新型車比較・ライバル車対決
更新日:2018.12.01 / 掲載日:2017.11.30
夢の先取り大対決! SUZUKI クロスビー
見た目はハスラー風だがソリオ&イグニスがベース
パッと見の印象は拡大版のハスラーに思える。だが開発のベースはソリオ&イグニスである。これはクロスビーの特徴を知る上で見逃せないポイントだ。
外観を見れば一目瞭然だが、ハスラーと同じように本格SUVの性能を狙ったモデルではない。日常とアウトドアレジャーをクロスオーバーさせたモデルである。フロントマスクを筆頭に立体感や面の抑揚にこだわった外観デザインで上級クラスのゆとりを演出しているが、キャラの方向性はハスラーと同じだ。
タウン&レジャー向けのクロスオーバーSUV、あるいはワゴン的というのがクロスビーである。ワゴンとしての使い勝手が大きな見所であり、ユーティリティ志向ではソリオのSUV版とも言える。
外観の印象からはあまり分からないが、キャビンスペースはソリオに匹敵する広さを持つ。スモールカークラスでは最大級であり、ゆとりの室内高を活かしたシート設定は、足もとまわりや頭上空間の余裕をもたらし、見晴らしや開放感にも優れている。スライドドアには及ばないが、大きく開くドア開口部がもたらす乗降性のよさも長所であろう。さらに荷室の大きなアンダーボックスは取り外し可能なバケツ型。こんなところはいかにもスズキらしい。サブトランクとしての利便性はもちろん、車外へ荷物を運ぶ際にも重宝する。積極的に生活を楽しむクルマに長けた、スズキらしい設計だ。
パワートレーンにはバレーノから展開されている3気筒の1Lターボをベースとしたマイルド・ハイブリッドが搭載されるようだ。1.2L NAエンジンでハイブリッドを展開するソリオやイグニスがあるだけに、このエンジンのみの設定になるかは分からないが、性能の余裕と燃費面を考えると自然な選択だ。ダウンサイジングしたターボエンジンはクロスビーのコンセプトに似合いである。
<主要諸元>
●全長×全幅×全高(mm):3760×1670×1705 ●ホイールベース(mm):2435 ●パワーユニット:996cc直列3気筒インタークーラーターボ(マイルドハイブリッド) ●トランスミッション:6速AT
サイドガードやアーチフェンダー、バンパーなどの魅せるパーツはハスラー風だが、明らかにどっしりとした印象。ハスラーとの全幅の違いは20cmほどだが、それ以上の差を感じる。
プロトタイプに装着されていたタイヤのサイズは175/60R16。本格的なオフロード走行は厳しいが、ダート路などを走るには十分な性能を持つ。
東京モーターショーで展示された車両は参考出品車だが、限りなく完成車に近い状態。加飾パネルでデコレートされたインパネまわりは、スズキの小型車らしく使い勝手は良さそう。
後席がしっかりとした造りのわりには、通常時の荷室スペースもある程度は確保される。シートを格納すれば相応に容量が拡大するなど、レジャー車としての適正も高い。
サイズ以上の居住性を持つことは明白。特にスライド機構も与えられた後席の余裕は十分すぎるほどで、短時間ならば5名フル乗車もこなしてくれるだろう。
SUZUKI クロスビー×SUZUKI ハスラー×SUZUKI ソリオ
クロスビー
見た目はハスラーの兄弟車だが、実はユーティリティや使い勝手はソリオ譲り。両車のイイトコ取りで生まれた美味しいモデルである。パワートレーンは1Lターボ+マイルドハイブリッドと最新仕様。価格次第ではこのジャンルの潜在顧客を全て奪える実力を秘める。ハスラー
2014年に発売されたハスラーは、アウトドアユースに特化したキャラクターで大きなヒットを飛ばした軽SUVだ。最近は勢いも落ち着いているが、装備類の充実と安めの価格設定のおかげもあってか、月に4000 ~ 5000台は売っている、なかなかの人気ぶりは未だ健在。ソリオ
トール系ミニバンだが、新世代シャシーやハイブリッドシステムなど、実はクロスビーとの共通点も多い。直接のライバルとは言い難いが、ふと気になるユーザーも多いかもしれない。ちなみに毎月4000台近くも売れ続けている、スズキのコンパクトクラスのトップセラーでもあるのだ。
キャラの違いは違えどもどれもなかなかの万能選手
クロスビーの全長は3760mmとソリオとほぼ同じで、全幅は1670mmと若干ワイド。全高は1705mmとちょっと低い。ホイールベースはイグニスと共通で、ソリオよりも45mm短い。ハスラーはクロスビーに対して全長が40cmほど短く、全高はほぼ同等。3車とも1・7m前後の全高をによる室内高の余裕を活かして、居住性を向上させている。
一回り小さなハスラーも、後席の足もとや頭上空間に大きな差はない。しかし、ハスラーは後席をゆったり座れる位置にセットすると有効な荷室スペースがなくなってしまうが、クロスビーは小旅行に対応できるくらいの容量は確保される。左右の席の間隔が広いこともあり、4名乗車時のユーティリティと寛ぎは1クラス上だ。
だが、ソリオとの比較ではクロスビーが勝る要素はない。何しろソリオはスペースとユーティリティのスペシャリストである。
走行性能はおそらくハスラーの進化系と推測できる。4WDシステムはビスカス方式を採用し、ハードなオフロード走行は前提とせず、林道レベルの悪路、あるいは雪路での踏破性向上を狙うはずだ。ハスラーのように硬めのサスチューンを採用していれば、悪路対応だけでなく、高速長距離適性も一定以上の性能を持つだろう。
安全運転支援機能は、歩行者対応のAEBSなどのソリオと同等の装備は採用されるはずだ。ただ、スイフトに採用されるACCが設定されているかは微妙である。公開されたプロトタイプを見る限りでは、クルーズコントロールの操作部はソリオやイグニスと共通であり、ACC機能をオンにするスイッチも見当たらない。ただし、フロントウインドウ上部に設置されたセンサーは、ソリオのステレオカメラではなく、スイフトと同じ単眼カメラ+赤外線レーザーレーダー。OP設定でACCやLKAが用意されている可能性も高い。
ホイールベースは2435mmとハスラーとさほど変わらない長さだが、サイドビューのは一回り大きくした感を強く受ける。細部の意匠も微妙に異なる。
サイドパネルに刻まれるキャラクターラインなどで躍動感の演出も抜かりなし。足もともスポーティなアルミを装着するなど、遊び心に溢れるデザインが注がれる。
横開き式のスライドドアやステップを低く取る低床構造など、ミニバンらしい独自の機構も備えるが、寸法サイズはほぼクロスビーと同じ。
バレーノやスイフトRStにも搭載される1L直ターボ+マイルドハイブリッドが搭載される。パワースペックは不明だが、相応の実力を持つのは間違いないだろう。
ターボとNAを選べるが、主軸を担うのはトルク感が高まるターボだ。64PS/9.7kg・mと特に秀でたスペックではないが、800kg強のボディを引っ張るには十分。
エンジンは1.2L直4を搭載するが、NA仕様に加えてハイブリッドは2つの仕様を用意する。上位のフルハイブリッドは91PS+10kWを発揮する。
後席の足もとのゆとりはクラストップレベル。シートは左右独立式の分割可倒&スライド機構も備わるなど、多彩なシートアレンジも可能だ。
上級グレードの後席は左右独立式のスライド機構も備える。1250mmという室内高もあり、キャビン空間の余裕も見所だ。
後席は左右独立式のスライド機構を持つが、足もとまわりの余裕は圧倒的。通常時でも膝周りに窮屈さは無縁だ。室内高1360mmと1つ上の頭上空間の余裕を持つ。
クロスビーの登場でミニマムSUVの勢力図はどう変わる?
多くの人が気になるのは、ハスラーとの比較だろう。実はこの2車は見た目こそ似ているが、採用されるメカニズムや装備は大きく違う。軽自動車と乗用車の違いはあれど、HEARTECTの新世代シャシーやマイルドハイブリッドの採用など、クロスビーの方に多くの最新技術が注がれている。軽自動車の経済的なメリットは大きいが、維持費の差は仕方がないとクロスビーを選ぶ人もかなりいるはずだ。
その一方でジャンルこそ違えど、クロスビーとソリオとの共通部分は多い。直接のライバル車とは考えにくい面はあるが、装備やメカニズムはかなり近く、SUV的な用途に強いこだわりがなければ、ソリオという選択は十分魅力的だ。
提供元:月刊自家用車