「高級ミニバン」は、日本で生まれ育ったジャンルと言えるが、そのパイオニアは平成9年デビューのエルグランド。「キャラバン・エルグランド」、「ホーミー・エルグランド」という当時の正式車名から、その成り立ちが分かるひともいるだろう。
90年代にピープルムーバーの世界で起こった大変革は、ワンボックスワゴンからミニバンという流れ。そこで、「高級」の方向から独自のミニバンを発想し、エルグランドとして世に送り出した日産は、新たなトレンドセッターとなった。
当時のライバルはグランビア。だが、日産がミニバン専用モデルとしてエルグランドを開発したのに対して、トヨタは海外向けハイエースの高級ワゴン版をグランビアとして国内市場に投入したのだから、そもそもの質や高級感がまるで違っていた。ファンが支持したのは言うまでもなく、本物であるエルグランドだ。
これがE50型。そして、2代目のE51型ではリヤマルチリンク式サスや、一段とパワフルな3.5L V6の心臓を導入し、エルグランドはプレミアム路線をより確固たるものとした。また、スポーティなルックスを特徴とするハイウェイスターが、シリーズを代表する存在へと成長したのも、このE51型の時代だった。
そして平成20年に、エルグランドは3代目のE52型へと移行。大胆な変身ぶりに、ファンはアッと驚いた。サプライズとなったのは、FRからFFへの駆動レイアウトの変更と、一気に全高を95mmも低くしたパッケージの大改革。3代目が手に入れたものは、安定性を大幅に進化させた走りと、低床フロアが実現した優れた乗降性、そして飛躍的に向上した燃費など、多岐にわたる。
そうした大改革を実践しながら、押し出し感の強いフロントマスクに象徴される「エルグランドらしさ」はきちんと踏襲したのがフルチェンジの要点。エルグランドはいまも、独自の高級路線をひた走っている。
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