故障・修理
更新日:2019.10.01 / 掲載日:2019.10.01

プラネタリーギアの仕組みとは

〔ダイレクト状態での動力伝達〕

 プラネタリ・ギアの作用、すなわちトランスミッションとして回転を増減速する作用は、サン・ギア、プラネット・ピニオン・ギア、それにリング・ギアをそれぞれ回転できないように固定したり、駆動したりすることによって実現するので、それらの作用を順次調べてみることにしよう。

 1.中立(ニュートラル)
 3つのギアの全てを固定しない状態のときに、いずれかのギアに駆動力を与えてもギアが空転するだけでトルクは伝導されない。これが中立の働きだ。
 まずリング・ギアに駆動力を与えてみよう。プラネット・ピニオン・ギアとサン・ギアとが空転するだけで、その力はサン・ギアにも、ピニオン・キャリヤーにも伝わらないので空転、いわゆる中立になる。
 つぎにサン・ギアに回転を与えても同じようにプラネット・ピニオン・ギアとリング・ギアだけが空転する。今度はピニオン・キャリヤーに回転を与えてみよう。リング・ギアとサン・ギアのどちらかが静止したまま、あるいは両方を空転させながら、プラネット・ピニオン・ギアがサン・ギアとリング・ギアの間で自転しながら公転するようになる。
 いずれにしろ、駆動力を与えても、それを他のギアを介して取り出すことはできない。これが中立(ニュートラル)の作用である。

 2.直結(ダイレクト・ドライブ)
 マニュアル・ミッションでもト ップ・ギアは直結である。プラネタリ・ギアでも3つのギアのうち、いずれか2つのギアにペアを組ませお互いが回転しないようにロックすれば、トップ・ギアの直結と同じ働きをする。この場合は、3つのギアが一体となって回転するわけだ。
 たとえばリング・ギアとプラネ ット・キャリヤーをなんらかの方法で一体にしてしまう。この場合はサン・ギアに駆動力を与えると、プラネット・ピニオン・ギアは公転を強いられる。しかし自転はできない。だからプラネット・ピニオン・ギアとかみ合っているリング・ギアもプラネット・キャリヤーと同じ方向に一体となって回転するようになる。
 このようにして入力の回転数はそのまま出力の回転数となる。なぜならプラネタリ・ギア機構全体が一体になって回転するからだ。

 3.増速作用(オーバー・ドライブ)
 プラネタリ・ギアの増速作用には2種類ある。その一つは、サン・ギアを固定し、ピニオン・キ ャリヤーに駆動力を与える方法である。この場合は、ピニオン・キ ャリヤーの各ギアのシャフトがサン・ギアのまわりを周回転する。つまりプラネット・ピニオン・ギアは、シャフトとともに公転するようになる。
 しかし、サン・ギアが固定しているのでプラネット・ピニオン・ギアは自転する。
 つまり、ピニオン・キャリヤーが右方向に回転する場合は、プラネット・ピニオン・ギア自体が右方向に自転し、リング・ギアの歯を回転方向に押し込みながら公転することになる。その結果、リング・ギアはピニオン・キャリヤーよりも速く回転するわけだ。
 今度はリング・ギアを固定してプラネット・キャリヤーを駆動する方法を用いてみよう。この場合もプラネット・ピニオン・ギアがサン・ギアの歯を回転方向に送り込んでいくから、当然プラネット・キャリヤーよりも駆動されるサン・ギアの回転のほうが速くなる。これも増速作用として利用できるわけだ。
 さて、このように増速作用には2つの方法を用いることができるが、はたして、どちらの方法が大きな増速作用を得られるかが問題である。
 どちらの場合もプラネット・キ ャリヤーに駆動力を与えるという条件は同じである。つまり、サン・ギアとリング・ギアのどちらから回転をとり出したほうが増速率が高いかが問題になる。

 4.減速(リダクション)
 増速作用に2通りあるのと同じように、減速作用にも2種類の組み合わせを用いることができる。
 その一つの方法は、まずサン・ギアを固定することだ。そして、今度はリング・ギアに駆動力を与えてみる。するとプラネット・ピニオン・ギアは自転を始めるが同時にサン・ギアのまわりを公転するようになる。
 これは考え方を変えると、リング・ギアの内側に沿ってプラネット・ピニオン・ギアが反対方向に自転することになる。だから、当然、回転運動するピニオン・キャリヤーの回転速度は遅くなる。そして2つのギアの回転差はプラネ ット・ピニオン・ギアの自転で吸収されると考えることができる。
 だからリング・ギアの自転数よりもアウトプットとなるピニオン・キャリヤーの回転速度は遅くなるので、これを減速作用としてトランスミッションに利用できる。
 今度はリング・ギアを固定し、サン・ギアに駆動力を与えて見よう。ピニオン・ギアは自転するが、それだけではなくリング・ギアの内面にそって公転するようになるので、ピニオン・キャリヤーも回転する。そして駆動するサン・ギアよりもピニオン・キャリヤーの回転のほうがだいぶん遅くなる。これもトランスミッションの減速作用として利用することができる。
 さて、この場合もリング・ギアに駆動を与えた時と、逆にサン・ギアに駆動を与えた時とでは、どちらが減速比が大きくなるかが問題になる。

〔逆転時の作動原理〕

 5.逆転作用(リバース)
 逆転作用には減速する方法と増速する方法とがある。
 ピニオン・キャリヤーを固定して、リング・ギアに駆動力を与えると、プラネット・ピニオン・ギアは自転だけしてアイドラー・ギアの役目を果しサン・ギアに回転を与えることになる。
 これはマニュアルミ ッションのリバース・ギアの組み合わせと同じ作用だ。ただし、大きなリング・ギアで小さいサン・ギアをまわすので逆転増速作用となって作動する。
 今度はキャリヤーをそのまま固定し反対にサン・ギアを駆動してみよう。同じようにプラネット・ピニオン・ギアは自転だけするようになるので、アイドラー・ギアの役目をし、リング・ギアは受動の働きをする。ところが今度は、小さなサン・ギアで大きなリング・ギアを回転させるので、リング・ギアの回転は逆転し、しかも減速作用をすることになる。
 これらのギアは、いずれもブレ ーキ・バンドやクラッチによって操作される。

この記事はいかがでしたか?

気に入らない気に入った

グーネットピット編集部

ライタープロフィール

グーネットピット編集部

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

車検・点検、オイル交換、修理・塗装・板金、パーツ持ち込み取り付けなどのメンテナンス記事を制作している、
自動車整備に関するプロ集団です。愛車の整備の仕方にお困りの方々の手助けになれればと考えています。

この人の記事を読む

img_backTop ページトップに戻る

ȥURL򥳥ԡޤ