昭和のムードが漂うのは承知で、あえて日本を代表する「大衆車」と呼びたいのがカローラ。国内市場においては、1969年から2001年まで33年連続でベストセラーカーとなった輝かしい実績を持つ。
そして世界に目を向ければ、2013年にグローバル累計販売4000万台(うち国内は約1225万台)を達成している。2014年時点のVWゴルフの生産累計が3000万台なのだから、そのスケールの大きさがわかるだろう。まさに世界のベストセラーカーと言っていい。
とはいえ、カローラの道のりがいつも順風満帆だったわけではない。とくに21世紀に入ると、「日本のカローラ」と「世界のカローラ」のニーズの違いが明白なものとなる。わかりやすいのはボディサイズの設定だ。日本では「5ナンバーサイズ」を維持することが相変わらずマストな命題だが、海外のCセグメント市場で戦うにはもはやボディのワイド化は避けられない要件となった。
2006年に国内投入された10代目から、国内モデルと海外モデルは別の道を歩むことになったが、それは「折衷案」では世界のカローラファンを満足させることができなくなったからだ。これを契機に、セダンには「アクシオ」のサブネームがつく。ちなみにワゴンモデルは、9代目の時点で「フィールダー」のサブネームを導入し、ひと足早く過去のカローラとの決別を果たしていた。
10代目のプラットフォームは先代の流用だったが、日本の交通インフラとユーザーニーズに重きを置いて、「5ナンバーサイズを守る」と決断したのはいかにもカローラらしい。幅広ボディだと運転や駐車がしづらいというだけでなく、「5ナンバー」には「身の丈にあったクルマ」という記号性もあるからだ。
いつの時代も、庶民感覚を大切にするユーザーと真摯に向き合い、進化を続けてきたのがカローラというクルマ。主力のユーザーがファミリーからシニアや法人に変わっても、カローラの方向性にブレはない。
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