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更新日:2024.06.10 / 掲載日:2024.06.08

オトナが求めるポストSUV【九島辰也】

文●九島辰也 写真●BMW、メルセデス・ベンツ

 去る5月後半の週末、イタリア北部のリゾート、コモ湖湖畔で毎年恒例のコンクール・デレガンス・ヴィラデステが行われました。

 その名の通り、「エレガントさ」を競う祭典で、歴代の価値あるクラシックカーが並びます。そしてそれを楽しみに集まるのは世界中のセレブリティ。会場は文字通りヴィラの中庭ですから限られた人のみがそれを目の当たりにすることができます。以前そこに足を踏み入れた時は、マーチ卿をはじめ各ブランドのCEOや著名なデザイナーに会いました。クルマもそうですが、その顔ぶれで少し興奮気味です。

 並べられるクルマは主にイタリア車と英国車がほとんどで、次に多いのはフランス車、そしてドイツ車といった順番になります。アルファロメオ、アバルト、フェラーリ、マセラティ、ベントレー、ロールス・ロイスなどメジャーなメーカーもありますが、カロッツェリアも多く参加しています。ピニンファリーナ、イタルデザイン、トゥーリング、ザガードなどなどです。仕事柄文献に載っている写真を見たことはありますが、実物を拝むのは初めてです。

コンクール・デレガンス・ヴィラデステ2024の「Best of Show」を獲得したアルファ ロメオ 8C 2300

 そんなクルマ好きにはたまらないイベントなのですが、それを毎年スポンサーしている会社があります。BMWです。そこに参加されるモデルは決して多くはありませんが、彼らは自動車文化へのレスペクトとイベントの継続に役に立とうと、スポンサーを引き受けています。もちろん、BMWにもコンクールで賞を取れるようなモデルはあります。戦前のミッレミリアで総合優勝したBMW328もそうですし、美しいデザインのBMW507もそうです。高い価値のモデルとして世界中で評価されています。

BMW コンセプト・スカイトップ

 といった背景の中、今年のコンクール・デレガンス・ヴィラデステではBMWがスーパークールなコンセプトカーを発表しました。“コンセプト スカイトップ”というネーミングのモデルです。かつて人気をえたBMW503とZ8をオマージュしたオープントップモデルで、ロングノーズのシュッとした2ドアビッグクーペのようなシルエットとなります。このジャンルのコンセプトカーは珍しいというか、久しぶりですね。近年は多くのブランドでSUVやクロスオーバーばかりでしたから新鮮です。

 今回なぜこのクルマにフューチャーしたかというと、先日までおよそ10日間BMW 850i xDriveクーペをテストドライブしていたからです。2ドアビッグクーペの魅力を再認識しようと考えています。最近自動車業界の著名なデザイナーと話していても、「SUVに飽きてきたよね」なんて話題になります。となると、我々が子供の頃“大人のクルマ”として君臨していたビッグクーペに着目してもいいのかもと思いはじめました。

BMW 850i xDriveクーペ

 BMW 850i xDriveクーペのサイズは全長4855×全幅1900×全高1345mmとなります。“ビッグ”といえども、最近のラージSUVと比べるとそんなに大きいとも思えないですね。そちらは全長5mを超えているものも全幅2m近いものも少なくありません。それに全高は1800mm以上だし。そしてエンジンは4.4リッターV8ツインターボで、最高出力530ps、最大トルク750Nmを発揮します。ダイナミックモードで走るととんでもない加速感。やはりドライバーの目線が低い分迫力があって運転が楽しくなります。いい感じです。8シリーズはこの他に、BMW840iクーペとハイパフォーマンス版のM8があります。

メルセデス・ベンツ CLEクーペ

 これをメルセデス・ベンツに置き換えると、デビューしたばかりのCLEクーペがあります。CクラスクーペとEクラスクーペをまとめたようなモデルですが、かなりかっこよく仕上がっています。BMW8シリーズよりは若干小さいですが、このタイミングでクーペをデビューさせたのですから、なんらかの思惑を感じます。まぁ、彼らにはトップエンドにメルセデスAMG GTがありますから、こういったサイズバランスになるのでしょう。こちらも魅力的です。ちなみに、アウディではA5はビッグクーペには入りませんのでR8クーペになります。が、正直ちょっと新鮮さに欠けます。

 ということで、BMWの“コンセプト スカイトップ”が何かしらの新たな潮流になることを期待したいと思います。世界中のセレブリティの前に登場したのですからきっと刺激になったことでしょう。「2ドアビッグクーペ復活!」なんて淡い期待を夢見ちゃいます。

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九島辰也(くしま たつや)

ライタープロフィール

九島辰也(くしま たつや)

外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの”サーフ&ターフ”。 東京・自由が丘出身。

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