シトロエンの商用水素自動車「E-ジャンピーhydrogen」納車

　シトロエンは現地時間の12月13日、水素自動車「E-ジャンピーhydrogen」の最初の量産車をスエズグループに納車すると発表した。スエズグループは、今後この車両をフランス・カルカソンヌ地方の拠点で運用テストするとしている。

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“用途に応じた選択肢” の水素自動車　宅配業者などの利用を想定

　シトロエンの燃料電池技術は、「E-ジャンピーhydrogen」の生産によって現実のものとなった。この最初の車両は、シトロエンと長年のパートナーであるスエズグループに届けられる。

　シトロエンの商用車部門100年の歴史においても、新たなマイルストーンとなる水素技術は、同社の電動化戦略の中でも“用途に応じてさまざまな選択肢を提供する”という方針に沿ったもので、これまで発表してきた小型商用車のラインナップを補完するものとなる。

　水素自動車は、300km以上の航続距離を必要とする人、車両の使用時間を最大化するために急速充電を必要とする人、また制限のある都市中心部へのアクセスを必要としながらも、水素ステーションへのアクセスが容易な高速道路や自動車専用道路を使用する人、などを使用者として想定しているという。

　対象となる顧客は多岐にわたるが、共通しているのは「エネルギー転換への取り組み」と「都市中心部へのアクセス」で、都市中心部でのラストワンマイル配送や長距離輸送を行う宅配業者、地方自治体、事業者、メーカーなどが挙げられる。

400kmを超える航続距離を実現した2つのバッテリー

　「E-ジャンピーhydrogen」は、WLTPサイクルで400km以上の航続距離を実現するために中出力のアーキテクチャが採用された。10.5kWhのリチウムイオン電池と45kWの燃料電池に、4.4kgの水素貯蔵装置が組み合わせられている。リチウムイオン電池は、発進・加速時に力を発揮するだけでなく、エネルギー回生にも優れ、燃料電池は航続距離の延長を実現する。それらのパッケージングにより、通常の車両と同等の積載量を維持しながら、小型車両のレンジにこれを収めることができたという。

　「E-ジャンピーhydrogen」は、エネルギーを蓄えて電気を供給するバッテリーと、空気中の水素と酸素を電気、水、熱に変換する燃料電池という、2つの補完的な推進システムを備える。この発電機は、水素が供給されれば連続して動作するため、45kWの水素燃料電池を主な動力源とする電気モーターは350km近い航続距離を実現。また、10.5kWhのリチウムイオン電池も、WLTPサイクルで50kmの走行が可能なバックアップ機能を備えており、加速時にはエンジンへの追加電力を供給することもできるほか、減速時やブレーキ時のエネルギー回収も可能となっている。これら2つのコンポーネントの組み合わせにより、400kmを超える航続距離が実現した。

水素満タンまで3分の急速充填と、積載性の維持

　「E-ジャンピーhydrogen」は、3つの水素タンクを満タンにするのにかかる時間はわずか3分。電気自動車の充電に比べて約20倍の速さだ（100kWの公共充電ステーションでの充電を基準とした場合）。水素タンクの容量は最大4.4kgで、企業にとって時間の節約と生産性の向上につながり、車両の使用時間を長くできるというメリットがある。

　シトロエンは、電気自動車である「E-ベルランゴ・バン」などと同様に、「E-ジャンピーhydrogen」でも、バッテリーと水素タンクが積載量に影響を与えないよう設計。大きな荷物を運ぶことの多い商用車として車両の実用性を損なわいよう、バッテリーを座席の下に、3つの水素タンクを床下に設置。結果、積載性は電気自動車と比べても変わらず5.3立方メートル～6.1立方メートルとなっている。また、ガソリン／ディーゼル車と同様に、最大1000kgの積載量と牽引力を備える。

　「E-ジャンピーhydrogen」は、フランスの工場で組み立てられ、ドイツのステランティスグルーブの水素燃料電池専門センターで換装されるという。

車両テストのパートナー　スエズグループ

　第1号車のテストは、過去数年にわたってシトロエンとパートナー関係にあるスエズグループが行う。同グループは200台以上の電気自動車を保有しているが、温室効果ガスの排出量が少ない車両への置き換えを推進する方針。車両の1号車はまもなく納車され、カルカソンヌの拠点で2週間にわたり日常的な業務に使用されるテストが行われる。現地にグリーン水素製造ステーションが設置され、1日に合計4台の車両に2kgの水素を供給するとみられる。

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