メンテナンス・日常点検[2018.02.22 UP]

特集 その名を轟かす“孤高の存在” DELOREAN DMC-12

バック・トゥ・ザ・フューチャーで日本中に名を広めた「名車」は米国で企画され英国で作られたスーパーカー。

「デロリアン? あっバック・トゥ・ザ・フューチャーに出てきたアレ!」という感じで、クルマ好きはもとよりクルマに全く興味のない人でも知っているクルマがデロリアンDMC-12だ。ステンレスボディを身にまとい上方に跳ね上がるガルウイングドアを備えるデロリアン。ここではメンテナンスという視点から、さらに掘り下げてみたいと思う。

関連情報

カビ・錆 旧車 車体 シート タイヤ・ホイール 内装 メーター ラジエーター

映画を見てそのスタイルに惚れ込んだオーナー多し

 世界的に大ヒットとなったバック・トゥ・ザ・フューチャーに登場したことで一躍日本国内においても知名度が高まったデロリアン。圧倒的な動力性能を有したり、モータースポーツシーンで活躍したりといったクルマではないが、映画を観てスタイリングに惚れ込んだ熱狂的ファンが多い1台となる。
 そんなデロリアンは1975年にGMの副社長を努めていたジョン・ザッカリー・デロリアンが理想のクルマを作るためにDMC(デロリアンモーターカンパニー)を設立し、その1台目の市販車として(残念ながら最後の1台ともなる)1981年にデビューしたモデル。ファンを虜にするボディデザインはジウジアーロが手がけ、ロータスカーズがメカニカルな部分の設計を担当。プジョー、ルノー、ボルボが共同開発したRPV型のオールアルミ製V6エンジンを搭載し、生産は北アイルランドと、DMCこそ北米の企業だが、その中身は欧州圏の技術が投入されている。
 車両の造りはバックボーンフレームにFRPのインナーボディを載せ、その表皮に無塗装のステンレスパネルを貼り付けるというもの。エンジンをリヤエンドに搭載し、後輪を駆動するRR方式を採用する。真上に跳ね上がるガルウイングドアから入る車内は2シーターで、かなり着座位置が低いのが特徴。エンジン前方に搭載されるミッションは5MTのほか3ATも用意されていた。

●取材協力:デロリアンオーナーズクラブジャパン
今回デロリアンのメンテナンスについてお話を伺ったのがデロリアンオーナーズクラブジャパンの会長であり、デロリアンバイヤーズガイドの翻訳も担当された下原さんだ。今回はいつもメンテをしているというご自宅のガレージに伺い取材させてもらった。ちなみに下原さんも他の多くのデロリアンオーナー同様、バック・トゥ・ザ・フューチャーを見てデロリアンのファンになったそうで、映画に登場したアイテムもコレクションしている。
URL:http://www.geocities.jp/osamudmc2000/


かつては部品供給もままならず好調を保のが至難の業であったが、今では…

今でもその気になれば新車を手に入れることも可能

 「希少なクルマとよく言われますが、9000台弱が生産されたクルマですし、数は少ないですが専門店も存在します。日本にもDMC-JAPANという専門店が愛知にあるんですよ」
 と語ってくれたのはデロリアンオーナズクラブジャパンの会長を努めている下原さんだ。北米で出版されたデロリアンバイヤーズガイドの日本語版の翻訳を担当するなど、デロリアンのメカニズムにかなり精通している、オーナーのお一人となる。
 「デロリアンは、現在でもその気になれば、新車を製作することも可能です。安全基準などの問題で車検を取って新車として公道を走らせるには様々な障壁があるようですが、テキサスに新設されたデロリアンモーターカンパニー(1982年に倒産したDMCとは別会社)が2007年から新車の製造を始めています。同時に現在ではデロリアンのすべてのパーツを供給してくれています」
 ということは、現存するデロリアンは好調に走るものが多いのだろうか?
 「新車時からトラブルの多いクルマなので、時間とお金を掛けてレストアしたクルマでもトラブルが出ることが少なくはないです。私も乗り始めてから多くのトラブルに遭遇しました。これからデロリアンを購入される方であれば、ぜひ私が翻訳した本を読んで、できるだけ多くの車両を見て最良の一台を選んでいただきたいと思います」

エンジン リヤエンドに搭載されるエンジンは2849cc V型6気筒

エンジンはプジョー、ルノー、ボルボの3社で共同開発されたPRV型水冷V型6気筒SOHCをリヤエンドに搭載する。排気量は2849ccで最高出力は130hpと、発売が開始された1981年当時としても実用的なスペックとなる。

エアクリーナー

エンジンの真上に備わる樹脂製のボックスがエアクリーナーボックスとなる。ボルトで固定されたボックスを外し、裏側のクリップで固定される蓋を外すとフィルターが現れる。

オイルフィラーキャップとレベルゲージ

車体左側、エアコンのコンプレッサーの前方にオイルフィラーキャップとオイルレベルゲージが備わる。オイルフィラーキャップにはブローバイガスを循環させるホースが付く。

オプラグホールの水没に注意

純正のプラグコードにはプラグホール部への水の侵入を防ぐ形状となっているが、別形状の社外品もあり、それを使っているとプラグホール部に水が溜まってしまうそうだ。

燃料供給はボッシュの機械式インジェクション

PRV型エンジンの燃料供給はボッシュの機械式インジェクションが採用されている。この調整にはコツがあり、それを知らずに調整されてしまったクルマが不調に陥っていることが多いという。

スロットル付近に設けられたエアバルブを調整するのはNGで、機械式となるエアフローセンサーを調整するのがいいそうだ。

オルタネーターとスターター
エンジンの右側にはオルタネーターやスターターが備わる。オルタネーターは寿命が短いものが多く、一説にはプーリーに付くファンの風を送る方向が逆なことによる冷却不足が原因なのではという話もあるそうだ。対してセルのトラブルは少なかったが、リビルドする部品供給がなくなったため、現在は本体の代替え品で対応する。

電装系はコネクターに注意
エンジンルーム右前方の角に電気系統が集められ、カバーを外すと、点火コイルや多くのターミナルが設置されている。新車当時から電気系のトラブルが多いというデロリアン。生産されてから40年近いだけに、端子の金具本体やカプラー自体の劣化も進み、それが原因となる不調も多いという。大掛かりなレストアならハーネス自体を新品に交換してしまうのが手だが、そうでなければ端子部のみ新しいものに変更したい。

冷却系のトラブルは?
金色のプーリー部がウォーターポンプとなる。社外品が出回っているが、プーリーのベルトラインが異なるものがあるので、交換時には要注意な部分となる。車体前端に備わるラジエーターと電動ファンは、電動ファンがよく不動になるようで、オーバーヒート時にはまず疑う部品となる。

冷却水のリザーブタンクは本来樹脂製だがトラブルが多く写真のような金属製に交換されている車両がほとんど。

熱抜き穴から侵入する雨水がトラブルの元に
ルーバータイプのリヤフードとエンジンカバーを抜けてエンジンには雨水が侵入する。

それが原因でスロットル部の動きが悪くなるというトラブルがあり、当時のリコールで後付けのカバーが付けられた。

内装 年式相応のヤレ方だが、内張りはクリップやボルト固定ではないので補修が困難

シートの傷み
シートは表皮のヤレや縫い目のほつれなどが発生するものが多い。またシートバックのガタは当初からあったようだ。シートや内装色は生産時期により多少色が違う。

接着された内張り
Aピラー部の内張りの剥がれも、定番トラブルのひとつ。ちなみにこれらの内装部品は接着がほとんどで補修が非常に面倒。

樹脂パーツの割れ
エアコン吹き出し部なども備わるドア内張りに付く樹脂部。経年劣化による割れが発生していることが多いそうだ。ちなみに内側ドアハンドルには特に問題はないという。

バックボーンフレームにFRPボディが載り、さらにステンレスパネルを身にまとう

足回り フロントがWウィッシュボーンでリヤはトレーリングアームの組み合わせ

旧タイプのWウィッシュボーン
フロントのサスペンションはWウィッシュボーンを採用する。設計が70年代ということもあり、オーソドックスな構成のものとなる。前側にあるスタビライザーはボディ側取り付け部がリコール対象となっている。

ブレーキは前後ともソリッドディスクに対向2ポッドのキャリパーを備える4輪ディスクを採用する。

写真ではわかりづらいが、リヤ(右)の方がローター径が大きく、フロントの制動力が足りないようで、効きに難あり。

トレーリングアーム+アッパー&ロアIアーム
リヤはトレーリングアーム式。一般的なトレーリングアームはそれだけで車体と車輪を保持するが、デロリアンのものはさらにアッパーとロアそれぞれにIアームとなるリンクを備える。

ある意味マルチリンク的な構造となっている。

トレーリングアームの付け根が折れる
トレーリングアームの取り付け部が破損するというトラブルがよくあるそうだ。これは構造上の問題のようで、オリジナルの取り付けボルトの強度が低く、曲がったり、最悪折れて、アームを正しく保持できない。

フロントハブがそろそろ寿命に
ハブベアリングのトラブルも頻繁ではないもののよく発生するトラブルだという。前後でいえばフロントのハブベアリングの方がトラブルが発生しやすい。ガタや異音があれば交換する必要あり。

車速はフロントホイールの回転から機械的に
スピードメーターの車速のピックアップ。当時の日本車の場合ミッションから取るのが一般的であったが、デロリアンは左フロントのタイヤの回転から取っていた。そのためその部分のハブには車速をメーターに伝えるための部品が装着され、ナックル部にはスピードメーターケーブルが伸びる。

デロリアンのジャッキアップポイントは?
メンテナンスを行う際の基本となる車体のジャッキアップ。バックボーンフレームにFRP製インナーボディを組み合わせるという特殊な構成となるデロリアンのジャッキアップポイントはどこになるのか教えてもらった。まずはフロント側、基本となるのはフレームのクロスメンバー部でジャッキアップ。

リヤもフロント同様。ジャッキもリジッドラックもメンバーに掛けることが可能だ。

一般的なスチールモノコックフレームではNGとなるジャッキアップポイントではないフロア部(インナーボディ)にリジッドラックを掛けることも可能だそう。FRP製とはいえフロアはかなり分厚い作りとなっているようで、角であればリジッドラックを掛けても問題は無いようである。

外装 ステンレスのボディパネルはプレス時から変形あり(?)

チリは合ってなくて当然!?
ステンレスという素材を使ったためか、ボディパネルの仕上がりはかなりラフ。そのため各部のクリアランスを一定に組むのは困難で、新車時からチリが合ってないそう。

ボディパネルは樹脂製のボディ部に接着
FRP製のインナーボディにステンレスのアウターパネルを装着するデロリアン。そのアウターパネルはボルトによる固定部もあるが、基本的にはFRPのインナーボディに接着という方法で固定されている。

ガルウイングドアの不具合
ガルウイングドアはダンパーだけではなくトーションバーも併用し、開閉を補助してくれる。

ダンパーが抜けるトラブルは他車同様だが、デロリアンの場合ダンパーのボディ側取り付け部が写真のように変形するというトラブルもよく発生するそうだ。取り付け部はFRP樹脂に埋め込まれているため補修は非常に困難。

ドアアウターハンドルの破損
ドアハンドルは定番トラブル箇所。樹脂製のハンドルが割れてしまうそうだ。現在では金属製に変更されている車両がほとんど。

樹脂パーツの割れと歪み
フロントマスク部はウレタン樹脂製だが、経年劣化によりクラックが発生したり、部分的に変形したりしていることが多い。

サポートロッドの破損
エンジンフードを開いた際にフードを支えてくれるサポートロッド部。フード側の固定部が簡単に破損してしまうようで、下原さん車両も補修してある。

ラゲッジルーム内は メンテナンスホール多数

ポンプ部のガソリン&水の溜まりに注意
スペアタイヤ部のメンテナンス用カバーの奥には燃料ポンプ部と油量計センサーが現れる。燃料ポンプはゴム部品で装着されているが、その部品が経年劣化してくると、満タンにした時に燃料がにじみ出て凹みに溜まるという。またその部分に流れ込んでくる雨水が溜まらぬように、ビニールなどでカバーを備える必要あり。

ブレーキマスターシリンダーとステアリングシャフト
左側にあるメンテナンス用のカバーを開くとブレーキのマスターシリンダーが現れる(フルードはゴム製グロメット部から補充可能)。その奥にはステアリングシャフトや冷却水路などがレイアウトされる。

オープナーがトラブルに……
給油時にフロントフードをあける必要があるデロリアンだがオープナーのワイヤー(室内部)に難があり、開けられなくなるというトラブルが多く、下原さんは予備のワイヤーを自作。

メンテナンスリッドのナッター破損
メンテナンスホール用のカバーはボルト止めされているが、その受け側はFRPにカシめられたナッター。経年劣化してナッター部が機能しなくなってしまうことも多いようだ。


提供元:オートメカニック


  • twitter
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

グーネット SNS公式アカウント

車の整備は事前に予約 空いた時間を有効活用
タイヤ・オイル交換は かんたんネット予約
×
COPYRIGHT©PROTO CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.