故障・修理
更新日:2020.01.08 / 掲載日:2020.01.08
クルマを真っ直ぐ心地よく走らせる基礎メカニズム Part.2-7
多少の左右差があるがホイールアライメントは触らず
このクルマでもアライメント測定は行っているが、成田さんは下回りのヒット箇所やタイロッドや偏心カムの状態を入念にチェックする。そして徐々に表情が曇っていくのが分かった。あまり状態はよくないらしい。
ロードスターのサスペンションは古典なインホイール型のダブルウィッシュボーンで、フロント・リヤ共にロワアームの2か所に偏心カムがある。フロントはここでキャンバーとキャスター、リヤはキャンバーとトーが調整できる。リヤについては新車時より左右差があったが、さらに不具合が発見された。右リヤの後ろ側の偏心カムは同一のボルト上にあるカムなのに位相が違うのだ。さらに、ナット側の偏心カムはメンバーのあるU字形の調整枠をはみ出した向きにセットされている。外してみると、ナット側カムはボルトの溝と合わせるためのキー部が削れていた。同一ボルトでカム位相が違うことは、ボルトが本来の向きより斜めにセットされることになり、ブッシュの不要な変形を招く。今回は応急処置的にカム位相を修正してもらった。
フロントは事故後の修理による影響か、新車時と比べて左右でカムの位相差が大きくなっている。また、タイロッドの長さも左右で異なっている。
そこで、前後サスペンションメンバーとボディの基準穴位置をトラムゲージを使い対角方向で比較してみた。すると、前後ともボディに対して斜めに装着されていることが判明した。リヤは新車時よりこの状態だ。フロントは修理後の取り付けで斜めの度合いが増したのではと考えられる。
このような測定を行う時、まずはボディの基準穴とサスペンションメンバーという固定されたパーツで測るのが基本だ。サスペンションアームにも基準穴はあるが、そもそもアームの取り付け部であるメンバーのズレを偏心カムで補正しているから、左右差が出て当たり前の状態となる。実際にフロントのロワアームで測ると、左右で1cm以上の差が見られた(次ページ)。
ということで、メンバーのズレがあまりにも大きいので本格的なホイールアライメント調整はしなかった。
トラムトラッキングゲージを使ってサスペンションメンバーの位置をチェック
トラムトラッキングゲージはボディ修正でよく使われる2点間の距離を計測するゲージ。フロアやボディの段差部など、メジャーでは測りにくい高低差のある部分のボディの基準位置を測定・比較する。
対角寸法を測ると分かりやすい
メンバーのナットを外すと
リヤサスペンションメンバーのナットを外すと、想像通りボルトとボルト穴の中心がずれている。片方に5mm程度のすき間がある。恐らく斜めにメンバーが付いている。新車の組み立て時からそうなのだろう。
フロントメンバーもズレが大きい
タイロッドの長さが左右で違う
成田さん
「メンバーとボディ間のアライメントを正してから、ホイールアライメントを調整しましょう」