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更新日:2017.12.14 / 掲載日:2017.11.30

デビュー前の新型FRスポーツ速攻試乗 FT-86改め トヨタ86見参!

FT-86の正式車名は86(ハチロク)に決定

GAZOO Racingフェスティバルでファンの歓声を受け満足げな章男社長。ハチロクに対する期待感、注目度の高さが実証された瞬間

GAZOO Racingフェスティバルでファンの歓声を受け満足げな章男社長。ハチロクに対する期待感、注目度の高さが実証された瞬間

【本記事は2012年1月にベストカーに掲載された記事となります。】前回の東京モーターショーで初公開されたFT-86の正式車名は86(ハチロク)に決定。少少ベタな感じだが、呼びやすさ、親しみやすさは絶大。だけど欧州は“GT86”でいくというウワサ。力強いゾ。“FT”といい慣れただけに少し淋しい。それはともかく、このハチロク、当初東京モーターショーで市販モデルを世界初公開する、という触れ込みだったが、11月27日に富士スピードウェイで開催された『GAZOO Racingフェスティバル』でひと足先に観衆に公開、章男社長自らがステアリングを握り走行するなど、発表前のクルマとは思えないプロモーションを展開。実はBCも含め、クルマ関連の媒体は、それよりも1カ月前にプロトタイプに試乗。一刻も早くハチロクのレポートをお届けしたかったのだが、解禁日の関係でNG。それが今回ようやく誌面展開できる。ハチロクはトヨタの直噴技術、D4-Sが投入されたスバル製の2L、フラット4を搭載する低重心と前後重量配分にこだわりにこだわったFRスポーツで、豊田章男社長が東京モーターショーで力説していた『FUN TO DRIVE AGAIN』を具現化したクルマ。トヨタがクーペ、スポーツ&GT受難時代に投入するハチロクはどんなクルマに仕上がっているのか? 期待どおりなのか? そのハチロクを飯田章、竹平素信、国沢光宏の3人が速攻試乗し、その実力をレポート。

いろいろな人に乗ってほしい!

ハチロクのタイヤサイズはプリウスのツーリングセレクションと同じ215/45R17。バランスを重視してチョイス

ハチロクのタイヤサイズはプリウスのツーリングセレクションと同じ215/45R17。バランスを重視してチョイス

いろいろな人に乗ってほしい! 飯田 章クルマに乗り込んでまず感じるのは、着座位置の低さ。シートを交換したりすれば、着座位置を低くすることができるが、ノーマルシートで着座位置が地面から400mmというのは、よくやったと思う。この低い着座位置、ステアリング、センターコンソールなどなど、一体感を味わわせてくれる。久々にスポーツカー特有の包み込まれるようなムードを持っている。ハチロクは、スポーティなエクステリアだけでなく、内からの安心感を与えてくれるクルマだ。走り出してもその印象はまったく崩れることはない。エンジンは高回転型ではなく、低中速重視型。しかし高回転まで回らないわけではなく、7000回転まで一気に吹け上がる。そして、2L、NAだから爆発的なトルクがあるわけではないが、ヘンなクセがなく、低速域からトルク感があるので運転しやすい。今回は6MT、6ATの両方をドライブしたが、どちらも新開発のボクサー+D4-Sとのマッチングはいい。MTはシフトアップしていく時のピックアップがいいし、ショートストロークのシフトフィールも心地よく、リズミカルに走ることができる。それから、クラッチミートのしやすさ、パワーバランスのよさから、初めて乗る人でも乗りやすいと感じられるハズ。いっぽうのATはどうか。新開発の6ATは、IS Fの技術を投入することで2LクラスのATとしてはすばらしい仕上がり。IS Fのように完全ロックアップではないが、そのシフトレスポンス、パドルの歯切れのよさ、シフトダウン時のブリッパーによるエンジンのあおりなどなど、6MTよりもさらに扱いやすい。6MTがクルマを操っているゾ、という感覚に浸れるのに対し、ハチロクに搭載されている6ATは、安心感がありながら心地いいスポーティ感を堪能できる。ハンドリングはFR独特の前後バランスのよさ、ステアリングを切ったら切っただけ曲がる素直な素性は評価できる。そして、コーナリング時のロールは大きすぎず、安心感があるのでコントロールしやすい。ハチロクの標準タイヤサイズは215/45R17で、オーバーサイズじゃないところもハチロクのバランスのよさを実現している大切な要素。オプションで18インチもあるが、乗り心地に多少ゴツゴツ感が出てくる。走らせてみると、同じFRのマツダロードスターよりも洗練されている感じだが、スポーツカーに何を求めるかにもよりハチロクの満足度は違ってくる。ハチロクに対し、ハイパワースポーツやプレミアムスポーツを期待すると、“物足りない”、となるだろう。でもFRスポーツをシンプルに楽しみたい、という人には満足感が高いハズ。これまでいろいろなスポーツカーに乗ってきたボクにとっても、ハチロクは久々にこういうクルマに乗りたかったと思わされた。そういう意味では若者よりも中高年向きのクルマ、といえるかもしれない。でも、その人たちが楽しんでいるのを見た若い世代が、楽しそうだな、と感じてくれればいいと思う。ハチロクはその素性を持っている。ただ、単に懐古主義の後ろ向きのクルマではく、走りのポテンシャルは現代のトレンドをしっかりと押さえている。ハチロクの楽しみ方はいろいろ。購入後自分流にアレンジするもよし。これも素の状態で充分楽しめるからできること。ただ、あまりがんばりすぎて、ハチロクの最大の魅力であるバランスを崩さないよう要注意。 100点満点で85点!!

FRのハンドリングが堪能できる!

200ps/20.9kgmの2L、NA搭載だからターボのような爆発的な速さはないが、パワーウェイトレシオは6.15kg/psと良好だから、加速感が気持ちいい

200ps/20.9kgmの2L、NA搭載だからターボのような爆発的な速さはないが、パワーウェイトレシオは6.15kg/psと良好だから、加速感が気持ちいい

FRのハンドリングが堪能できる! 竹平素信いよいよ初乗りだ。なかなかいい仕上がりのデザインではないか。コックピットもいい感じ。ホイールベースの真ん中あたり、しかもフロアにグンと近いシートポジションから見渡すムードはスポーツカーの世界。シートのホールド性&タッチ、ステアリング、シフトレバー、ペダル類など、ドライビングに必要なアイテムもいいフィール。さらに、正面のメーターに目をやればレッドゾーンが上部に印されたタコメーターを中心としたレイアウト。思いっきり走りを楽しんで、といわんばかりのコックピットもいい。まずは注目の2L、フラット4。ムムム、これは上質だ。かなり低回転から太いトルクがレスポンスよく発生し、スムーズかつリニアに盛り上がっていく。スクエアストローク&直噴らしさが充分に感じられる。パワーバンドもグンと広そうだ。最高出力発生は7000回転だが、1、2速では“アレッ”という間にレブリミッターが作動。高回転のマージンがまだまだありそうで、7500回転のリミッター作動はちょっと疑問。低中速の特性はそのままで高回転の伸びをもう少し高めてくれれば最高だぞ。とはいえ、サウンドが気持ちよく、パワフルながらシビアなFRの挙動をコントロールしやすい特性を持つ。これはいい仕上がりだ。動力性能はかなりのレベル。2L、NAで車重1200kgプラスのスポーツ車となれば、100kgほど軽量なロードスターがいちおうはライバルとなろうが、一歩リードは間違いなし。6速MTを駆使しての走りは実に気持ちよかった。アルテッツァのMTを大幅改良したというこの6MT、シフトストローク、節度感ともナイスフィール。ギアのステップ比も適切だ。シンクロ能力も高く、シフトダウンもスパッとキマる。ハチロクにはATの設定もあるが、ぜひMTで乗ってほしいと思った。もうひとつうれしかったのはヒール&トゥがしやすいペダルレイアウトでスポーツ走行がバッチリ楽しめること。MTのスポーツ車となればこうでなきゃ。注目のハンドリングはどうか。これぞハチロクの命というポイントだけに大いに気になる。これが期待どおり。いや、なかなか見事な仕上がりといっていい。ボクサーエンジンのメリットを生かした低重心かつ前後重量配分にこだわったFRスポーツの特性もしっかりと体感できた。ステアリングの切り込みにレスポンスよく反応するノーズの動きはまさにそれだが、ハチロクならではの美点は“シャープでありながらシャープすぎないハンドリング”だ。これは前記したパッケージングに加え、ワイドトレッドながらホイールベースも長い(ロードスターより240mm長い)のが効果的となっている。試乗した富士スピードウェイのショートコース、ここの下りのコーナーはFRスポーツにとって姿勢の乱れが激しく、最もスキルが求められるが、ハチロクはあっさりとクリアしてしまうのだ。VSAカット(ABSのみ作動)で攻めてもテールスライドは穏やかで、コントロールしやすかった。トラクションの伝わりも上々で中級レベル以上ならダイナミックかつスピードの乗ったドリフト走行が楽しめそうだ。いやいや、ホントに楽しかったぞ。バネやダンパーのチューニングがハードすぎないのもコントロール性のよさとなっているが、タイヤがそれほどハイグリップ仕様でないのもポイント(プリウスツーリングセレクションと同じタイヤだ)。ローダウンしてサスを固め、ハイグリップタイヤを装着する、といった走り屋さんの定番チューンをすれば、コーナリングスピードは確実に速くなる。が、手軽にドリフトを楽しむならノーマルがベストだと感じたぞ。残念ながらチョイ乗りだったが、ハチロクのポテンシャルの高さはしっかりと確かめられた。ここまでデビューを遅らせてきただけのことはある。クルマ好きはもちろん、そうでない人もぜひ走りを味わってほしい。クルマの走る楽しさがギッシリと詰まっているゾ。 100点満点で98点!!FRのハンドリングが堪能できる! 国沢光宏 結論から書くと、国沢光宏はハチロクの魅力に相当ヤラれてしまっている。その昔、女の子に興味あった頃、気に入ったら日を追う毎に好ましくなっていったモンだ。それと同じ。ハチロクのハンドルを握った日より、次の日のほうが印象よくなってます。次にハンドル握った後、いちだんと印象よくなるようだとノメり込んぢゃいそう。

素性はどうなのか?

とても乗りやすい、というのがハチロクの第一印象。コーナリング時にロールはするがコントローラブル

とても乗りやすい、というのがハチロクの第一印象。コーナリング時にロールはするがコントローラブル

■素性はどうなのか?開発段階から、「インプレッサのWRカーと同じくらい低い位置にエンジンを搭載して重心を下げたら普通のクルマとまったく違う乗り味になった」というウワサを聞いていたけれど、その時はイメージできず。しかし! 乗ってビックリ! なるほど! そもそもハンドル切った時のロール感が少ない。「曲がること」のストレスがないのだ。素直と表現してもよかろう。初めてハチロクのハンドルを握った多くの人が「ひとつ目のコーナーから攻めちゃった」。かくいう私も最初の右コーナーでアクセル踏んだら自然にテール流れた。ちなみにどんなスポーツモデルでも、コーナーにして3つや4つは身体のセンサーとクルマの挙動をシンクロさせてやらないといけません。

エンジン、ハンドリング、動力性能、サスセッティングは?

2L、フラット4エンジンは200ps/20.9kgmで10・15モード燃費は12.4km/L。中低速を重視

2L、フラット4エンジンは200ps/20.9kgmで10・15モード燃費は12.4km/L。中低速を重視

■エンジンは?なるほどD4-Sだと感心しきり! 直噴は圧縮比を上げてもノッキングしにくくなり、結果として低中回転域のトルクをググッと太くできる。今まで失望を繰り返してきた2L級FR車すべてが高回転型エンジンだったため、レッドゾーン直前まで回さないと後輪を滑らせるようなトルクを出せず。しかしトルクが太いハチロクのエンジンなら2速でのパワースライドだって簡単。参考までに書いておくと、等長等爆のフラット4のため、いわゆるボクサーサウンドや振動はなし。パワーロスし、レスポンスを悪化させるバランサーが不要で低重心だという水平対向の見えないメリットだけを上手に引き出しているな、と思った。■ハンドリングは?基本的な特性としちゃ100点! 加えて自分で買ったら足回りは100%交換するから細かいブブンは気にしない。FRの場合、前後の重量配分50対50をもって理想だと皆さんカン違いしているようだけれど、そうじゃないと思う。エンジンの搭載位置やサスペンション形式によっても変わってくる。ベースモデルとして考えるなら「モンクありません!」。■動力性能は?0~100km/h加速6秒。最高速230km/hが欧州仕様のカタログデータとのこと。NAの2L車として考えれば世界TOPクラス。2速4000回転全開でテールを滑らすくらいのトルクを持つ。グラベルタイヤ履かせてダートでも走らせようものなら、4速だってパワースライドしちゃうだろう。■サスセッティングは?強いていえば前後の荷重移動を抑えたドリフト車的な味つけになっている。荷重移動させず、いわゆるハンドルを「バキ切り(急転舵)」してアクセル全開でテール流すという乗り方です。同じコースを何回も走るサーキット走行向きといってよろしい。私の好みは、もう少し前後方向の荷重移動を許したセッティング。初めて出会うコーナーを楽しもうとすると、フロント荷重にしてフロントを曲げたり、抜重してのアクセルオンしてのパワースライドを使うといったラリー車的なセッティングのほうが楽しい。

ムードは?

センターにタコメーターを配したインパネ。デザインも凝っている

センターにタコメーターを配したインパネ。デザインも凝っている

■ムードは?着座位置が低く気分出る。当然ながらバケットシートに交換したくなることだろう。懐かしの3連メーターだって気分を盛り上げくれる。個人的にはエクステリアも気に入った。少し車高上げ、ラリータイヤ履かせ、マッドフラップと補助灯付けたらジジイ殺しのオーラを出し始めるだろう。

6MTのシフトフィールは?

6MTはアルテッツァのものを新開発といえるくらいに大幅改良。シフトフィールが気持ちいい

6MTはアルテッツァのものを新開発といえるくらいに大幅改良。シフトフィールが気持ちいい

■6MTのシフトフィールは?よし。皆さん気に入ってくれると思う。

気に入ったところ

このアングルはボンネットの低さが強調される。BRZよりもシャープな印象

このアングルはボンネットの低さが強調される。BRZよりもシャープな印象

■気に入ったところ今までの2L級FRは絶対的な限界性能を狙って失敗してきた。ハチロクも高回転型エンジンと、タイムを追求した足回りを選んだらツマらんクルマになっちゃったかもしれない。久々に登場してきた「大型新人」です。トヨタが上手に育ててくれることを強く願う。 100点満点で100点!!

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グーネットマガジン編集部

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1977年の中古車情報誌GOOの創刊以来、中古車関連記事・最新ニュース・人気車の試乗インプレなど様々な記事を制作している、中古車に関してのプロ集団です。
グーネットでは軽自動車から高級輸入車まで中古車購入に関する、おすすめの情報を幅広く掲載しておりますので、皆さまの中古車の選び方や購入に関する不安を長年の実績や知見で解消していきたいと考えております。

また、最新情報としてトヨタなどのメーカー発表やBMWなどの海外メーカーのプレス発表を翻訳してお届けします。
誌面が主の時代から培った、豊富な中古車情報や中古車購入の知識・車そのものの知見を活かして、皆さまの快適なカーライフをサポートさせて頂きます。

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