オイル交換
更新日:2017.12.08 / 掲載日:2017.12.08
禁断のクルマ実験室 減衰力が抜けきったら…ショックアブソーバーのオイルレス
フツーの劣化では得られない減衰力ゼロを目指す
ショックアブソーバー(ショック)は、サスペンションの上下動に対して、適切な抵抗力与えて、乗り心地をよくし、ボディの姿勢変化を素早く収束して走行安定性を得るなどの役割を担っている。その力は、シリンダー内部を上下するピストンやシリンダー底部に設けられた小穴やバルブのすき間をオイルが通り抜ける時の粘性抵抗によるもので減衰力と呼ばれている。ショックアブソーバーを長く使っていると、オイルの劣化やオイル漏れ、ロッド類やシリンダーをはじめとするパーツ摩耗などで減衰力が低下して、フワついた乗り心地になってくる。
また、ショックアブソーバーは、加減速のピッチングやコーナリング時のロールを抑える働きがあるが、車重や走行中に加わる荷重を支えるのはスプリングの役目で、定常状態になるとショックアブソーバーは作動しないとされている。そのため、一定の円を描いて走る時のように荷重が一定になった時のロール角は、スプリングの反発力で決まってくるといわれている。
そのような一般論はあるのだが、ともかく減衰力を極力下げてショックアブソーバーの機能を失わせるとどういう走りになるのかをテストしてみたいと思う。
とはいえ、ショックアブソーバーを外すわけにはいかない。ビスタのサスペンションは、フロントはストラット、リヤはイータビーム式というもの。フロントストラットはサスペンションの構造部材そのものだし、リヤもショックアブソーバーと同軸上にスプリングがあるので、外せないのだ。となれば、内部のオイルを抜いてしまうのが手っ取り早い。今回は、ショックアブソーバーの廃棄手順と同様の手法で、ドリルで穴開けしてオイルを抜き取った。
※専用施設等において専門家の指導のもと取材しています。
ドリルで直接穴開けして、ダンパーオイルを抜いてみる
窒素ガスが封入してあるので、噴出には十分注意する
フロントの抜けを徹底するため、底部からも穴開け
人が乗るだけでもフワフワ揺れる
ハイドロを備えたかのような、 スプリングの純粋な跳ね上がりを実現!
ショックアブソーバーは内部構造が複雑なので、非分解でオイルを全量抜くのは難しいが、今回は穴を複数開けてしばらく走行したので、減衰力がほとんどなくなり、普通の劣化とは次元が全く違う状態に仕上がった。
走ってみると、平坦路ですら路面のわずかなうねりで勝手にリヤがヒョコヒョコ動き出し、路面のうねりがミックスされると、ビョーン、グワーンと振幅が大きく拡大。クルマ全体の上下動も大きく、時折エレベーターに乗ったかのような錯覚を受ける。相対的にはリヤ側の伸び側減衰力が失われた影響で、スプリングの持ち上がりの大きさが目立っている。
実験結果 後輪が簡単に浮いて危ない!60km/h以下が限度
乗り心地はソフトになっているが、上下動、ピッチング、ロールといった動きは大きく、視線の角度変化が大きいので不安感が増して体が硬直しやすい。これはこれで疲れてしまう。
それでも街乗りの速度なら普通のコーナリングもできるし、フワフワだからといって横転するようなロールとはならずスプリングが荷重を支えているのが分かる。ロール角などの測定はできていないが、路面のうねりやちょっとした加減速が姿勢を乱す力になって、常にロール角が変化し、ピークの角度も大きいようだ。
ブレーキングでは、フロントはアンチダイブジオメトリが利くようで、フルバンプはしないが、リヤは思いっきり浮いてしまう。加速ではアンチスクォートはほとんどなく、大胆なリヤの沈み込みにフロントの持ち上がりが加わり、リヤはフルバンプする。一番激しいのはアクセルとブレーキを小刻みに踏み替えてピッチングを最大にしておいてからのステア操作を入れるパターンで、歩くような速度でも3輪走行になってしまうのだ。
提供元:オートメカニック