車のニュース [2021.10.29 UP]
【試乗レポート ジープ ラングラーアンリミテッド】売れに売れてるジープの大本命

文●岡本幸一郎 写真●ユニット・コンパス
アメリカ車にとっては厳しい日本市場において唯一、好調といえるのが、4WD車を専門に手がけるメーカーとして70年超の歴史を持つオフローダーの代名詞「ジープ」だ。
13.5倍で、4割の4割!
数字を見るといろいろ驚く点が多い。まず販売台数がスゴイ。日本ではジープ全体で2009年にはわずか1010台だったところ、1877台、3154台、4977台、4928台、6691台、7129台、9388台と急増し、2017年にはついに大台の1万101台を達成。以降も1万1438台、1万3354台、1万3588台と、6年にわたって過去最高の台数を更新しつづけている。2009年に対して実に約13.5倍に成長した。市場規模は北米に次いで2番目に大きく、グローバルの約4割を占めるほどまで成長したというから相当なものだ。
さらには、もっとも日本で売れているのがもっともコアなラングラーであり、個性豊かなSUVの揃うジープの中でも全体の約4割に達しているというからスゴイ。日本で乗るには大柄で、ここまでの走破性など必要ない人が大半なわけだが、このデザインと本物感が大いにウケているわけだ。
ラングラーがこれほどまでに人気を獲得した要因はそれだけではない。もともと2代目までは2ドアのみだったところ、一世代前で3代目のJK型から4ドアの「アンリミテッド」がラインアップに加わったのも販売台数を大きく積み増すことにつながった。ご参考まで、アンリミテッドという言葉には、ドアが増えたことで用途を限定しないという旨の意味が込められている。

新世代の2.0リッター直4ターボに期待

そのJK型から現行のJL型に移行したのは、日本では2018年の秋。快適性が引き上げられ運転支援装備が充実したほか、高級ブランドから乗り替えるユーザーが不満を抱かないよう各部の質感も高められたのが特徴で、中身は刷新しながらも、せっかくそれまで好意的に受け入れられてきた容姿を変えるべきでないとの判断から、見た目の雰囲気をあえて変えなかった。ただし、パーツ単位でいうとJK型からキャリーオーバーしたのはわずか5%にすぎず、残る95%は更新されている。
アンリミテッドの「スポーツ」には、従来からの3.6リッターV6自然吸気の改良版が搭載されている。ただし、本稿執筆時点でFCAは件の3.6リッター車の受注受付を終了した旨を明らかにしており、今後ラングラー アンリミテッドに関しては、2.0リッター車のみの販売となる。ラインアップの詳細については決まり次第、公式HPで案内される予定という。
3.6リッター車はオフロードを走るにはリニアな特性で扱いやすかったが、件の2.0リッター直列4気筒ダウンサイジングターボのほうが、スペック的には燃費や最大トルク値には勝ることもあり、自動車税も安いことなどから、そちらのほうが日本市場に適すると判断されたのだろう。ターボ付きでも使用燃料がレギュラーガソリンというのもありがたい。
日常性への配慮を実感

ドライブフィールもそつなくまとまっている。あくまでオフローダーとしてはの話だが、乗り心地や静粛性についてもそれほど気になるところもなく、軽量化も効いて走り味は見た目から想像するよりも軽やか。JK型では7mを超えていた最小回転半径も6.2mとなんとか現実的な数値になり、従来型よりもステアリングの切れ角が増えてずっと小回りがきくようになったおかげで、ずいぶん乗りやすくなった。
ホイールベースは3mを超えているが、これによる後席の居住性の向上はもちろん、舗装路をごく普通に走る際の姿勢の落ち着きや操縦安定性にも寄与している。乗れば乗るほど、日常性を高めるべく全方位にわたり配慮して開発されたことがうかがえる。
今回の「スポーツ」のほかにも、「フリーダムトップ」のように魅力的なアイテムや上級装備を有する「サハラ」や、より本格的な走破性を身につけた「ルビコン」、今後も頻繁に設定されるであろう限定車など選択肢が豊富であり、それでいて時間とともに徐々に上昇しているのは少々気になるが、中身のわりに価格が控えめなのもラングラー アリミテッドの魅力に違いない。
「伝統と進化」をキーメッセージに、ラングラーとしてあるべき理想の姿を追求したJL型は、今後もこれまでにも増して多くの人に受け入れられていくことだろう。
ジープ ラングラー アンリミテッド スポーツ(8速AT)
- ■全長×全幅×全高:4870×1895×1840mm
- ■ホイールベース:3010mm
- ■車両重量:1970kg
- ■エンジン:V6DOHC
- ■総排気量:3604cc
- ■最高出力:284ps/6400rpm
- ■最大トルク:35.4kgm/4100rpm
- ■サスペンション前後:コイルリジッド
- ■ブレーキ前・後:Vディスク/ディスク
- ■タイヤ前後:255/70R18
- ■新車価格:536万円-658万円(全グレード)
執筆者プロフィール:岡本幸一郎(おかもと こういちろう)
1968年、富山県生まれ。幼少期に早くもクルマに目覚め、学習院大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの企画制作や自動車専門誌の編集に携わったのち1998年にフリーランスへ。軽自動車から高級輸入車まで幅広くニューモデルの情報を網羅し、近年はWEBメディアを中心に寄稿。ドライビングスクール等のインストラクターも務める。日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。