板金・外装補修[2019.01.13 UP]

ヨタハチ[TOYOTAスポーツ800]のトンデモサビ撃退プロジェクト

1965年に発売されたモノコックボディを持つ小型スポーツカートヨタ・スポーツ800。50年以上経過した車両は錆が心配。ということで、下回りのチェックと錆対策を行うこととなった。

関連情報

国産車 メンテナンス・整備・修理
TOYOTAスポーツ800
通称ヨタハチこと「トヨタ・スポーツ800」、現在でも通用する引き算のデザインを感じてカッコイイ。世界に通用するクールなトヨタデザイン。

100年元気でいられるようにヨタハチの健康診断を行う

 AM読者の皆さんであれば、クルマの錆がどんなに厄介なものかよくご存じだと思う。フェンダーに見つけたちょっとした表面錆や浮き錆でも、いざ修復するために塗装を剥がしてみたら塗装の下で想像以上に進行していて、フェンダー全面塗装に発展することは決して珍しいことではない。錆修理は本当に手間(お金)がかかるため、錆びさせないことが重要になる。とはいっても、そもそも鉄とは酸化鉄に“製錬”という人の力を加えた化学的に不安定な状態にあるため、塗装もなにもせずに放置しておけば時間の経過とともに酸化してもとの安定した状態に戻ってしまうのは自然の摂理。自然の力には、抵抗しがたく塗装や防錆皮膜やシステムに何らかの欠損や劣化が生じるとそこから鉄本来の錆びやすい性質が姿を現すことになる。自然の摂理に反し、錆を止めるというテーマはクルマが金属でできている限り(アルミだって腐食する)永遠のテーマだといえる。

 トヨタ・スポーツ800オーナーズ協議会の代表を務める杉山氏から「このクルマが100年元気でいられるように、車体内部の状態を検査できないだろうか?」という錆PTSDのボクにとってミッション・インポシブルな話が! そこで、胃カメラ検査に使用するような先端が自由に動くタイプの本格的な工業用ファイバースコープを駆使してサイドシルやサイドメンバー等の閉断面構造内部の状態を検査することにした。約3000台製造されそのうち900台が現存。貴重な一台のこのヨタハチ君、なんとフェンダーはアルミを打ち出したワンオフ・フェンダーに交換され塗装の品質もオリジナルの雰囲気のよいコンディション。オーナーもボクも「多少の錆は見つかっても、内部防錆の処置で錆の進行は抑制できるレベル」と予想していた。はたして日本の自動車産業界にとって歴史的なアイコンであるヨタハチ君の内視鏡検査結果はいかに? リフトアップしてみると、パネルの合わせ目等が錆色に染まっていた。

まずは全体的な錆検査
事故修理箇所は錆に弱いので塗装やパテ跡から鈑金歴を推測。旧車では鈑金歴は当たり前なので“どのように修理したか”が重要。

まずはフロア全体の錆の状態をチェックしよう

錆探知犬!? どうも錆が多いクルマのトランク等は、鉄分の多い鉄鉱泉の温泉水のような臭いがすると感じるボクって重症な錆PTSDです。

ここはOK。

このような定番錆発生箇所には、錆や以前に錆修理をした痕跡は見当たらないので基本的に車体はしっかりしている印象を受けた。

これはオリジナルなのかな? トランク側面には硬質なデッドニングが分厚く塗布されている。オリジナルか不明だがトランクやエンジンルーム内部には、錆はなく上屋の状態はよい。

錆の程度が不明のクルマをリフトアップする時は、ジャッキアップポイント付近が錆で強度が低下していないか確認しないと落下することもあるので注意。

リフトアップ時の荷重でシル部が変形し塗装が剥がれてそこから錆がスタートすることは多い。また旧車ではジャッキアップポイント自体が分かりにくいので注意。

下回りには錆が多い印象を受けた。海岸沿いの道路を走行した際の塩分による錆の可能性はあるが半世紀の車齢を考慮すれば“年相応”レベルか?

フロントフェンダーの取り付け部にも
アルミ製のワンオフ製作フェンダーが装着されているために深刻な腐食はないし、サイドシル側には錆が目立つが穴開きに進行するほど悪性な印象はない。

リヤのホイールハウスは軽度
リヤのホイールハウスまわり、パネル合わせの錆がサイドシル内部から表面化した錆だとすると、対処が難しいということになる。至急内視鏡検査が必要!

工業用ファイバースコープで内部を検査

ノックスドールを輸入する(株)創新から北米ウェルチアレン社の工業用ファイバースコープを特別にお借りした。先端が手元のジョイスティックで動かせるので画面を見ながら奥に進める。

サイドシル後部の穴からプローブを上方に向けて挿入。画像やプローブが車体に当たるコツコツという音から位置と撮影方向を確認。

プローブに10cmごとにマークを付けて、先端位置を把握するためにプローブの侵入穴(水抜き穴等)から検査範囲の寸法範囲を測定。

車体整備書等で閉断面の構造を把握したほうが検査精度は高まるが、ヨタハチのサイドシル内部はシンプルな構造なので検査自体は簡単。

半世紀のヨタハチ君の生活習慣が問われる時がやってきた。閉断面構造部の錆の補修は非常に難しいので深刻な錆がないことを祈る。

サイドシルの内部をチェック
【1】過去にキャビティワックスが塗布された形跡はない。1と3のようにシル内部は表面錆に覆われている。

【2】2の黒い点状のシミは、鈑金修理時の溶接跡で錆は発生していない。

【3】シル内部は比較的乾燥していたと推測。

リヤウインドウ下部
サイドシルと比較すると錆は驚くほど少ない印象。下回りの錆は、水抜き穴等から走行中の水飛沫がサイドシル内部に浸入することが原因か?

ホイールアーチの合わせ目
右側のカーブしている側がタイヤ側だが、ホイールハウスのパネル合わせ目も錆発生定番箇所だといえるが幸い錆はない。

だんだん暗い顔になるオーナー
サイドシルに関しては「年相応の錆ですので手術せずにお薬で様子を見ましょう」というところだが、検査するボクも胃が痛くなってきた。

サイドメンバーの内側は深刻な錆が隠れている?!

 凍結防止剤が散布される地域のクルマの内視鏡検査をすると、自車が巻き上げた“塩水”によって深刻な錆はリヤまわりに集中しているケースが多いと感じる。この湘南ナンバーのヨタハチ君も多少なりとも塩分の含まれた道路を走行しているのでサイドシル後方から検査した。半世紀の時の流れや、当時の防錆技術を考慮すれば“年相応”と感じる錆が発生していた。若干錆が進んでいると思われる周辺を外側から押しても“錆による板厚”の低下は感じられないので、サイドシル内部は軽度の浮き錆や表面錆のレベルに留まっていると感じた。ほっとしながらフロントのサイドメンバー内部の点検開始。ところが普段では絶対に見ることができない右のサイドメンバーがファイアーウォールに溶接されている箇所までファイバースコープを挿入するとなにやら、大量の茶色のフレーク状の物体が画像一杯に映し出されボクは声を失った。映し出されているサイドメンバーの外側に目立った錆はないが、よく観察するとサイドメンバーの下に塗装が浮いてきたような微かな亀裂を発見。恐る恐るハンマーで叩いてみると裏側に錆が進行し板厚が低下しているような打音の変化を感じたのだが、ボコッとハンマーがめりこむような状態ではなく、ホッ。ところが、叩く振動によってサイドメンバーの横の塗装の一部が剥がれて深刻な錆被害が表面化! これは内側から進行した錆による錆穴被害で発見が非常に難しい。

ファイバースコープ挿入!
サイドメンバーとファイアーウォールの合わせ目付近には不思議なことに水抜き穴がない。

錆の温床になっていないことを願って左側から検査開始。

内部はどうなってる?
上の写真のパイプ内部のアイドラーアーム取り付けボルトが貫通するその付近には錆はない。

さらにファイアーウォールまで進むと水がたまった形跡があるが深刻な錆ではない。

深刻な錆発見!
次に右側のサイドメンバーを検査。ファイアーウォール付近までプローブを進めると目を疑うような深刻な錆被害が広がっていた。これは浮き錆なんてレベルではなく、錆によって鉄が崩れ落ちた残骸。

なんじゃこりゃ!?
なぜ右側サイドメンバーだけこんなに酷い錆が発生したのだろうか?

錆が発生した理由を追究せずに防錆処理をしても再発リスクは高い。過去の車体補修歴を疑う。

不安そうなオーナー

ここはしっかりしている
微かな塗装の亀裂を発見。よく見ると右サイドメンバーは過去に鈑金修理が行われた形跡がある。昭和の時代キャビティワックスは一般的でなかったから仕方がないか……。

オーナー自らチェック
メンバー側面の塗装が剥がれて錆が現れた。その錆をドライバーで削り落としていたら…どんどん深くなり……。

あ!あーっ!
ズボッ、ドライバーが刺さった! ヨタハチ君の致命的な錆を見てボクは腹痛に襲われトイレに駆け込む。

杉山氏は、一心に錆穴の内部を探り続け、錆粉がザッー。スタッフ全員が青ざめた。

早急に錆対策だ!

トヨタ自動車大学校の校長も務めたご経験のある杉山氏。「ここに水抜き穴があればこんな事態に……」と自らドリルを持ちご執刀。究極のカイゼンをする。

さぁ徹底的に防錆処理をしよう

700は浸透能力が高い内部防錆剤。軽度の錆であれば多孔質の錆内部に浸透し錆を抑制。300はワックス系アンダーコート。オートプラストンは厚塗りビチューメンベースのアンダーコート。

右サイドメンバー内部には、700スプレーに専用ノズルを装着し錆の進行を抑制。錆が酷い右サイドメンバーにも塗布し応急処置。塗布し過ぎで水抜き穴を塞がないように。

まずは内部の防錆から。

軽度の防錆は……
防錆剤が錆の奥深くまで浸透するような軽度の場合には700を塗布。その後にふき取り、その上に300を塗る2重防錆が基本となる。

アンダーフロアの錆は周辺のアンダーコートを剥がして錆の広がりを確認。表面錆に留まっている箇所は浮き錆を落として700を塗布後300で保護する。

ヨタハチ君のQOLを 考慮すれば最善策だ
パネル合わせ目内部にも錆が進行? 徹底的に修理するためにはパネル溶接を剥がし再溶接することになるが修理するリスクも伴う。温存療養が現時点での最善策だろう。

浸透性が高い防錆剤で錆の進行を抑制しよう

 比較的軽度な錆でも、完全に錆を落としてから防錆塗装を施すことが錆処理の基本。とはいっても、サイドシルのスポット溶接を剥がし、錆処理後に溶接をしなおすという大仕事になってしまう。またそのような溶接部分の防錆対策は非常に難しいために、錆は落としても逆に錆びやすい環境を作ってしまうジレンマに悩むことになる。ただ今回のような強度に影響がないと思われる板厚の目立った低下が確認できない表面錆レベルであれば、大がかりなパネル交換作業を行うより防錆剤によって錆の進行を抑制し“これでしばらく様子を見ましょう”という治療が現在でのベストチョイスだと思うのだ。今回使用したノックスドール700は、非常に浸透性が高いことが特徴のワックス系の内部防錆剤(キャビティワックスとも呼ばれる)で、パネルの合わせ目内部に浸透し錆防止剤とワックス系の柔軟性の高い皮膜によって水分や酸素を遮断することで優れた防錆性能を発揮する。またその優れた浸透性によってミクロ的に見た錆の多孔質内部にも浸透するために軽度の錆であれば進行を抑制する効果が期待できる。一般的にワックス系防錆剤はしっかりと塗り忘れのないように厚く塗ることが重要になる。ただし閉断面やドア内部に塗布する場合は、塗布し過ぎて水穴を塞いでしまうという副作用(P115囲み参照)も引き起こす可能性があるので、水抜き穴が塞がれていないかダブルチェックしたい。

錆は……
右サイドメンバーの穴は、車体強度に関連するのでこのままでは車検で問題になる。

オートプラストンで防水処理を施し次回の修理を待つことにする。

ノックスドールの技術指導を行う與座氏によると「推奨膜厚を確保しないと本来の性能を発揮できません」。1リットルガンだと厚塗り防錆がしやすい。

完了!

アンダーコート用300をかなり厚く塗布しているのがお分かりいただけるだろうか。しっかりと厚く塗るのが基本だが水抜き穴等を塞がないように注意。

リフト中は塗布できないジャッキポイントにタッチアップ。一病息災ならぬ一錆息災で錆の進行に注意してボディメンテを続ければ100歳も可能だと信じますよ。

今回使用したのはクリアタイプのアンダーコート。ブラックと異なり塗り残し確認が難しいが塗膜の厚さは把握しやすい。防錆能力には色による違いはない。

ベンツちゃんことハリーズW123の内視鏡検査と防錆

W123も同様に内視鏡検査すると、サイドシル等の閉断面には錆の発生は見られなかったが、泥が堆積した部分の下には写真のような錆を見つけた。パネルの合わせ目なのでしっかりと防錆ワックスを奥深く浸透。ところが暫くして錆の再発がないか点検するためにライナーを外すと写真のような青の洞窟状態! 錆再発は怖いが、過ぎたるは及ばざるが如し。

雨の少ないカリフォルニアでの使用とワックス系防錆剤のおかげで錆は少ないが、検査中にワックスがプローブのレンズに付着する。

表面錆をハンディサンドブラスターで落とそうと試みたが、ガラスビーズが飛散して作業環境は最悪な事態に!

ホイールベアリングが……(汗)

ブラスト処理でも錆取りケミカルでも隙間内部の錆を落とすことは難しい。現時点では浸透性の高い防錆剤によって錆の進行を抑える。

ノックスドール700を浸透させふき取った後にノックドール・オートプラストンを厚く塗って隙間を保護することにした。

その上にさらにノックスドール300を塗って完全防備! この部分の裏側は室内でシーラーが塗布され密閉されているので未処理。

塗布し過ぎてフェンダー下部の水抜き穴が塞がってウインドウウォッシャーがたまっていた! 爪楊枝で水抜き穴をホジホジして解決。大切なポイント。

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