故障・修理
更新日:2019.12.27 / 掲載日:2019.12.27

クルマを真っ直ぐ心地よく走らせる基礎メカニズム Part.2-3

アライメントを決める主要パーツのチェック

 ホイールアライメントの調整はサスペンションアームやタイロッドの調整などによって行うが、サスペンションの支点やホイールの支持部が必要以上に動くと、走行時の位置決めがおろそかになり、クルマがドライバーの意図しない動きをしたり、不快な振動を起こすなど様々な悪影響が発生してしまう。特にホイールアライメントを測定する前には、各部の状態が正常なことを確認しておきたい。

 クルマが古くなってくると、サスペンションブッシュが劣化して、ヒビ割れや亀裂、変形を起こしていることもある。ブッシュはサスペンションの可動部の支点なので、この部分が本来設定された弾性以上に動くと、アライメントの狂いに繋がってしまう。

 また、ステアリング系のギヤやボールジョイントなどにガタが出てくると、直進時の手応えが希薄になったり、操作時に異音が出ることがある。ガタが出るパーツの筆頭がタイロッドのボールジョイントだが、ステアリングギヤボックスのラックギヤが摩耗してガタが出ることがある(ホンダの可変ギヤレシオなど)。ちょっと特殊な例では、ステアリングの操舵力が左右で違うというクルマもある。これは三菱デリカD:5での経験だが、TRW製のギヤボックスの油圧コントロール系に問題があるようだ。リビルドも困難なようなので、オーナーは保証のあるうちに交換したほうがよい。

 日常点検では、やはりタイヤの偏摩耗に気をつけたい。日常というにはスパンが長いが、5000~10000kmほどごとのローテーションを行うようなタイミングで4輪の溝の深さをチェックしておく。見落としがちなのはタイヤの内減りなので、クルマに装着したまま点検する時は、下からよくのぞき込んだり、前輪であればステアリングをフルに切ってから点検する。

 ホイールベアリングは十分な耐久性を持っているが、ベアリングにガタが発生すると、異音はもちろんディスクローターの振れが大きくなり、ブレーキのストロークが増す原因になる。当然、ふらつきも起こりやすくなるので、疑わしい時はチェックしたい。

起こりがちな症状

タイヤの偏摩耗、ふらつき、ワダチでのハンドルとられ、ステアリング中立のダルさや左右へ切った際のガタ、ブレーキ時のふらつきや片効き、ブレーキペダルのストローク過大など

タイヤの偏摩耗

5000~10000km程度でタイヤの偏摩耗がないかトレッド全体をチェック。異常が見られる場合、ローテーションをする前にプロに見せたほうがよい。

ホイールのガタ

縦のチェックでは接地状態でもタイヤの上側を強く押すと感じられることがある。浮かせると診断しやすい。横方向のチェックはステアリング系を診断する。

ブレーキの片効き

ブレーキの片効きは直進性を悪化させる。ブレーキング時にハンドルを取られる原因になることも。スライドピンやキャリパーピストンをチェック。

ブッシュやスタビライザーリンクのヘタリやガタ

ブッシュの劣化はサスペンションアームの位置決め不良となり、ホイールアライメントの狂いや走行不安定に繋がる。スタビライザーリンクは異音や初期ロール過大になる。

ボールジョイント

通常はダストブーツの破損の有無やホイールを揺さぶった時のガタをチェック。

ホイールベアリング

ホイールベアリングの不良は走行時のウナリ音やブレーキペダルのストローク過大などに繋がる。

ステアリング系のガタ

ステアリング系ではタイロッド系のガタが最も多い。据え切りを多用する乗り方はジョイントやギヤボックスに負担が大きい。

DIYでもある程度は測定できるが・・・・・・DIYホイールアライメント測定の限界

トー測定

メジャー測定では直進時のトータルトーしか測れない。重要なのはサスアームの位置が均等でかつタイロッドの長さが左右同一なこと。これにより左右の切れ角も均等になる。ただし、車高ダウン時などに左右のタイロッドを均等に調整するなら有効だ。

タイヤ溝を基準に測定しない

トレッド溝を前後で比較してトーを測る人もいるらしいが、トレッド面は横ブレもあるので、基準にならない。トレッド面で測る場合は、X印をつけたテープなどを貼り、クルマを後ろから前に動かした時の左右の距離を測る。

ボディ基準の水糸を張ってトーを測定した

レーシングカーなどが実施する糸張りによるトー測定。これをそのまま市販車でやっても正確な測定は難しいだろう。サスペンションメンバーの中心がボディの中央と一致していて左右のサスペンション位置が対称になっていないと、左右のズレ量も含んだ測定値になってしまう。

サイドスリップでトーを調整した

キャンバーやトー、タイヤの特性などが総合的に関係するので、これだけでトーを調整するとかえって走行性が悪化することもある。また、写真のような片側の診断では反対側の影響を受けてしまうので、正確な診断は困難。

ガレージでキャンバー測定をした

正確なホイールアライメントの測定では、設置場所が水平でなくてはならない。せめて薄いベニア板を敷いたり調整式の台を使うなどして4輪の接地面を水平にしないといけない。さらに1カ所だけではホイールの振れを含む恐れがある。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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