セルモーターを分解せよ！後編　再生公道復帰プロジェクト

カバーを外すとリダクションギヤが露出。欠けもなくかなりきれいな状態で、グリスもきちんと残っている。ベアリングもスムーズ。

マグネットスイッチの奥にはピニオンを押し出す爪がある。オンにするとリダクションギヤがフライホイール側に移動する仕組みだ。

小さな突起を押すことでピニオンギヤがスラスト方向に移動。中にはワンウェイクラッチが入っていて一方向にのみ回転。

　セル本体の取り出しもなかなかのジャングルだったが、堆積した汚れをパーツクリーナーで洗浄して、リビルド交換のパーツ到着がいつになるか分からない（需要はほぼないのか）ので、なぜ回転しないのかを検証するために分解してみた。一応、通電するとマグネットスイッチと飛び出し機構の部分は作動していることがテストで確認できたが、モーター本体はうなるだけか、回転しても異常に遅い。飛び出したピニオンを指で押すと止まってしまうほどだから、フライホイールなど回せるはずもない。
　分解はモーターからリダクションされたギヤボックスを取り外すと裏ネジがあり、それでマグネットスイッチが取り外せる。
　マグネットスイッチは通電すると腕が引っ込む構造で、テコの原理で、リダクションギヤを押し出して先端のピニオンがフライホイールを駆動する仕組みだ。ここは錆もなく内部劣化は確認できなかった。
　モーター本体は2本の細長いボルトを表面側から抜くと外れる。この時モーターのピニオンを押し出すと全体が抜ける。
　分割できたらアーマチュア（回転子）が露出するがそのまま引き抜くとブラシ当たりが外れる音がして引き抜ける。アーマチュア自体は非常にきれいで、ブラシのカスが全体についてはいるものの、錆も発生していなかった。ブラシの当たり面（コンミテータ）の部分は削れてもっと段差が発生しているかと思われたが、走行距離とセルの回転時間は一致しないから（エンジン始動時しか回らない）非常にきれいな状態だ。
　抜けたアーマチュアの抜け殻？（ヨークとフィールドコイル）の先にはブラシが見える。覗き込んでみるとプラス側のブラシが引っ込んだままの状態が確認できる。たぶんブラシが減っているか動きが悪くなっているかのどちらかで、コンミテータへの通電が確立されていないのかもしれない。
　裏の釜を外すとプラス側はブラシがハンダで固定されている。
　ブラシ単体を取り外してみると4個ともほぼ長さは揃っていて、特に不具合は見当たらない。こりゃブラシホルダーまわりを洗浄してグリスを塗って組み立てれば再使用できるかもしれない。製廃パーツ山盛りだから、自分でリビルドできるところはやるしかないのが「お不動様」復活の道なのだ！

ピニオンギヤが飛び出す状態がこの写真。親指で左方向に軸を押すとギヤが移動。フライホイール外周のギヤに嵌合する。

親指の先の部分がピニオンを押し出す部分で、左の写真と見比べるとよく分かる。動きはスムーズだったので分解しないことにした。

マグネットスイッチはONにするとシーソー状のてこを利用して下側の爪が動く。シーソーは1対1の長さなので、倍力装置ではない。

モーター固定ボルトを抜くと、リダクションハウジングからアーマチュアが見えてくる。ベアリングもゴロツキは一切なく良好な状態。

アーマチュアを引き抜くとコンミテータが現れる。もっと減っていると思ったがブラシ当たりがいいのか段差状に減ったところはない。

光っている部分は溶着を切削した面で縦帯状の部分がブラシと接触する部分。ブラシカスはあるものの、洗浄だけできれいになった。

上下のブラシがプラス側だが引っ込んでいるのが分かる。減っているのか動きが悪いのか。原因はこのあたりにありそうな気配。

セルモーターの作動構造図で通電すると同時に上のスイッチがピンを押し、モーターが回転することでピニオンがフライホイールを回すのだ。

ブラシ側のカバーを外しプラス側のブラシのハンダ付けを取り去ってブラシ基板を取り出す。100Wのコテでも時間がかかる。

プラス・マイナスに2個のブラシが装着されている。この時点でもプラス側は引っ込んだままなので、バネが押し出せなかったようだ。

ブラシを押し出すのはゼンマイ状のバネで、コンミテータに当たる力は相当なものだ。動きはスムーズだったので、ガタが問題？

外して洗浄したらマイナス側が引っ込んでいる。ゼンマイ状のバネは強力で、ブラシの全長も揃っているので、減ってきて短くなったために押し出せなくなったというのが最大のが原因と判断した。ブラシの新品がほしい！

ボルトを除くセルモーターの全パーツがこれだ。駆動力が必要な部分なので各部がガッチリ作られている。部品点数は多くない。

• 提供元：オートメカニック