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更新日:2018.11.24 / 掲載日:2017.06.19
新型レヴォーグとWRX S4に搭載されるアイサイトツーリングアシストをひと足先に体験!
スバル WRX S4(プロトタイプ)、スバル レヴォーグ(プロトタイプ)
文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス、株式会社SUBARU
この夏に大規模なマイナーチェンジを受けて発売される予定のスバルの新型レヴォーグとWRX S4。その最大のトピックが、従来のアイサイトver.3の進化版として搭載されるアイサイトツーリングアシストだ。
その実力をひと足先に確認すべく、発売前にそのシステムを試すことができたので紹介しよう。
なんといっても注目は、渋滞を含む高速道路の全車速域でアクセルとブレーキだけでなくステアリングまで自動制御を実現したことだ。これまで「車線中央維持」は60km/h以上に限られていたが、これを「0km/h以上」としたのである。「限定的」から設定可能な速度内で「全範囲」となった違いはかなり大きい。
同様の機構をメルセデス・ベンツやアウディなどがすでに日本向けモデルでも採用しているし、国産車でも日産がセレナやエクストレイルに搭載している。だから正直なところ機構自体にニュース性があるわけではないのだが、ついにスバルも採用に踏み切ったことは見逃せない。
もうひとつ興味深いのは、「アイサイトの次世代版」としてこの機能を盛り込んだこと。ツーリングアシストというネーミングには「より遠くへ、より速く安全で快適に」というグランドツーリング思想が込められているのだという。あくまでアイサイトの延長線上であることを強調しているのだ。
システム的には従来のアイサイトver.3に全車速対応のステアリング制御機構を組み込んだもの。ステレオカメラを使って前方を把握し、ブレーキやアクセルを操作することなく前を走るクルマに合わせて設定速度内で速度を自動制御。渋滞などで前の車が止まればそれにあわせて停止し、停止保持まで行う。また直線や緩いカーブであればステアリング操舵をアシストしてドライバーはハンドルに手を触れてさえいればクルマが勝手に曲がってくれる。ただ、そこまでは従来のレヴォーグやWRX S4でも実現していた。
今回の進化の要は、従来型の作動領域が60km/h以上に限られていたのに対し、停止からシステム作動上限速度まですべての領域でステアリングのアシストをおこなうようになったことである。
また、ステアリングアシスト(車線中央維持機能)の制御が進化したのはもちろんのこと、対応するシーンも従来に比べて半径の小さな場所まで対応。作動可能な半径は速度にもよるのだが、ステアリング操作で発生する重力加速度が約0.2G(同乗者が不快に感じることなく曲がれる程度のコーナリング)なら対応できるという。具体的にいえば、制限速度内で走っていれば高速道路のカーブはすべてトレースできると考えてよさそうだ。
車線中央維持機能は左右の白線を読むのはもちろん、従来とは異なり車線を予測するロジックにより、白線が片側しかなくても認識可能に進化。また渋滞時や混雑時は先行車両を認識し、その軌跡を追うことでステアリング制御を実現している。
実際に試してどうか?
今回は高速道路を模したコースを高速走行、そして完全停止も含めた渋滞で試してみたのだが、あまりにも自然な動きが印象的だった。定評のある加減速(とくに人間の感覚に逆らわないブレーキは秀逸で世界トップクラスの実力)のスムーズさはもちろんのこと、曲がっている間のステアリングの動き(自動制御)が自然で違和感がない。
システム作動中も万が一に備えてハンドルに手を添えておく必要があるのだが、その手に伝わってくる動きが落ち着いているのだ。そのできばえは想像以上だった。
写真提供:株式会社SUBARU
開発スタッフは「実際にユーザーに使ってもらえる機能でなければ意味がない。だからドライバーに不安を与えないようスムーズに作動すること、そして違和感を排除することを心掛けて開発した」という。
その配慮はしっかりと感じることができた。
もうひとつ興味深かったのは、今回のシステムに関して「自動運転」という言葉はまったく使っていないことだ。
「スバルとしては“楽をする”のではなく、あくまでドライバーの負荷を減らしてツーリングを“愉しむ”ための機能」といい、また高い安全性を担保するためのシステムともいう。とはいえ、この先に自動運転が見えているのは間違いないだろう。
もちろんすべてが完璧かといえば決してそうではなく、今回のテストコース内でも半径の小さなS字コーナーでは車線中央を保持できなくなることもあったし、ステアリングを握る手の力を緩めると「触れている」と認識しなくなることもあった。かなり出来はいいが、完全というわけではないのだ。
もちろんそのあたりは開発スタッフも認識しているし、次回以降のバージョンアップでさらに進化してくるのは間違いないだろう。
問題は、スバル車を購入した人がこのシステムを実際に使いたいと感じたかどうか。ボクの答えは「迷わず使いたい」だ。
大問題は、これに慣れてしまうと、もはや備わっていないクルマで高速道路を走るのが嫌になってしまいそうという不安である。笑い事ではない。
嘘かと思うかもしれないが、ボクだけでなく自動車メディア業界の人間は高い比率で「もはやACC(アダプティブクルーズコントロール:追従型クルーズコントロール)のついていないクルマでは高速道路の長距離移動をしたくない」と考えている。その対象が、「ステアリング制御のないクルマでは遠くに出かけたくない」となるのも時間の問題だろう。
最後に、重要なトピックをもうひとつお知らせしよう。これまで「100km/h」を上限としていたクルーズコントロールの作動速度は、高速道路の制限速度引き上げの動きを反映して新型レヴォーグとWRX S4から「120km/hまで」と範囲を拡大される。試してみたら、実際のところは「135km/h」まで設定できた。
スバル レヴォーグ(プロトタイプ)
スバル WRX S4(プロトタイプ)