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更新日:2024.08.26 / 掲載日:2024.08.22

実車チェックで判明したCX-80の特徴と長所【工藤貴宏】

文●工藤貴宏 写真●ユニット・コンパス

 「出る、出る」と噂されながら、なかなか発表されなかった「マツダCX-80」の日本仕様。興味津々で待っている人も多いのではないでしょうか。

 しかし、ついにその概要(価格を含む詳細情報が明らかになるのはもう少し先になりそう)が公開されました。ひとあし早く実車を確認してきたのでレポートをお届けしましょう。

CX-80はCX-8の後継モデルとなる3列シートSUV

CX-80 XD-HYBRID Exclusive Modern(6人乗り/電動キャプテンシート センターコンソール付)

 そもそもCX-80がどんなクルマかといえば、昨年いっぱいで生産を終了した「CX-8」の後継モデル。CX-8は「CX-5」の車体を延長した“ロング仕様”に相当し、2列シートのCX-5に対し3列化されているのが大きな特徴でした。

 いっぽうでCX-80は、「CX-60」をベースに車体を延長し3列化したモデルと考えればいいでしょう。全長は4990mmとギリギリ“5m未満”。ホイールベースは3120mmで、CX-60に比べると全長もホイールベースも250mm延長されていることになります(CX-8に対しては全長65mm、ホイールベースは190mm拡大)。全幅はCX-60と変わらない1890mmで、これはCX-8に比べると35mmワイドですね。

 ちなみに最小回転半径は5.8m。これはCX-60の5.4mよりは大きいですがCX-8と同じです。ホイールベースが190mmも拡大していることを考えれば、同じ回転半径というのはちょっと凄いこと。キープできた理由はハンドル切れ角が増えているからですね。

CX-8との大きな違いは車格とパワートレイン

CX-80 XD-HYBRID Exclusive Modern(6人乗り/電動キャプテンシート センターコンソール付)

 CX-8の実質的な後継車ということで、CX-8との違いが気になる人も多いでしょう。車体が一回り大きくなったこともそうですが、もうひとつの大きなトピックはパワートレインがガラリと変わったことです。

 CX-8時代は排気量2.2Lの4気筒だったディーゼルエンジンは3.3Lの6気筒へとなんと“1.5倍”に大きくなり、小型のモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドも設定。ガソリンエンジンは、エンジン自体は2.5Lの4気筒自然吸気と変更ありませんが、純粋なエンジン仕様はなくなり大きなバッテリーと強力なモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)へと進化しました。

 いずれもCX-60に搭載しているものと同じタイプですが、ディーゼルエンジンの大型化の狙いはパワーアップではくエンジンに余力を持たせることによる燃費向上。高速巡航だと非ハイブリッドでも実燃費20km/Lを超えるハイレベルな燃費はかなりの自慢ポイントです(マイルドハイブリッドはさらに燃費がいい)。

 プラグインハイブリッドは、外部から充電することでエンジンを掛けずに一定距離(CX-80の日本仕様は未公表だがCX-60ではカタログ値75km)をモーターだけで走れるのが特徴。いっぽうで外部充電なしでのハイブリッド走行時は燃費追求型のハイブリッドカーほどには燃費は伸びませんが、V6大排気量エンジン並みの力強さやフィーリングを考えれば十分納得できる燃費を実現してくれるでしょう。

 そんなパワーユニットともにガラリと変わったのが、駆動レイアウト。CX-8はエンジンを横置きとする前輪駆動と4WDだったのですが、CX-80は後輪駆動と4WDにシフトしたのです。ちなみにオンロード系の国産SUVで、後輪駆動をラインナップするのはマツダだけ。実はこれ、走りの気持ちよさに大きく関係するのです。

 後輪駆動といえばスポーツカーが好む駆動方式であり、後輪駆動のメリットがどこにあるかといえば、コーナリング時の気持ちよさでしょう。旋回中にハンドルを戻しつつ、アクセルを踏み込みながらスッと曲がる感覚は後輪駆動ならではの爽快感で、これを味わえる国産SUVはCX-60とCX-80だけというわけ。スポーティな運転を楽しみたい人にとって、ライバルに対するアドバンテージとなるのです。

 そして実は、そんな駆動レイアウトの進化はパッケージングにも変化を与えました。CX-80は真横から見るとボンネットが長くて優雅なプロポーションですが、これも後輪駆動レイアウトらしさというわけです。

CX-60とCX-80との見た目上の違いはボディ後半部分に集中。CX-80はより伸びやかでエレガントなデザイン

 スタイリングをCX-60と比べると、フロントドアまではCX-60と同じで、リヤドア以降が延長されています。これによって凝縮感があってスポーティなCX-60に対し、CX-80は伸びやかでエレガントですね。

 ちなみに細かい部分でのデザインの違いは、前部はフロントグリル。CX-80で向かって右上に入るアクセント(海外向けにはなく現時点では日本仕様だけ)はCX-60にはない識別点です。一方リヤは、CX-60にはバンパー下にある排気口風の飾りが、CX-80では廃止されているのが違いです。

CX-80 XD-HYBRID Exclusive Modern(6人乗り/電動キャプテンシート センターコンソール付)

CX-80のグレード構成とそれぞれの個性を解説

CX-80 XD-HYBRID Exclusive Modern(6人乗り/電動キャプテンシート センターコンソール付)

 グレードは、ディーゼルエンジン(非ハイブリッド)搭載車として上質なナッパレザーをインテリアに組み合わせた「Exclusive Mode」を頂点に、本革シートの「L Package」、布シートを組み合わせる「S Package」とベーシックグレードの「XD」を用意。「L Package」はPHEVでも選べます。

 2列目の仕様としてはベンチシート(3人掛け)、ベーシックタイプのセパレートシート(2人掛け)、そして大型センターコンソールを組み合わせてヒーター&ベンチレーション機能や電動調整機能を備える上級タイプのセパレートシート(3人掛け)の3タイプを設定。(金額を気にせず)上質さと快適性を求めるなら迷わず上級タイプのセパレートシート一択ですが、3列目を使うことが頻繁にあるのなら畳まなくても左右シート間を通り抜けて3列目へアクセスできる「ウォークスルー」と呼ばれる機能が使えるベーシックタイプのセパレートシートがいいでしょう。

 また、「3列目を畳んでも5人乗車したい」とか、車中泊などで「2列目を畳んだ時の床のフラットさを求める」というのならベンチシートを選ぶのが堅実でしょう。

CX-80 XD(7人乗り/ベンチシート)

 ディーゼル車におけるグレードと2列目シートの組み合わせは、「Exclusive Mode」はベンチシートと上級セパレートシートが選択可能。「L Package」はベーシックなセパレートシートのみ、そして「S Package」と「XD」はベンチシートが指定されます。

 ハイブリッド系モデルは、ディーゼルのマイルドハイブリッドは「Exclusive Mode」に近い装備水準として「Exclusive Modern」とスポーティな仕立てとした「Exclusive Sports」を用意。加えてディーゼルマイルドハイブリッドに加えてPHEVも、最上級仕様となる「Premium Modern」とスポーティな仕立ての「Premium Sport」を設定します。

 それらの2列目シートは、「Premium Sport」のみ上級のセパレートシートとベンチシートが選択可能。ほかのグレードは上級セパレートシートのみとなります。

 そうそう、忘れちゃいけないのが3列目。実際に座ってみましたが、国産SUVのなかでもっとも快適に移動できる3列目だと判断できます。これはCX-8から受け継がれた美点ですね。ひざ回りに余裕があるのに加え、ライバル勢に対して、「ヒール段差」と呼ばれる「床と着座位置の高低差」が確保されているのがその理由です。ちなみにマツダの想定体型は、身長170cmまでとのこと。

 CX-8に比べると全幅拡大に従って横方向のゆとりが広がっているほか、頭上も3cmほど拡大。また3列目の横にある窓が大きくなっているのも、解放感を高めて居心地をよくしてくれる要素だと実感しました。

 3列目がついているだけでなく、国産SUVとしてはもっとも実用的というのはCX-80の大きなアドバンテージと言えるでしょう。

気になる価格はベーシックグレードで400万円程度と予想。発売は2024年秋を予定

CX-80 XD(7人乗り/ベンチシート)

 気になる価格ですが……現時点ではまだ明らかになっていません。しかし、CX-60の価格やCX-80の価格から予想すると、ベーシックグレード「XD」の後輪駆動モデルで400万円程度になりそうな雰囲気ですね。秋ごろと思われる、詳細情報が明らかになる正式発表が楽しみです。

 気になる乗り心地も……CX-60に対しても改善されていることは間違いないでしょう。もちろん、試乗がかなったらできるだけ早くレポートをお届けしたいと思っています。

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工藤貴宏(くどう たかひろ)

ライタープロフィール

工藤貴宏(くどう たかひろ)

学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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学生時代のアルバイトから数えると、自動車メディア歴が四半世紀を超えるスポーツカー好きの自動車ライター。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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