車検・点検・メンテナンス
更新日:2018.07.05 / 掲載日:2018.07.05
エアコン復活塾 基本編
梅雨や夏の酷暑でフル稼働している時にエアコンが故障すると大変。そこで、これだけはやっておきたいお手軽チェック&メンテンスポイントを挙げてみた。
異常がなくてもチェックしたい基本パーツ
うっとうしい梅雨のジメジメや夏の照りつける暑さを防いで快適な車内空間を作ってくれる便利な装置がエアコンだ。通年で使われることも多いのだが、外気温がピークとなる夏はメカにかかる負担も大きくなり、ノーメンテでは思わぬトラブルに見舞われることもある。エアコンがフル稼働する時期に故障すると、修理工場も混んで時間がかかることも多くなるので先手を打っておくのが大切だ。まずはエアコンフィルターだ。見えない位置にあるために何年も使っている人もいるが、毎年1回は汚れ具合を見て必要があれば交換しておく。通気抵抗も減るので冷えもよくなるはずだ。
ハード面では、コンプレッサーの駆動ベルトがある。ベルトもメンテナンス期間が長くなっていて10万km以上持つことも珍しくないが、エアコンを使うとバッテリーへの負担も増える。これは室内のブロワーもあるのだが、コンデンサーを冷却するための電動ファンの消費電流が多いことが主な理由だ。アイドリング時の発電量が小さい車では、バッテリーが放電気味になってしまうことがあるので、できればエアコンオンのブロワーHi、ヘッドライトオンの状態でバッテリーの電圧を測っておきたい。13Vを切ると放電側になるのでその際はブロワー風量を下げるような使い方をすればいい。
コンデンサーへの風当たりはできるだけ強くしてやる
エアコンのコンデンサーはフロントのグリルおよびバンパーの後ろ側にある放熱器で、高圧ガスを冷却して液冷媒に凝縮する役目を持っている。外気が直接通過するので砂ボコリや虫などの異物が付着している。これが表面はもとより、フィンの間にも挟まり、これ自体がエンジンルームに入る空気のフィルターのような状態にもなっている。エンジンのエアフィルターだって長期に使ったものは目詰まりが増え、最終的に交換するわけだから、コンデンサーだって何らかのメンテをすれば放熱性能が回復するはず。また、コンデンサーの周辺にあるスポンジやゴムも加水分解や熱、オゾンなどで経年劣化して、ボロボロになってきて、コンデンサーへ当たるべき風量が減ってくることも多い。
そこでリフレッシュ策として、コンデンサーの洗浄を行ってやる。軽く洗浄しただけでも黒いすすぎ水が出てくるので、かなり汚れていると考えられる。バンパーを外して作業すれば、全体が洗えるのでさらに効果が上がる。そして、傷んでいるスポンジやゴムがあれば、ホームセンターで売っている隙間風防止テープを貼って周囲をしっかり埋めてやる。
コンデンサーの放熱性を改善するとエアコンの冷えの他、燃費向上にも繋がると考えられる。なぜなら、コンデンサーの放熱性がよくなると高圧側のガス圧が低下するからだ。つまりそれだけコンプレッサーにかかる負荷が減るので、駆動トルクが低下しエンジンもラクに回るという図式だ。
コンデンサー自体も少しずつ劣化するので、冷媒漏れがなくてもあまりに古いものでは洗うより交換したほうがよいだろう。アルミのフィンが薄く酸化してボロボロになっていたり、チューブから剥がれていたりすることもあるからだ。
冷えが悪いから冷媒補充するのは禁物
アフターマーケットのサービスでは、「ガス補充して冷えを回復!」みたいなPRもあるが、安易な補充は避けるべきだ。もちろん冷媒不足を起こしている時は、足せば冷えが回復することが多いのだが、そもそも冷媒は短期間で減少するものではなく、正常なら10年ほど経ったクルマで少し補充する程度のレベル。毎シーズンなんてもっての外だし、2~3年程度でもまず必要がない。少々の漏れなら冷媒を足し続けたほうが安上がりという考え方もあるが、冷媒は温暖化ガスなので(最新のR-1234yfは別だが)ムダな放出は避けたいし、冷媒だけの補充はコンプレッサー焼き付きなどのトラブルという致命傷を招きやすいので、本来は慎重に行うべきものなのだ。
特にコンプレッサーが焼き付いたり、潤滑不足で内部の摩耗粉が大量に発生すると、それがサイクル内に回って、結局はコンデンサーやエバポレーターなどの交換まで必要になる。つまり修理費が非常に高額で、下手するとエアコンの寿命イコールクルマの寿命となりかねない。
冷媒漏れのチェックとなると、もはやプロの領域となるが、リーク検知器などを買えばDIYでもある程度の調査は可能。機材があれば誰でも出来るというわけではなく、かなりの熟練度必要とするが、自分のクルマで時間をかけられるのであればバンパーなどを外して隠れた部分の調査をじっくり行うことができる。なおDIYでの漏れ調査例は、エアコン特集後半部でも紹介する。
DIYでの冷媒チェックではサイトグラスの状況を見るのがよいだろう。コンデンサーのオン・オフと連動して、サイトグラスに流れる冷媒が見えるがサイトグラスの内部が透明であれば正常と判断できる。いつまで経っても泡が混じったり、白濁している状態は冷媒が不足している可能性がある。この場合も、コンデンサーの冷え不良などの要因があるので、おかしいと思ったら電装専門店に依頼して判断してもらったほうがよい。
テスト条件は、ドア=全開、設定温度=LO、エンジン回転数=2000rpm、ブロワ-スピード=HI、A/C=ON。エアコンを診断する場合は、上記のような条件にして10分ほどしてからゲージやサイトグラスをチェックする。もちろんエアコンONからゲージやサイトグラスの変化は見ておく。
サイトグラスの診断の仕方。サイトグラスはエアコン作動時だけでなく、オフ直後の状態を見ることで、冷媒過充填の判断材料にもなる。また、現在のエアコン(サブクールサイクル)は冷媒充填時にサイトグラスが透明になってから、もう1段階充填するので質量による冷媒量測定が大切になる。つまり適切な機材を持つプロに任せたほうがよい。
症状別チェック
症状/冷媒量/処置
サイトグラスに気泡がある/不十分/ガス漏れがないか確認し、必要であれば修理する気泡がなくなるまで、冷媒ガスを注入する
サイトグラスに気泡がない/ない、不十分、多すぎる/(*1)と(*2)の症状を確認する
コンプレッサー吸気口と排気口の温度差がない(*1)/空またはほとんど空/ガス漏れがないか確認し、必要であれば修理する気泡がなくなるまで、冷媒ガスを注入する
コンプレッサー吸気口と排気口の温度差が著しい(*2)/適正または多すぎる/(*3)と(*4)の症状を確認する
エアコンを切った直後、サイトグラスの冷媒ガスが透明のままである(*3)/多すぎる/冷媒ガスを排出する。エアを抜き、適正な量の新しい冷媒ガスを注入する
エアコンを切った直後、冷媒ガスが泡立ち、その後透明になる(*4)/適正/ー
提供元:オートメカニック