し、優れた走行性能と快適性の両立を実現している。現行型はガソリン、ディーゼルともに2L直4ターボとなった。
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