チャイルドシート正しく使えてますか？JAFと警察庁の調査で使い方の課題浮き彫りに

　ドライブ時に子供の安全を守るために不可欠な「チャイルドシート」。２０００年に６歳未満への装着が義務化されて以降使用率は高まり続け、日本自動車連盟（ＪＡＦ）と警察庁の調査によると、22年の装着率は過去最高の74.５％となった。その一方で、「正しい取り付け」ができていなかったり、子供を「正しく着座させていない」というミスユースが依然として多いという調査結果が報告された。

年齢が高くなるほど低下する使用率の向上が課題

　ＪＡＦと警察庁は、クルマに乗車中の６歳未満の子供を対象に「チャイルドシートの使用状況」と「チャイルドシートの取付け状況、着座状況」調査を４月22日～６月30日まで全国で実施した。

　チャイルドシート使用状況調査は、全国99箇所で１万３１１０人を対象に実施した結果、使用率は74.５％となり、前回の調査（19年）から４.０ポイント増加し過去最高となった。同調査はコロナ禍のため20年と21年は実施しなかったので、今回は３年ぶりの調査となる。そのため先の４.０ポイント増は３年間での増加であり、年平均では１.３ポイント程度の増加となる。

　年齢層別の使用率をみると、「１歳未満」は89.９％で同１.９ポイント増、「１～４歳」は76.７％で同４.３ポイント増、「５歳」は53.５％で同５.５ポイント増と着実に伸びており、それぞれ過去最高となった。

　チャイルドシートメーカーでは、近年の使用率アップは関係者による啓発活動に加え、装着しやすい「ＩＳＯＦＩＸ」の普及を理由に挙げている。ＩＳＯＦＩＸタイプはチャイルドシートに装着されたコネクタとクルマの金具を連結するだけで確実に固定できるようにして取り付け性を向上させたことで、「面倒だから装着しない」というユーザーを減らし使用率向上につながっている。

　とはいえ、年齢が高くなるにつれて使用率が低下する傾向に変わりはなく、特に５歳児は他の年齢層と比べて低い水準にあるため、さらなる使用率向上が課題である。　

３分の１がミスユース

　次に、全国８地域、合計４２０シートを対象に行った「チャイルドシート取付け状況調査」をみると、説明書通り正しく取り付けられていたチャイルドシートは、乳児用・幼児用全体で65.２％となり、ミスユースが34.８％を占めている。具体的には、乳児用・幼児用ともに「腰ベルトの締め付け不足（約60％）が圧倒的に多くなっている。

　シートベルト式のチャイルドシートは、腰ベルトの締め付けが不足したり、ベルトを通す位置を間違えると正しく固定できず、急ブレーキで前の席に頭をぶつけたり、投げ出されたりするといったリスクが高まる。しかし、ＩＳＯＦＩＸであればチャイルドシートに装着されたコネクタとクルマの金具を連結するだけで確実に固定できるため、リスクを大幅に低減できる。そのため、メーカーではＩＳＯＦＩＸの普及促進を図ることで、ミスユースを減少させる方針を打ち出している。

正しく着座は５割以下

　また、全国８地域の４２０シートを対象に行った「着座状況に関する調査」でも、説明書通りにチャイルドシートに正しく着座していた子供の割合は49.５％と半数以下となった。正しく着座していたのは乳児用で54.１％、幼児用で41.４％、学童用で53.４％と幼児用が低かった。

　乳児用と幼児用のミスユースの多くは｢ハーネスの締め付けと高さ調節の不適正」、学童用は「体格不適合」が多くなっている。

装着率１００％とミスユースをなくすための活動強化が必要

　チャイルドシートは万が一の事故の際に子供の命を守る「命綱」だ。子供の安全を守るためにも装着率は「１００％」が望ましく、使用にあたっては「正しく使用する」ことが大切だ。

　チャイルドシートの使用率は向上しているとはいえ、まだ４分の１が未装着の状況にあり、装着していても３分の１が正しく使用できていない。保護者がチャイルドシートを使用しない理由に、「かわいそうだから」、「赤ちゃんが嫌がるから」という声があるが、かわいそうでも、嫌がっても「命」には代えられない。また、「近場への低速走行しかしないから装着しなくていい」という考えは事故の恐ろしさを知らないからで、「付いていればいい」という発想も危険だ。

　こうした命綱を軽視するような考えが、非装着やミスユースの原因になっていることを踏まえ、関係者によるチャイルドシートの使用率向上と適正な使用に向けた啓発活動を行うことで、一人でも多くの人がチャイルドシートを装着し、正しく使用するように意識を高めていく活動をより一層強化していくことが大切だ。

出典：アフターマーケット 2022 年 12月号