故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

タンデムマスターシリンダーの仕組みとは

ブレーキの安全機構の中でもなじみ深いのがデュアル・マスターシリンダーであろう。このメカニズムは、すでにタンデム・マスターシリンダーなどの名称で国産車にも組み込まれている。タンデムの名が前後にならんだ2頭だての馬車からきていることも、今やよく知られていることだ。今回はそんなタンデム・マスターシリンダーの仕組みについて解説する。
■タンデム・マスターシリンダーの歴史
アメリカでは1967年モデルからデュアル・マスターシリンダーの取付けが義務づけられた。
デュアル・マスターシリンダーは、いうまでもなく、ブレーキ回路を2系統にするためのメカニズムである。
国産車のタンデム・マスターシリンダーの場合は、シリンダーの中央部にある第2ピストン(フロント・ブレーキ用)によって、シリンダー内が2分されている。
そして、運転席からみて手前の部屋がリヤ・ブレーキ用、むこう側がフロント・ブレーキ用になっているのが普通だ。

■タンデム・マスターシリンダーの仕組み
シリンダーの上に組み込まれたリザーバー・タンクもフロントとリヤでは、それぞれが独立している。つまり、万一どちらかの系統に液洩れがあっても、他のリザーバー・タンクの液が減る心配はない。
いまブレーキ・ペダルを踏んだとしよう。プッシュロッドの力はまず第1ピストンを押し込みブレーキ液を加圧し、リヤのブレーキ・パイプ・ラインに油圧を送り込む。ここで重要なのは、第1ピストンはブレーキ液を送り出すと同時にブレーキ液を介してフロント・ブレーキ用の第2ピストンの後端に圧力をかけて押し出している点だ。
この結果として、第2ピストンもピストンの前方にためられたブレーキ液に圧力をかけてフロント・ブレーキ用のパイプ・ラインに送り込む。
さて、今、リヤ・ブレーキのパイプ・ラインから液洩れが生じたとしよう。当然のことながら、リヤ・ブレーキは全く利かなくなりリザーバー・タンクも空っぽになってしまう。
だが、ブレーキ・ペダルを踏み続けると第1ピストンの先端が第2ピストンの後端に密着し、第2ピストンを押し込むことになる。こうして、リヤ・ブレーキの機能は死んでも、フロント・ブレーキの制動力は生き残ることになる。フロント・ブレーキに液洩れがあった場合も同じ理屈だ。

2系統ブレーキのいろいろ

一口に2系統ブレーキといっても、メーカーやクルマによりラインの区別法は、さまざまである。もっともオーソドックスなのが、前2輪と後2輪のラインをわけたもので、FR車のほとんどが、このシステムを採用している。
つぎに多いのがスバル1300やサニーに採用されていた“たすきがけ型”だ。このシステムでは右前輪と左後輪、左前輪と右後輪をそれぞれ同じ油圧回路で結ぶ。
特別な目的をもつクルマで、なにがなんでもブレーキの安全性を確保しなければならない場合は、 4系統のブレーキ・システムを採用したものもある。この方式では、デュアル・マスターシリンダーを2個装着し、まず前輪と後輪を2系統に区分し、さらに別の独立した前後輪2系統ブレーキの油圧ラインを組み込んでいる。
 このように念のいったメカニズムは、最高級車にもあまりみられず、国産においては皇室用のプリンス・ロイヤルが採用していたにすぎない。

2系統ブレーキの警告装置

米国の連邦政府安全基準では、 2系統ブレーキのうち、どちらかが故障した場合、そのことをドライバーに警告するシステムを要求していた。その1つがブレーキのウォーニング・ランプである。このシステムは、万一、どちらかのブレーキ系統にトラブルが発生した場合、ダッシュボードに取り付けられたランプが点灯し、ドライバーへ警告するもの。
 この装置のポイントは、ディファレンシャル・バルブと呼ばれる油圧検出機構にある。ディファレンシャル・バルブでは、シリンダーの中に、1個のピストンが内蔵されている。そして、ピストンの左右両面には、それぞれマスターシリンダーからフロントおよびリヤ・ホイール・シリンダーにいたる油圧ラインの圧力が同時に作用し、ピストンがニュートラル(ウォーニングライト・スイッチOFF)にとどまるようになっている。
 ところがフロントかリヤのブレ ーキ・ラインにトラブルが発生しピストンの左と右に加わる圧力に差が出ると、当然のことながらピストンは油圧の低い側へ移動する。その結果、ピストン中央部のくびれたところに頭を出しているスイッチの先端がピストンの側面で押し上げられ、ランプの回路がアースして点灯するわけだ。
 もっとも、ランプの回路に異常があったのでは点灯しない。そのため、スターターを回した時にだけ、この警告灯を点灯させる。

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グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

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