故障・修理
更新日:2019.09.08 / 掲載日:2019.09.08
目指せ30万km! オンボロジムニー快適化計画 その11
2インチアップのスプリングに交換した時から横方向のズレが生じていたジムニー。足回りの調整と、手付かずになっていたステアリング回りのリフレッシュも同時に行った。
1981年に登場したSJ30型から引き継いだ四角いボディを持つJA22W。パーツの少ないコイルバネと、ギア比の高さが災いしてマニアからはそっぽを向かれた不人気モデル。この取材時の走行距離は236,790km。
走行性能の仕上げメンテはステアリング系
ショックアブソーバーの交換やブレーキのOHで、走りの性能は新車を超える仕上がり(?) になってきたジムニー。市街地はもちろん悪路から高速道路での長距離走行もバンバンこなし、シーンを問わないマルチパーパス性能を発揮している。この冬は頼もしいパートナーになってくれそうだ。
そんな中、いまだ手付かずとなっていたのがステアリング系だ。2インチアップのスプリングで車高を上げたのはいいが、ジムニーは前後ともリジッドアクスルで、横方向の位置決めはラテラルロッドで行われている。この方式だと、車高を基準から変えてしまうと、デフハウジングの位置がずれてしまうのだ。これに伴って、ステアリングセンターも微妙にズレてしまっている。ステアリングギヤボックスは、ボールナットとも呼ばれるもので、トラックではいまだに主流だが、乗用車では廃れた形式だ。このギヤボックスは、キックバックには強いものの、センター付近の遊びが多く、直進でも常に微修正が必要なタイプ。そのため、多少のセンターズレは気にならないとはいえ、そろそろ調整しておきたいところだ。
ステアリングのロッドの配置は独特で、フレームの右前にあるギヤボックスのピットマンアームからドラッグロッドが左車輪の前側ナックルアームに接続されている。さらに左車輪の後ろ側にもナックルアームがあり、そこから右車輪へと繋がるタイロッドがある。そのため、トーイン調整は、車輪の後ろ側にあるタイロッドで行い、ステアリングのセンター出しは、ドラッグロッドで行うことになる。ちなみに、リーフスプリングのJW11ではタイロッドも車軸より前側に配置されている。
今回は、だるいステアリングをシャキッとするため、ボールジョイントを交換し、ギヤボックスの遊び調整やセンター出しを行い、同時にデフハウジングの横ズレも補正する。
ステアリングのガタツキを解消
ググッ外れない
サビが……
ギヤボックスにもオイルが必要!
最近の乗用車ばかりいじっていると、古い形式のギヤボックスがかえって新鮮に感じてしまう。ボールナットのギヤボックスには遊び調整機構があるので、ギヤボックスで発生している遊びはある程度少なくできる。また、ギヤボックスには潤滑用のギヤオイルが入っているが、この量が正しいかもチェックできる。しかし、車両に付いた状態だとオイルのフィラープラグが外せるか不明なので、思い切って取り外すことにした。今回はステアリングシャフトとギヤボックスの途中にあるゴムのプレートを交換することもあり、接続されるシャフトやロッドをすべて外すなら、ギヤボックス自体も外したほうが早いということになった。
ギヤボックスの上面には、四角い頭部を持ったフィラープラグがある。これは、ブリーザー(通気口)も兼ねているので、金属板が被さっているがボルト自体は樹脂製だった。ネジはテーパー型で古いので折れないか心配だったが、ゆっくり回すと外すことができた。オイルの汚れは見られなかったが、量が少し減っているようなので補充しておいた。
遊び調整は、上部にあるロックナットの付いたボルトで行う。ギヤボックスを直進状態にして、マイナスドライバーで調整ボルトを止めた状態でロックナットを緩め、そのまま調整ボルトを締め込んでいく。ボルトが軽く止まる位置まで締め込んだら、指でステアリングシャフト側の軸を回して、中立付近に極端な渋さがないかを確認し、問題がなければロックナットを固定する。これは慣れないと分かりづらいので、調整ボルトを強めに締め込んだり、逆にストップした位置から1/8回転くらいずつ戻したりして、直進部の動きがスムーズで遊びが一番少ないところを探すとよい。この直進部が大事で、ボールナット式は可変ギヤレシオでステアリングを切ったところの遊びは直進時より多くなってしまう特性がある。それ故に切った状態で遊びを詰めてしまうと、直進部が渋くなりすぎるのだ。
ラテラルロッドを変更&長さを調整
ステアリングの中立を慎重に出す!
真っ直ぐに
アクスルハウジングの横ズレから修正する
足回りの調整は、車高アップでズレたデフハウジングを車体の中心に戻すことから始める。まずは、調整式リンクの装着だ。車高を上げている場合は、純正より長くすることになるが、簡易的ながらも少し凝った方法をテストしてみた。ジムニー程度なら、ボディとタイヤの左右クリアランスを目視で調整してもいいのだろうが、今回はフレームから中央位置を割り出して、それに対して左右のホイールが均等になるよう位置を狙ったのだ。フロント側はホイールとフレームの間隔をスケールで測るだけでもかなり追い込める。一方リヤは、フレームの形状からホイールとのすき間を測るのがやりにくかったので、フレームの中心線に下げ振りをぶら下げて、地面側からセンター位置を規定し、そこからホイールリムが左右均等になるようにロッドを調整した。あくまで、「簡易的」なのは、地面が完全に水平でないことやホイールやフレーム基準点のゆがみなどの要因が除去できないからだが、調整量自体は2mm以内で精度が出せていて、タイヤとボディの左右バランスもバッチリだった。
次は、トーインとステアリングのセンター調整。トーイン自体は、フロントも車軸式で左右輪が一本のタイロッドで繋がっているので、リフトアップした状態でもトーインをほぼ規定値に調整することが可能だ。ただし、サスペンションが伸びるとステアリングのセンター位置が変わったり、逆にタイヤ側が動いて直進状態でなくなる場合もあるので、最終的には接地状態でチェックする。なお、今回はタイロッドエンドを交換しているので、中立位置をキチンと出すことも行った。まずはピットマンアームが車両前後の中心線に対して真っ直ぐになるように、フレームとピットマンアームの平行度を測り、ステアリングのロックtoロックから左右の中心を割り出した。そうすると、ハンドルの位相が全く違うことが判明したので、一旦ハンドルを抜いてスプライン位置をずらしてやった。
左右均等に
ずらして調整
交換しなかったブレーキホースを交換
フレームとボディ間にゴムホースがある
前々回は車高アップ後にブレーキホースをロングタイプに交換したのだが、その時に見落としていた部分があった。それがブレーキのマスターシリンダーの下側深くにある2本のゴムホースだ。長さは20cmあるかないかというところだが、ホースの配置が上下方向に沿わせてあって、エンジンルームをちょっと覗いたくらいでは見えにくい状態になっていた。
このゴムホースはマスターシリンダーからの配管がボディから出ていてボディの下はフレームとなるために、互いの動きによるズレを吸収するために設けてあるようだ。最近のクルマだと、ABSユニットからボディ側配管の中間でこのような短いホースを見かけることがある。この場合は、ABSの作動音を遮断するのが目的だろう。それはさておき、車輪側のホースが新品となり、マスターシリンダーからホイールシリンダーまでOHされたことを考えると、ここだけ古いのはマズイ気がする。もっとも走行中に上下する車輪側と違ってホースの曲げは僅かだが、エンジンルームにあるので、熱的な影響は受けているはずだ。
ということで、またしてもブレーキフルードのエア抜きをしなくてはいけないので正直なところ気が重いのだが、ボディ~フレーム間のホース交換を決行することにした。これがなかなかに交換しづらい上に、固着も激しい。マスターシリンダーからの金属パイプは全部外し、ボディ側のブラケットとフレーム側にある分岐部がくっついた状態で取り外し、工具をしっかり掛けられる状態にしてからホースを交換した。それでも、車体から外したことで固定しづらくなったので、最初の緩めはブラケットや分岐部を万力に固定しなければならなかった。
ホースは表皮にヒビ割れ一つなく、多分替えなくても大丈夫な状態だったが、これでブレーキペダルの踏面ゴムからブレーキの摩擦面まですべてに手を入れたことになる(ディスクローターとリヤドラムは継続使用)。
【オマケコーナーJA22通信】なぜ排気バルブは割れたのか
冷却水メンテ不良が溶損の原因になる!?
オンボロジムニーのオンボロたるゆえんの一つが、購入時に抱えていたエンジン不調。その原因は2番の排気バルブ溶損による圧縮抜けだった。その他にも、スパークプラグの中心電極溶損、オイルの大量燃焼、大量スラッジなどもあり、スクラップにしたほうがいいくらいだった。
2番の排気バルブが溶けた理由はいろいろあるだろうが、今回、情報筋から有力な情報を得たので再考察したい。このエンジン(K6A)はワゴンRなどでは横置き搭載されるが、同じ排気バルブのトラブルでも2番や3番で発生しやすいそうだ。この違いはエンジンの搭載角度である。縦置きのジムニーは前側が高く傾斜角があるが、横置きエンジンは水平である。これによって、冷却水にエアが混入している場合のエア溜まりの位置が変わってくるそうだ。ヘッド内の冷却水通路にエアがあると、最も冷やすべきヘッドの放熱ができなくなり、その結果ノッキングを起こしたり、排気バルブ周辺の冷却不足を誘発してしまうそうだ。このジムニーはラジエーターキャップのフィラーネックにすき間があって、ラジエーターの加圧も正常ではなかったから、ヘッドの高温部で部分的な沸騰を起こしていたことも十分考えられる。そんなことで、冷却系にトラブルがあったまま使用したり、冷却水交換後のエア抜きが不十分だと放熱性が著しく悪化して、バルブ溶損や異常燃焼を起こす原因になる。
また、K6Aは補修部品で排気バルブの変更が行われている。この目的は標準バルブの不具合対策というより、配送車(○帽など)の対策が主だったようだ。軽だと高速走行では高回転を常用することになり、排気バルブは赤熱した状態となるが、初期型の設定では耐熱性が低かったらしい。軽自動車はチョイ乗り専門となれば暖機もろくに行われず、これはこれで過酷。反対に長時間フルパワーで使われることもあるなど負荷の範囲が広すぎて耐久目標の設定に難しい面が多いようだ。